アトリエ・クルム 荒川道さん
初心者向けに冊子 「縫う人それぞれに楽しめるよう」
サムルノリ衣装や韓服などのオーダーメイドを手がける「アトリエ・クルム」代表の荒川道さん(39・広島市中区)はこのほど、初心者向け型紙付き冊子『チマ・チョゴリの作り方』を自ら発行した。98年から個人で縫製活動をスタート。現代の感覚に合わせたオリジナル衣装を手がける一方で、「古典衣装はずっとやっていきたい」と話す。冊子発行を機にチマ・チョゴリへの思いを聞いた。
冊子は韓流ブームで増えた在日や日本人からの「自分でも作りたい」という要望に応えたもの。企画・構成から、完成までに3年間を要した。この間、「冊子を出すことで、プロの業者に迷惑をかけないか、手の内を見せていいのか悩んだ」。
だが、「インターネットで売られている韓服の中には、この作り方はおかしいという物もある。ネット販売をする側にもきちんとした作り方を知ってもらいたいし、時代の流れでいろいろな窓口はあってもいいと思うようになった」。
冊子は初心者でも分かるようにと、説明書にイラストを付けた。また、切ってそのまま使える実物大の型紙は、5つの異なるバストサイズから選べる工夫もされている。
広島市生まれの荒川さんは、父親の仕事の都合で、小学校高学年まで海外で暮らした。帰国後、大阪・生野区で暮らし、高校の時、広島に戻ってきた。「生野区での生活が、日本の普通の暮らしだと思っていた」という荒川さんが、高校時代に選択したクラブは「朝文研」。サムルノリを熱心に学んだ。
「高校生のとき、自分で韓服を作ってみたいという思いがあった。今の中高生の中にも、文化祭の時にチマ・チョゴリを着たい、作ってみたいという人がいる。最初は簡単に冊子を作るつもりだったけど、初めて作る人に対し、無責任にはできない。型紙があれば不安も解消されると思った」
伝統とは違い誰でも作れる
「たぶん、日本人でチマ・チョゴリの型紙を作ったのは、私が初めてだと思う。在日1世の方々が作っていた韓服の伝統的な作り方ではなく、縫い物が少しできれば誰でも作れるようにした。今回はあくまでも手ほどきの一つです。縫う人それぞれの発想と愛着でもって、世界に一つしかないチマ・チョゴリを作ってほしい」
サムルノリ衣装や韓服以外にもこれまで、チマ・チョゴリの要素を残したウエディング韓服、ハングルがプリントされたベストなども制作した。特にベストは生活韓服として、シャツやスーツにも似合って気軽に羽織れることから、贈り物として喜ばれている。
近年、韓国では男性を含む多くの韓服デザイナーが誕生している。「デザインだけではなく色づかい、素材などの選択の幅がかなり広がったことで、韓国や日本国内に留まらず、従来のイメージを超えた発想で展開されていくところに魅力を感じている。自分でチマ・チョゴリを作りたいという人が増えたのも、それらの影響が少なからずあると思っている」
夫は在日2世だからできる
荒川さん自身、韓国の生地と和服の生地を融合させた韓服作りの構想にも着手してきた。
「こういう試みは、在日韓国人2世の主人と結婚した日本人の私ができることの一つ。いろいろな人に刺激を与えたい」と話す一方で、「韓国の伝統的な韓服はシンプルで、人々から長く愛されてきたという感じがする。私は袖の丸みが好き。韓服の美しさは曲線です。これからも古典の韓服制作はずっと続けていきたい」と話す。
型紙付き『チマ・チョゴリの作り方』
定価2300円(送料別途=メール便80円、普通郵便240円)。団体・学生割引あり。住所、氏名、希望の発送方法を明記の上、(FAX082・295・6763)またはEメール michi22@agate.plala.or.jp
冊子購入の方には、制作中で分からない点などはメールで対応。連絡はメールで受付。詳細は「アトリエ・クルム」HP
http://www12.plala.or.jp/kurum
(2010.9.15 民団新聞)