掲載日 : [2010-08-15] 照会数 : 11299
<第65回光復節>光復節慶祝辞 民団中央本部団長 鄭進
不屈の歴史を力に…内外結束へ民団は先頭に立つ
親愛なる在日同胞の皆さん!
私たちはいま、祖国が日本によって強制併合されてから100年、独立を取り戻した光復から65年の、歴史の節目に立っています。
在日同胞は、過去1世紀の我が民族と日本との関係を体現する歴史的な存在であり、いかに時が流れても、民族史と自分史に刻まれた二つの起点を忘れないでしょう。同時に、未来に対して世界に雄飛する韓国の国民・はらからにふさわしい視点を大切にしようとするでしょう。
躍進・韓国 世界に貢献
列強諸国が我が物顔で振る舞った東アジア近代の黎明期に、古い殻を破ることができないまま、ついには植民地に転落した弱小国・韓国がいま、人類社会の発展に積極的に貢献する意志と能力をもつ強国となって立ち現れています。
国際経済をリードする名実ともに第一の機関であるG20(20カ国・地域)サミットの、最初の定例会議がソウルで開催(11月)されることは、まさに現在の韓国を象徴しています。韓国はここで、先進国と新興国が協調する新経済秩序の方向性と新興国にとって効果的な開発モデルを提示する「ソウル・コンセンサス」を主導するでしょう。
我が国は米ソを頂点とする理念的な東西対立、植民地支配・被支配の関係に根ざす経済的な南北対立の交差路に、身を置いてきました。その韓国が88年ソウルオリンピックで東西の融和に大きく貢献し、今回は先進国と新興国のあつれき緩和に重要な役割を果たそうとしています。
これらは決して、偶然の産物ではありません。第2次世界大戦後に独立した新興国として、二つの国際的な葛藤に翻弄される苦しみをエネルギーに変え、人類社会の共生・発展の先頭に立つべきだとする理念で一貫した結果です。産業化と民主化を成し遂げ、世界で初めて「援助される国」から「援助する国」になるなど、名実を備えた躍進がその理念を支えています。
未来志向の地方参政権
親愛なる同胞の皆さん!
亡国の悲哀と貧しく弱いことの悔しさをよく知る私たちも、負けてはいませんでした。強い祖国があってこそ自身の立つ瀬があると信じ、経済発展に惜しみなく貢献するとともに、国難に際しては決然と立ち上がりました。「漢江の奇跡」へ弾みをつけた韓国初の輸出産業団地「九老工団」への参与、6・25韓国戦争に参戦した在日学徒義勇軍の壮挙はその典型です。
また、治山緑化事業や農村近代化のためのセマウル運動など、民団が組織的に展開した支援のほかに、つつましく生きる名もなき多くの同胞が故郷の発展に尽力しました。電気・水道を引き、道路を整備し橋を架け、学校や奨学金制度を設立するなど、数えればきりがありません。
その一方で、創団当初から共生理念を掲げる民団は、日本の制度的・社会的な差別と闘い自尊心と生活権を守りつつ、韓国と日本の善隣友好を増進させるという、困難な課題を同時に追求してきました。今日見られる韓日交流の多角化と拡大も、日本人とすべての定住外国人が協働する地域づくりの広がりも、民団のねばり強い活動によって可能だったのです。
私たちが全力を注いでいる地方参政権獲得運動は、その総括的な課業であり、日本も避けて通れない内なる国際化を促進し、東アジア時代をリードするにふさわしい韓日の連携強化につながるものと信じます。地方参政権獲得運動はまさに、未来を創るものです。不退転の決意で取り組むことを今一度誓い合いましょう。
統一実現に在日も大役
親愛なる同胞の皆さん!
祖国の独立・建国に心血を注いだ先烈をはじめ、その遺志を継いだ諸先輩の、国と在日社会の未来を信じる献身があったからこそ、現在の私たちがあります。
先烈と諸先輩の労苦に報い、栄光の道をさらに前へと切り拓くのは、今を生きる責任世代の使命です。私たちには、民族内部から凄惨な現実と危険な障害を取り除く課題が残されています。
植民地支配からソ連の軍政をはさんで世襲独裁政権が続く北韓の民衆にとって、この100年は屈従の時代でした。約10万人に及んだ北送同胞とその家族たちを気遣い、無慈悲な独裁政権に追従を余儀なくされている総連同胞にとっても同様です。「真の光復いまだならず」の思いが胸を締めつけます。
その北韓独裁は、核弾頭を含む大量殺戮兵器の開発に狂奔し、天安艦撃沈事件を引き起こすなど卑劣な軍事挑発をほしいままにしています。東アジアの平和と在日同胞の生活を脅かし、何よりも韓国国民が血と汗で積み上げた統一国家の担保ともなる成果を根こそぎ奪いかねません。
米国や日本までが研究対象とする韓国経済の躍進は、大胆な世界化戦略を成功させたことに大きな要因があります。人口が5000万人に満たない韓国は、市場規模が小さいゆえに世界市場への進出を活路としてきました。それは半面で、海外への依存度を高めずにはおかず、経済危機など国際社会の動向に左右されやすい体質を抱えることになりました。
韓国は紛れもなく「平和国家」・「通商国家」であり、そうでなければ未来開拓も生き残ることも困難な国なのです。その韓国が休戦線を挟んで、「ソウルを火の海にする」と繰り返し威嚇する同族国家と接しているのです。しかし、私たちはこの皮肉な現状を嘆くわけにはいきません。
韓国は憲法で、自国領土を「韓半島及びその島嶼」と定め、「祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚」すると謳っています。現実問題としても、東アジアの平和と安定を確保し、もう一段の飛躍を遂げて全民族の幸福を保障するためには、北韓リスクを管理しつつ民主的で平和的な統一を実現しなければなりません。
米・日・中・露が絡む東北アジア情勢は不透明感を増しており、韓国がこれまでの成功路線を継承し、南北統一を主導するにためには、国際的な協調を牽引するだけの国力が不可欠です。内外国民の結束が肝要であり、民団にも自ずと果たすべき役割があります。
第一に、韓日関係を政治レベルにおいても堅固にすることです。第二に、在外同胞750万の団結を先導することです。第三に、総連傘下の同胞が北韓独裁に追従することをやめ、民族的な大義と人類普遍の価値観に立って、私たちとともに民族の大業に参与する道を準備することです。
これらは民団の実績あるネットワークを総動員すれば、十分に可能なことです。そうした努力のうえに、北韓リスクの影響を受けやすい在日同胞の立場を踏まえ、韓国の国論統一に積極的に関与すべきです。
民団強化へ次世代育成
親愛なる同胞の皆さん! そして、民団幹部の皆さん!
私たちが大きく重い使命を担うためには、何よりも民団に力が必要です。「民団の底力は健在だ」としても、日常活動には組織力減退の影響が現れています。ジリ貧状態に歯止めを掛け、維持から反転へと向かわせなければなりません。
民団は祖国統一問題から日常生活の諸懸案まで、在日同胞の多様な要求に対応してきました。民団を同胞の「公共の場」・「心の故郷」として、強い愛着を持つ幹部は数知れません。幹部たちが率先して、日常活動をテコ入れすべきです。
内外情勢に精通して問題意識を共有し、目的・目標を明確にする研修をはじめ、潜在力量を掘り起こすべく戸別訪問を充実させましょう。次世代育成に本腰を入れ、オリニから中学・高校生、学生会・青年会とつなぐ体系的なシステムを稼働させましょう。あわせて、婦人会をはじめとする傘下団体や民団周辺の諸団体とも協力しながら、在日同胞のライフ・サイクルに適応した各種事業を拡充しましょう。
民団事業の前進は、同胞の生活向上を助け、民族的な大業に参与する軌道を確保します。今秋にソウルで開催予定の全国拡大幹部会議は、民団の歴史的な使命と祖国との紐帯を再確認する場となるでしょう。
歴史の大きな節目にあって、先烈と諸先輩の労苦を改めて偲び、その遺志に応えることを誓いながら、第65回光復節の慶祝辞と致します。
(2010.8.15 民団新聞)