掲載日 : [2010-09-15] 照会数 : 9120
怨嗟の的〈平壌政権〉 デノミ失敗で疲弊進む
広がる階層・地域別の格差
蓄財にはげむ富裕層10万人
北韓当局が昨年11月末、突如断行した貨幣改革の結果、蓄えがあった中間層の相当数も貧困層に転落し、日銭を稼いで食いつなぐ住民が増えた。食糧を買うために家を売り、人民班による各種の税外負担を逃れるために、川べりや山中にビニールテントを張って生きながらえるケースも目立つという。
半面、党・政・軍の高位幹部や貿易商社員など富裕層(約10万人)は、権力や資本を利用して賄賂授受、各種利権介入や買占め売り惜しみなど不法行為を通じて、むしろ財産を蓄積した。
現金より現物を重視する風潮が強く、最高級とされる韓国製品に目がない。フェラガモなどブランド品を買い、ホテルでの外食、サウナを楽しみ、スクリーンゴルフに興じている。高麗ホテルの出入りも多く、利用客の増加でタクシーをつかまえるのも一苦労という。ファストフード店にたむろする学生や若者には、ジーパンに携帯電話の姿も珍しくない。
北韓には厳格な身分制度があり、その成分は一般に3階層51区分とされる。「核心階層」は労働党幹部、革命家家族、6・25戦争戦死者遺族、栄誉軍人など。「動揺階層」は中小商人や中農・民族資本家出身者、日本帰還者(朝総連の基本組織専従者は除く)など。「敵対階層」は資本家・地主・富農出身者、親日・親米者、宗教人、元民主党員など。
北韓は党・政・軍幹部や成分が《優秀》な「核心階層」にほぼ限って平壌市内での居住を許可し、配給・住居・社会保障などで地方住民との差別待遇を強めてきた。
食糧配給は地方の場合、一部の機関や職場には成果に応じて不定期の減量支給があるものの、一般住民向けは中断状態だ。平壌の場合、地域や職場によって差異はあっても地方より良好であり、特権層には肉類やビールなども配給される。
住居は地方が10〜20坪のアパートか戸建住宅で、相当数が住宅の配定を受けられず賃貸生活を強いられている。平壌では20〜30坪の中型アパートが普通で、特権層は60〜70坪のアパートを所有している。
電力は地方の場合、1日1〜4時間の限定供給であり、飲料水は水道施設の老朽化で供給されず、河川や地下水に頼っている。平壌は地域や季節によって頻繁に停電があり、給水制限はあるものの24時間供給が原則だ。
やたら負担増不満も露骨に
地方住民たちは、「2000万住民は、200万平壌市民を食べさせるためにのみ存在する」「平壌は朝鮮の外国だ」などの不満を露骨に口にする。まさしく「平壌政権」と呼ばれる理由だ。
「税金のない国」であったはずの北韓は、財政難が深刻化したのにともない、各種使用量(電気・水道料、テレビ視聴料、市場・不動産使用料)を公式に徴収し、住民負担を増やしてきた。その上に、税外負担が重くのしかかっている。負担金は住民生活の各現場に網の目のように張り巡らされている。
職場では賃金から企業所運営費、行事参加費などが天引きされる。病院では簡単な処方・施術でも謝礼金が要求され、薬品は市場で買わねばならない。学校では当たり前にクズ鉄やウサギなど家畜の納付、《寸志》が強要される。家庭に対しても農村支援など各種の名目で現金や物資の拠出が割り当てられる。
取り締まりに抵抗も相次ぐ
当局による住民収奪も強まった。清津市近郊からの脱北者は、09年7月までの話として、「郡党幹部は場税(市場利用料)を売場台当たり300ウォン、1日総6万ウォンを稼ぎ、出張費や車両燃料、接待費などに使っている」と語った。
このため大多数の住民は、小耕作地で野菜をつくり、家畜を飼育するほか惣菜や酒を造って市場で売るなど各種の副業に精を出している。医者は裏での施術や医薬品取引、教師は課外授業をするなど、専門職従事者も個人営業に走る。工場労働者たちも機械部品や油類など公共財産を盗み、市場に売るか中国に密売するなど、不法行為をためらわない。
しかも、住民たちは以前と違い、当局の強引な市場取り締まりや物品の押収には激しく抗議し、取り締まり要員に暴行を加えることも辞さない。民心の離反は拡大している。
(2010.9.15 民団新聞)