掲載日 : [2003-05-21] 照会数 : 4674
道半ばの門戸開放 郵政公社職員外国人もOKだけど…(03.5.21)
幹部候補受験認めず
一般職も昇進は不透明
郵政事業庁の日本郵政公社移行に伴い今年度から郵政一般職の内務国籍要件が緩和された。この結果、定住外国人も集配業務に限らず、特定郵便局で窓口業務につけるようになった。しかし、幹部候補となる「総合職」には国籍要件を設け、一般職でも昇進に不透明な部分を残すなど道半ばの門戸開放となった。
「完全撤廃めざす」…郵便局同胞の会
郵政職員の採用はこれまで人事院の実施する国家公務員採用試験と、主に外務職に携わる郵政職員選考試験に分かれていた。このうち外務職については、同じ国家公務員でも採用は地方郵政局が管轄してきた。両方とも国籍要件があり定住外国人の受験を排除してきたが、外務職については在日同胞側の働きかけを受けて84年に撤廃された。
しかし、採用後の「国籍条項」は残っており、集配業務中に事故に遭って障害が残っても、日本人職員とは違って内務職員への転進は認められておらず、制度上は辞職するしかなかった。このため在日同胞3世の外務職員は「在日韓国・朝鮮人問題を考える『郵便局同胞の会』」をつくってこの20年間、郵便内務職差別の撤廃を訴え続けてきた。それだけに今回の郵政一般職内務国籍要件の緩和を「在日同胞にも将来の展望が出てきた」と基本的に歓迎している。
近畿地区で働く在日同胞職員の一人、金哲年さん(36)によれば、郵政公社になって外務と内務の区別がなくなり、保険課の仕事もするようになったという。
内務職ではこのほか、切手やはがきの販売、貯金の受付業務などもあり、地域住民と直接接触する機会も増えてくるものとみられる。
日本郵政公社の人事制度担当は、内務職の国籍要件緩和について「個々の業務内容を検討した結果、公務員の『当然の法理』に抵触するがい然性(可能性)が低いと判断した」と話している。先週から配布を始めた郵政一般職採用試験受験案内にも「永住外国人の受験が可能」との但し書きが入った。ただし、総合職には国籍要件を入れ、内務職についた定住外国人の将来の昇進問題についても否定的な考えを明らかにしている。
「郵便局同胞の会」では郵政総合職も永住外国人の受験を認めるべきだとしており、今後は総合職の国籍条項撤廃を求めていく考えだ。その手始めとして24日、「フレッシュ・オープン日本郵政公社」と題したシンポジウムを千里ライフサイエンスセンターで開く。
シンポを通じて一般職開放の意義を確認しあい、これからの課題について討論する。開会は午後1時半から。
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郵便局同胞の会
近畿地区在住の在日同胞3世の外務職員が集まり87年に結成した。会員は現在、17人。「本名で安心して働ける職場づくり」が会のめざす目標。これまで内務職の国籍差別がいかに不合理かを広く訴えてきた。なお、定住外国人の外務職員は全国で38人勤務していることが確認されている。
(2003.5.21 民団新聞)