掲載日 : [2003-06-04] 照会数 : 4759
史実誤認の発言またも 「麻生妄言」に同胞ら怒りの声(03.6.4)
[ 自民党政務調査会長室に抗議する青年会中央のメンバー(左側) ]
韓日友好ぶちこわし
自民党の麻生太郎政調会長が、日本植民地時代の「創氏改名」について「当時の朝鮮人が望んだこと」との妄言に、民団はじめ在日同胞各界から厳しい批判の声が寄せられている。盧武鉉大統領の国賓訪問を直前に控えた時期だけに、同胞らからは真の韓日友好を阻害する発言と怒りの声が上がっている。
歴史認識是正へ声上げ続けよう
姜徳相さん(71)=東京、滋賀県立大学名誉教授=
韓国に対する植民地統治は悪くなかったという。一部とはいえ日本の政治家の本音が出たというべきでしょう。
いったい何回こうした妄言を繰り返したら気が済むのか。盧大統領の訪日を前にした祝賀ムードもぶちこわしだ。一方、外交レベルでは「韓日友好」を繰り返す。二枚舌もいいとこだ。
こうした歴史認識は明治以来続く固い岩盤のようなもの。私たちは繰り返し声を上げ、この岩盤を突き崩していかなければならない。
「皇民化の一環」誰もが知る事実
白永煕さん(66)=民団兵庫県本部団長=
今回の発言は、責任ある立場の発言とは到底思えない。韓国で個人的な話を聞いて、それが史実と思い込んで発言してもらっては困る。
いわゆる「創氏改名」は日本の皇民化政策の一環として施行されたことは、韓国人なら誰でも知っている事実だ。史実を正確に把握し、歴史に整合する事実を発言してこそ両国のためになる。両国の親善友好に有害な発言だ。多いに反省してもらいたい。
戦後歴史教育の見直し必要
金有作さん(57)=民団京都本部団長=
自民党の現職の政調会長からこんな誤った歴史認識に基づく発言を聞くとはあきれた。というよりも憤りすら感じる。
過去にも毎年のように政治家が同様の発言を繰り返してきた。正直、またかと思った。今回は政調会長という役職からも影響が大きく、見過ごせない問題。
21世紀の未来志向の韓日関係を築くためには正しい歴史認識を持つための戦後教育の見直しこそ必要だ。
共生の精神無視即刻是正を要求
朴善岳さん=婦人会中央本部副会長=
韓国の歴史のみならず、日本の歴史も知らないのではないか。
両国の交流の歴史、今後共にする共生の価値観を無視し、韓国を侮辱した発言。間違った歴史認識に対して私たち在日同胞は怒りを共にし、即刻是正を要求しなくてはならない。
歴史の歪曲に市民権許すな
俵義文さん(62)=東京、「子どもと教科書全国ネット21」事務局長=
今回の発言は歴史教科書問題の延長線上にある。無知か故意なのか?おそらく両方でしょう。「つくる会」にみられるように歴史を歪曲することが市民権を得てきているのは残念だ。
日本社会にはいま北の問題を利用してものすごい勢いで逆流が起きている。有事法制もこの流れに乗っかって出てきた。
私たちにできることはきちんと批判していくこと。これしかない。
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自民党本部などへ抗議申入れ 青年会
在日韓国青年会中央本部(壽隆会長)は2日、東京・永田町の自民党本部などを訪れ、麻生政調会長の創氏改名に関する妄言に対して抗議を申し入れた。
会長はじめ青年会中央本部のメンバー7人は自民党本部・政務調査会長室の中丸到生室長と議員会館の事務所を訪問、発言への抗議文を手渡した。
麻生議員の発言に関して「言語を奪い、民族的な尊厳を奪い、自民族を否定させる歴史観を植え付け、その結果同化を形づけたものが『創氏改名』であることは、紛れもない事実」として抗議し、議員辞職と韓国はじめ在日韓国人への謝罪を求めた。
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「深い遺憾」を表明 外交通商部謝罪要求も
【ソウル】韓国の外交通商部の石東演スポークスマンは1日、の麻生議員の妄言に対し、「日本執権自民党の責任ある政治家が誤った歴史観をもとに時代逆行的な発言をしたことは、非常に失望させられる、嘆かわしいことと言わざるをえない」と、「深い遺憾」を表明した。
同代弁人は麻生会長に謝罪を求めるとともに、「わが政府は、正しい歴史認識なくして真の韓日両国関係の成立は難しいという点を改めて強調する」とし、思慮深い行動を求めた。
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「麻生妄言」
創氏改名は朝鮮人が望んだ
ハングルは日本人が教えた
麻生政調会長は31日、東大・五月祭での講演で、歴史認識に関する質問に答える形で「創氏改名」について「当時、朝鮮の人たちが日本のパスポートをもらうと、名前のところに金とか安とか書いてあり、『朝鮮人だな』といわれた。仕事がしにくかった。だから名字をくれ、といったのがそもそもの始まり」と歴史の事実を無視した発言を行った。
創氏改名は、韓半島が日本の植民地化にあった1939年、朝鮮総督府が朝鮮民事令改正で公布、翌年2月に施行した「皇民化政策」の一環として行われた。先祖から伝わる朝鮮式の姓から日本式の名前に改めさせた日帝支配の中でも悪名高い政策。姓に誇りを持つ人たちは自殺して抗議する人たちも少なくなかったと言う。創氏改名については96年6月、自民党の橋本龍太郎首相が金泳三大統領(いずれも当時)に会談後の記者会見で「創氏改名がいかに多くの方々の心を傷つけたかは、想像に余りある」と謝罪している。
また、「ハングルは日本人が教えた」などと述べ、植民地統治がハングル普及に貢献したなどと発言した。
(2003.6.4 民団新聞)