独自の旋律 分かり易く来月、願い込めて2曲配信 「全世界の人たちに向けて、国楽で聞きやすい曲を誰かが作らなければいけない」。15歳で渡韓し、高校と大学で国楽を学び、演奏活動を続けてきた在日3世の韓国伝統音楽家、MIN(閔栄治)さん。日本に拠点を移して8年目に入った。精力的な演奏活動は多岐にわたり、作曲者としての顔も持つ。歴史の中で育まれてきた国楽を全世界の人へと、7月中旬からiTunes Storeを中心にPCまたは、携帯サイトで新曲の2曲をダウンロード配信する。
「国楽に接していない人たちには、国楽の演奏家たちは遠い存在で距離感がある。なんとかそれを狭めなければ」
韓日をはじめ、海外での演奏活動も多い。近年、米国では、インドの音源の入った音楽が流行り、またハリウッド映画で日本は、怖いシーンで尺八が流れるくらいの位置を確保したという。
「韓国の音はどこにも出てこない。なぜ、韓国はできないのか」。古典音楽である国楽が、国内だけに留まっているという現実と、自身の思いの狭間でもどかしさを感じてきた。
「もっと世界に出て行きたい。だからよりいっそう、聴きやすくしないといけない。私は古典音楽をやってきた人間として、国楽を現代の人に分かりやすく伝える通訳の役割を担いたい」
16年の実績思いを音に 新曲は韓国のリズムと旋律が生かされている。「ODYSSEY in SEOUL」は、「ソウルで16年間、国楽を学んで活動していたという思いを音にした」。
新羅時代から使われてきた横笛のテグムやチャンゴをはじめとする4種の打楽器、そして大好きだというシャーマン音楽の一部も盛り込んだ。韓国独特のリズム8分の12拍子で表現し、自らが歌った。
「GREEN DRAGON」は、豊年豊作や平和への願いが込められたPINARI(祈り歌)の一節も。洋楽器も取り入れたアップテンポな曲だ。
他国の人の心打つよう 韓国でも曲作りはしてきた。だが、国楽界では受け入れられても、「世界で長く支持され、各国の人たちのなかに入りやすい曲があるかといったら、それはない」。新曲には特別な思いと、こだわりを詰め込んだ。
韓国では国楽室内管弦楽団「スルギドゥン」が、シンセサイザーを入れた演奏をしていた。国楽フュージョンの走りだ。9年間、同団で活動と修行を重ねた。
その後、パーカッショングループ「PURI」を創り、新しい音楽を追求した。バンドと伝統音楽を融合させたり、K‐POPアーティストとのアルバム制作など、新たな取り組みに新聞や雑誌では「新風を巻き起こす国楽界の『異端児』」として常に脚光を浴びた。
これらの音楽を聴いて育った、当時の中高校生だった子どもたちが大人になり、新しいチャレンジを試みているという。
この間、日本で自身が代表を務める「SANTA」プロジェクトでの活動や、韓国政府の行事にも関わった。
サッカーの02年韓日W杯では、ヨーロッパ広報コンサートツアーを行い、06年ドイツW杯でも応援ソングの制作にたずさわった。
また、09年韓日おまつりレセプション音楽監修、今年は世界経済フォーラムダボス会議「コリアンナイト」の音楽などを担当。11月ソウル開催のG20首脳会談の公演プロデュースに参加する。
味が効いた楽しめる曲 在日の音楽家として、これらの行事に関わることについては、「私が韓国伝統音楽家でありながら、今まで伝統音楽にとらわれず、いろいろなジャンルに挑戦してきて、素晴らしい先輩、仲間と良い作品を生み出せているからではないか」と話す。
模索を繰り返しながら、国楽を広げるための努力を惜しまずにきた。
ダウンロード配信まであとわずか。特に海外同胞に対しては、「僕の曲を世界配信で皆さんに聞いてほしい。韓国の味が効いている音楽なので、楽しんで」と、その日を心待ちにしている。
MINさんのサイト
http://www3.to/santa-mych(2010.6.30 民団新聞)