市民団体と共催
関東大震災時の同胞虐殺の全容を明らかにし、事件の全容に迫る第7回企画展が1日から在日韓人歴史資料館(姜徳相館長、韓国中央会館別館)で始まった。関東各地で事件の調査・聞き取り、追悼を行ってきた諸団体が実行委員会を構成、歴史資料館と共催した。
国と民衆の責任テーマに
展示パネルは約20点。まず、事件の時間的な流れを追いつつ、各地域でなにがあったのかを具体的に明らかにした。
東京では広範な地域で軍隊が直接、虐殺に加わったことがわかる。加害者と目撃者の証言を出典とともに短くまとめ、現在の行政区ごとに整理した「関連証言マップ」からは、被害者の悲痛な叫びが伝わってくるかのよう。実行委員のひとり、西崎雅夫さん(グループほうせんか)は、「震災時に起きた諸事件の全体像を視覚化した初めての試み」だという。
埼玉では警官が護送していくなかで自警団による虐殺が起きた。被災者が震災から逃れて向かった先の群馬では、新聞に掲載された根拠のない「不逞鮮人侵入」の大見出しが流言を広げた。神奈川では、当時の子どもたちが自らの見聞をつづった震災作文が、87年前の悪夢を呼び覚まさせてくれる。
事件の背景にあったのは「流言」だったとされる。だが、その「流言」を事実として無線をはじめとした通信手段で朝鮮人への警戒を呼びかけ、意図的に民衆を襲撃させたのは、ほかならぬ官憲だった。今回の企画展ではそうした事実を鋭く告発している。
各市民団体の中心となった田中正敬さん(専修大学教員)は、「関東大震災時の朝鮮人虐殺は決して過去の問題ではなく現在につながる問題。排外的な意識が一部で高まっているなか、誰もが虐殺する側に回るかもしれない。そうした構造に歯止めをかけるためにも、国家の責任を問わなければならない」と企画の狙いを話している。
パネル説明によれば、震災後の帝国議会で2人の議員が朝鮮人虐殺の責任を問いただした。質問に対して政府は「調査中」と答えたまま、現在まで放置している。
12月25日まで開催(日・月曜日は休館)。開館時間は午前10〜午後6時。無料。
問い合わせは在日韓人歴史資料館(℡03・3457・1088)。
国家責任を問う
市民団体が呼びかけ
「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」が24日、東京で発足式を行う。在日韓人歴史資料館での企画展を準備した市民団体が参加を呼びかけている。
当日は立教大学名誉教授の山田昭次さんによる基調報告を受け、会のこれからの方向を決める。JR池袋駅西口の東京芸術劇場5階中会議室で午後6時30分から。資料代800円(学生無料)。 問い合わせはメールで
kanto_earthquake@yahoo.co.jp。
(2010.9.8 民団新聞)