掲載日 : [2010-06-30] 照会数 : 10014
フラッシュ同胞企業人<51>内装と食材にこだわり
[ 1960年ソウル生まれ。84年に来日。86年に「韓日館」本店を開店。大阪韓商副会長。 ]
朝鮮朝雰囲気の韓国料理店
「韓日館」の李明姫社長
大阪ミナミの繁華街・宗右衛門町。店の玄関前に済州道の石像・トルハルバンが「オソオセヨ(いらしゃいませ)」と言わんばかりに出迎えてくれる。店に足を踏み入れると、古民具がところどころに置かれ、壁には朝鮮朝時代の庶民の生活が描かれ、タイムスリップしたような感覚にとらわれる。天井は高く、広々とした店内は開放感がある。
「韓国の有名な先生に材料を吟味してもらったり、壁画を描いてもらったりした」というほどのこだわりよう。「お客が食事をする数時間を、韓国の趣きの中で、本場の家庭料理で、心ゆくまでもてなすのがモットー」だ。
もともと「民俗村」にあった建物の一部を購入し、2007年4月にオープンした。敷地150坪の2階建て。1階がテーブル席、2階は個室、イベントが可能なフリースペースもあり、顧客のニーズに合わせて選ぶことができる。収容人数は260席。
韓国から直送で
食材はほとんどが韓国からの直送。特にキムチの塩漬けに使う塩は、天然産を取り寄せている。漬け方にもこだわりがあり、普通白菜キムチを漬ける時は、白菜にそのまま塩をふりかけ、重石をのせて半日置いておくのだが、「水と塩の割合を25%にした塩水に漬けておくことで、出来上がりのキムチの食感が失われない」と、常に食する側に立って美味しさを追求する。
そのこだわりは、当然肉にも及ぶ。塩味のロースは、しょうゆ味と違って、肉本来の味が勝負。佐賀和牛の肉を自分で直接吟味する。納得がいくまで妥協しない。
自家製豆腐は、最高級の大豆を2種類使用し、天然のにがりを使って作るという手のこんだもの。また、タレにはパパイヤを入れたり、カルビ肉の場合は梨を入れたりと、「お客さまが瞬時に『美味しい』と言っていただけるよう、満足のいく料理をめざしている」。
ランチメニューでは、ソルロンタンが人気。牛骨を1日じっくりと煮込む。お客から「牛乳を入れているのでは」と言われるほどスープは真っ白、味は濃厚で、コラーゲンも豊富。若い人からお年寄りまで人気だ。「お客の喜ぶ顔に勇気づけられている」
母から直伝の味
料理好きのオモニの背中を見ながら育った。「いつも身近に、料理があった」。オモニの料理好きが遺伝したのか、17歳から、ソウルでコーヒーやサンドイッチなどの飲食店を3年間営んだ。
小さいながらも、当時はまわりに店がなく、繁盛した。「食に対するこだわり、顧客とのコミュニケーション、日々研究することの大切さを学んだ」
1984年、姉を頼って来日。「もう一度、料理店を開いてみたら」と勧められ、86年、西心斎橋に「韓日館」本店を開業した。従業員は、本店と宗右衛門町店を合わせて35人。昨年の売上額は約3億円。
ホームページでは簡単なレシピの紹介も。「韓国料理を、生活の中で簡単にできる料理として感じてほしい」。新メニューとして、しゃぶしゃぶも取り入れたいという。「持ち帰り専門の店などもやってみたい。日々精進」と強調する。
◆韓日館=大阪市中央区宗右衛門町1‐22(℡06・6212・9996)
(2010.6.30 民団新聞)