掲載日 : [2010-07-28] 照会数 : 10230
<体育会特集>金昭夫引率団長 熱き思い
[ 金昭夫引率団長 ]
次世代育成 着実に
スポーツ育成基金に夢託す
第91回全国体育大会在日同胞選手団の引率団長を務める民団中央本部の金昭夫副団長は、今月3日に北海道で開催された体育会理事会の席上、「在日スポーツ育成基金」の設立を提案し、その一助にして欲しいと1000万円を伝達した。金副団長に今国体への意気込みと基金設立を提案した思いを聞いた。(インタビュー構成)
2月の第64回定期中央委員会で鄭進団長から、今国体の引率団長として正式に委嘱されました。05年の蔚山大会に続いて2度目ですが、責任の重さを知っているだけに、身が引き締まる思いです。選手たちがベストコンディションで競技に臨み、日頃鍛えた技量を十分に発揮できるよう、誠心誠意を尽くします。
他の海外勢が力をつけていて、在日選手団はこの3年間、総合優勝を逸しています。大変残念なことです。この悔しさをバネに、必ず総合優勝を勝ち取り、「在日同胞ここにあり」を示すつもりです。私自身、非常に燃えています。
同時に私は、二度目の引率団長を拝命したことでこの間、年一度の国体に集中するだけでなく、長期的なビジョンでより計画的に、同胞スポーツの育成を図るべきではないか、との気持ちを募らせてきました。そこで「育成基金」の設立を提案したわけです。
もっと継続的に、多くの在日スポーツ選手を支援し、祖国の大舞台でプレーさせてあげたい。そうした選手のなかから将来、オリンピックの韓国代表として世界で戦う選手を輩出できれば、在日青少年に夢と希望を与えられる。これは同胞社会全体の夢と希望にもなると思うんです。
感動をくれる若者の挑戦魂
人生にはいくつかの転機がありますよね。私の場合、その一つが5年前の蔚山大会でした。初めての引率団長を、しかも自分の故郷で務めさせていただいたことは大変光栄でしたし、なおかつ総合優勝の栄誉までプレゼントされました。ですが、それ以上に胸に残ったのは、若者たちがスポーツを通じて母国と触れ合い、汗と涙を流しながら韓国人としてのプライドを培い、在日としての仲間意識を育む姿でした。
国体の期間中は私も寝食を忘れるほど、各競技の応援に東奔西走しましたが、特に各チームがプライドをかけて戦うサッカーでPK戦の末に劇的な勝利を収め、大会最終日の奇跡的な逆転で総合優勝を勝ち取った時には、本当に涙が止まりませんでした。
人を感動させ、人を一体にさせるスポーツは本当に素晴らしい。私は今でもあの感激が忘れられません。スポーツ事業はもっともっと、民団活動の真ん中に来ていいのではないか。民団東京・豊島支部の副議長を皮切りに25年間、組織活動に携わってきた経験からも、そう確信しています。
「育成基金」の提案に際しては、民団中央本部の鄭進団長にも相談しました。自身がスポーツマンであり、国体の引率団長を二度務めたほか、サッカーW杯フランス大会で韓日共同応援団の副団長でもあった鄭団長は、「自分も応援する。ぜひ成功させて欲しい」と激励してくれました。
民団はいま、次世代育成事業にかなりの力を入れています。しかも、体系的に育成していくシステムをつくろうとしています。「育成基金」はその方面でも推進エンジンになるのではないでしょうか。
同胞のすそ野広げる一助に
私たちには全国4校の全日制民族学校がありますが、カバー範囲には限界があります。民団は日本の公立小学校にある民族学級を支援しているほか、全国で「オリニ教室」を運営し、季節的には臨海・林間学校を開き、2年に一度は韓国で大規模なオリニジャンボリーを開催します。どれも大きな成果を上げています。
ですが、いずれも小学生が主な対象にとどまっていますよね。鄭団長時代に始まった「中央団長杯争奪オリニ・フットサル全国大会」でもそうですが、そこに参加した小学生たちは中学生になっても、そういう大会に参加したいという意欲を持っているのに、その受け皿がありません。
「フットサル大会」は今回、中学生の部を実験的に設けるそうですが、学生会・青年会へとつなげていくためには、中学・高校生を対象にした育成プログラムつくり、空白期をなくす必要があります。意識がしっかりして行くこの時期を支えるには、私はスポーツが一番だと思います。
「育成基金」の方向性は今後の課題ですが、有望な選手を育てると同時に、同胞スポーツのすそ野を広げることにも自ずと貢献するはずです。経済状況から言って、基金の蓄積には厳しい時代ですが、「育成基金」の趣旨は幅広く理解いただけるものと確信します。
(2010.7.28 民団新聞)