掲載日 : [2010-10-06] 照会数 : 7156
<寄稿>広がる「ハングルの世界」 書家 金周會
9日は領布記念の「国慶日」
生まれ持った誇り 書芸に親しみ自己表現豊かに
10月9日は、「ハングルの日」である。真っ先に頭に浮かぶのが、小学校時代の習字の時間に「世宗大王」をハングルで書き覚えたことだ。綺麗に書いたと先生に褒められ、教室の掲示板に貼り出された。少しばかり自慢だった遠い昔の記憶がよみがえる。
韓国ではハングルを記念するために、この日を「国慶日」として法で定めている。由来は、ハングルを創製した朝鮮朝時代の当時に書かれた訓民正音『解例本』の序文に、頒布日が1446年9月の上澣(上旬のこと)と記されていたことによる。これをいまの陽暦に合わせて10月9日を「ハングルの日」に制定した。
1990年までこの日は法定公休日であったのが、休みの日数が多いとして、記念日に変えたいきさつがある。2006年からは「国慶日」に昇格させ、今日に至っている。
「ハングルの日」を前後した1週間は、政府・学校・民間団体などでは、世宗大王の尊い志とその業績を讃え、ハングル制定を祝うさまざまな記念行事が執り行われている。
特に韓国の書芸界では、「ハングルの日」の記念に、著名な書家が一般家庭の家訓を揮毫し、無料で配布する行事とともに、ハングル書芸のパフォーマンスなども披露する。
風土が生む素晴らしさ
韓国では当たり前のようなことでも、日本の生活の中では滅多に「ハングルの日」を意識することなく過ごしてしまうのが現状だ。
私は最初、韓国で漢字の書芸を学び、来日してひらがなやカタカナを学んだ。日本での生活は20年になるが、馴染むまでに時間がかかり、韓国の風土が生み出した素晴らしい文化を表現することができなかった。だが、7、8年前から作家として活動するようになって、もともと自分が生まれ持ったもの、自分の中のハングルという文化を表現したいと強く思った。
幸いというか、最近は韓流の影響が強く、ハングル講座の数が増える一方である。また読売文化センターではハングル書芸講座まで開けるようになった。正月になると、東京・新宿区の韓国文化院でもハングル書芸体験教室を開き、ハングルに興味をもつ日本の方々に向けたイベントを開催している。
「ハングルの日」にあたる10月の韓国文化院の行事で、18日から23日までの1週間、同院ギャラリーで「韓日書芸術招待二人展」が予定されている。
韓国の作家による、ハングルを素材とした現代書芸術の表現は定評があり、一見の価値がある「ハングルの世界」だ。
お勧めしたいもう一つが、この招待展の初日の18日に、両国の知識人や文化人を招いて行われる「書藝文化特別座談会」である。筆文字に触れる機会の少ない現代の我々は、書芸術をどのように理解し、どのように受け入れたらよいのかを、各分野の専門家から学ぶよい機会になるだろう。
互いに理解息づくよう
私は日本で暮らし始めて、初めて在日同胞の置かれている現状を知った。私のできることの一つとして、民族学校以外の在日社会でも、ハングル書芸が広く親しまれ定着するよう努力していきたいと思っている。
また、これからの日本の一般社会に韓国の文化が、一時的な流行ではなく、韓日互いの理解に基づいた意識のもとに、両国の素晴らしい文化が自由に息づく日の到来を楽しみにしている。
(2010.10.6 民団新聞)