掲載日 : [2010-07-28] 照会数 : 8825
<元在日脱北者>定着・自立へ難関多く 「民団センター」の強化不可欠
重要性増す支援活動
命からがら北韓を脱出し、第3国を経由してようやくの思いで日本にたどり着いた元北送同胞の脱北者は約200人にのぼる。「脱北者支援民団センター」は彼(彼女)らが日本で安定した社会生活ができるよう人道的な立場から支援するために2003年6月に設立された。支援対象者は、当初の50人から、この7年で4倍に増えている。経済破綻と飢餓の常態化が伝えられる北韓の窮状からして、今後さらに増加することが予想される。重要性が増す支援センター(所長=呂健二民団中央本部副議長)では、日本政府に対して制度的・持続的な支援の必要性を訴える一方で、センターの活動の継続および強化のため、募金などの協力を広く呼びかけている。
すでに200人、なお増加必至
日本政府が受け入れている脱北者は、1959年12月から始まった「北送事業」で北韓に渡った在日同胞および日本人配偶者らの家族(孫までの3世代)である。
民団では、同じ在日の歴史を刻んだ同胞として、彼らの苦境を座視できないとの自然な情愛と純粋な人道的立場から支援してきた。
日本に入国した脱北者らの構成は、日本生まれ6、北韓生まれ4となっている。大半が「無国籍」となっており、不安定な在留資格や日本語、就職、住宅や社会への適応問題など多くのハンディを背負い厳しい生活を余儀なくされている。また、北韓に残してきた家族の安全を確保するため、日本で自己の存在が表ざたになるのを極度に恐れ、自由な活動を自ら制限せざるを得ない状況にある。
支援センターでは、この間、就職斡旋、住宅斡旋、日本語学校と韓国語のできる医師の斡旋、健康診断などの支援と個別相談など定着に必要不可欠な面での支援を、民団の地方本部・支部および団員有志、商工人らの協力とボランティアの支援などを得て実施してきた。
また、支援に関わる北朝鮮難民救援基金、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会など日本のNGO関係者、民団関係者らも交えて、「脱北者交流会」を関東と関西地区でそれぞれ開き、交流を深めている。
だが、脱北者の日本定着をめぐる状況は依然厳しい。
06年6月の日本国会で成立した「北朝鮮人権法」は「政府は、脱北者(北朝鮮を脱出した者であって、人道的見地から保護及び支援が必要であると認められるものをいう)の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする」とうたっているが、かねてから問題の解決には不十分だと指摘されてきた。
支援関係者らは「日本政府は、人道主義の立場から脱北者を一日も早く『難民』と認定、脱北者らの定着・自立のための支援をすべきだ。また北送事業を推進した当事者として、道義的な意味からも支援をすべき立場にある」と公的支援を強く求めている。
日本での受け入れ条件の緩和および定着・自立のための日本政府による公的支援の早期制度化が望まれている。
(2010.7.28 民団新聞)