掲載日 : [2010-07-28] 照会数 : 6196
<布帳馬車>侮れませんね「韓流おばさん」
埼玉県北部へ向かう湘南新宿ラインをたまに利用する。編成の最前部と最後部に4人掛けボックスシートがあり、空席の目立つ昼下がりにそこを独り占めしてうたた寝するのも楽しみだ。その日も、誰もいないボックスでのんびりしていると、池袋からおばさんたち3人が乗り込んできた。「来るかな?」と思った瞬間、寝たふりを決め込んだ。
だが、目を閉じていても耳に栓はなく、彼女たちの甲高い声が容赦なく鼓膜を振動させる。話題が韓流スターについてであることはすぐ分かった。イ・ビョンホン、クォン・サンウ、チャン・ドンゴンなど知っている名前もあったが、聞いたことのない名前が飛びかっていた。若くして命を絶ったパク・ヨンハには、「残念ね」「ほんとに」などと哀悼の言葉もあったが、湿っぽくなることはなかった。
話題は一転、どこの食堂の韓定食が旨い、でもあの有名店は日本人の味覚に合わせ過ぎ、などのグルメ関連に。新大久保界隈のことかと思ったらソウル市内のことだった。韓国化粧品の威力についてひとしきり花が咲いたと思ったら、今話題の時代劇に主演した在日俳優へと話題が移り、小生が下車するまでの1時間近く、彼女たちのおしゃべりは熱く続いていた。
情報が豊かでいつの間にかこっちまで引きずり込まれていた。チラッと見ると、どこにでもいる普通のおばさんたちだ。どうも職場のパート仲間でソウルに行ってきたらしい。しかも、何度目かのソウルのようである。固有名詞が中心とはいえ、韓国語の発音もなかなかのもの。「韓流おばさん」と見くびってはいけない。普通に韓国とつき合う彼女らの、口コミの影響力は侮れませんよ。(J)
(2010.7.28 民団新聞)