掲載日 : [2003-05-29] 照会数 : 3537
差別廃し韓日理解推進 川崎市ふれあい館(03.5.28)
[ 館長
] [ 在日同胞の子どもたちが集うケナリクラブ ]
歴史学習など地道に
〞胸張れる〟同胞子弟育成も
〞地域共生〟の実践根づく
在日同胞、外国籍市民、日本人が交流できる場として開設された川崎市ふれあい館が来月、15周年を迎える。この間さまざまな活動を通して、在日外国人と日本人が共に生きる地域作りを目指してきた。15年間の活動について重度館長(58)は、着実に相互理解の輪は積み重ねられているという。
川崎市は解放後、多くの在日同胞が住むようになった地区。1世たちは歴史的な背景によって不当な差別や偏見などを受けながら生きてきた歴史を持つ。
74年には在日同胞が国籍を理由に就職を拒まれた、いわゆる日立就職差別闘争が起こった。この事件を契機に、反差別闘争は在日同胞の社会運動につながった。
厳しい差別が残る中で、ふれあい館は在日同胞をはじめとする外国人市民と日本人が交流し相互理解を深める場として1988年にオープンした。その母体は1974年に社会福祉法人の許可を受けた「青丘社」だ。
開設後15年をかけて、ふれあい館は韓半島の文化や伝統、日本の植民地支配の歴史を知らせる学習会の積み重ねなどを通じ、在日同胞への理解を促してきた。
未だ在日同胞に対する蔑視感や偏見は残るものの、少しずつ地域の中で在日同胞への理解が浸透してきたと館長はいう。
また、地域に居住する在日同胞に向けての取り組みも行われている。子弟が集うケナリクラブは毎週1回、土曜日の午後に開かれ、民族的な出会いを体験できる場として人気が高い。そのほかにも民族文化クラブなどの子ども事業を通じて在日同胞子弟に民族的主体を持たせ、民族差別と闘っていける強い主体を持った子どもを育てていこうと実践を行ってきた。
一方、同胞高齢者に対しては、交流の場として親しまれているトラジの会、識字学級、人権講座、また高齢者や障害者への福祉サービスを実践してきた。
これらは同市で最も利用率の高い公共施設として地域に定着していることからもうかがえる。
館長は「地域社会の現実のニーズに対応していく実践を重ねていくことが大事」だと語る。
ふれあい館の若い職員によって約6年前から始まった「学校連係事業」も大きな意味を持つ活動の一つだ。
同事業は川崎市を巻き込んで、小学校で韓国の歴史や遊び、文化などを在日同胞子弟や日本人児童に伝えるものだ。川崎全市の小学校を対象に職員を派遣してワークショップなどの公演活動が行われている。
現在、高齢者事業に従事している40人のヘルパーの中に多くの在日同胞の女性がいる。高齢化が進む同胞社会の中で、自らの親たちを介護できるようにしたいと、ヘルパー2級養成講座も開いている。
館長はこの間の活動を振り返り場作りの重要性を説く。「高齢者や障害者、ダブルの子などが集まれる複合的な場がふれあい館です。活動を続ける中で劇的な変化はありませんが、実践は持続が大事」と語るが、着実に地域の中で共生する流れが形作られているようだ。
これからも地域の声に耳を傾けながら、さらなる実践を進めていこうとしている。
(2003.5.28 民団新聞)