掲載日 : [2003-06-11] 照会数 : 6275
学校側の個別開放促す 民族学校の国立大受験資格(03.6.11)
弁護士有志の会「認定書」交付申請へ
「外国人学校・民族学校の問題を考える弁護士有志の会」(共同代表=新美隆・丹羽雅雄)が、全国の主だった国立大学に対して個別に民族学校卒業生の「受験資格認定」を求めていくことになった。文部科学省がいまだに「検討中」の姿勢を崩していないため、来年度入試に向けて大学側の自主的な門戸開放を促していくのが目的。
「弁護士有志の会」は在日外国人の人権問題に関わっている全国165人の弁護士で構成している。国立大学の受験を希望している民族学校生徒および卒業生から相談を受け、会を立ち上げた。
これから各地で受験生の代理人を務め、東大、京大、一橋大、阪大、九大などに「入学資格認定書交付申請」を行っていく。回答期限は大学入学資格検定(大検)の今年度2回目の願書受付開始日の9月16日以前とする。弁護士が国立大に直接働きかけるのはこれが初めて。
学校教育法施行規則第56条、およびこれまでの文科省の見解に従えば、民族学校生徒は国立大学への入学資格を有していないとされる。現時点では大検に合格するしかない。ただし、同条は別項で大学独自の判断による入学資格認定も認めている。文科省の見解に従うことなく、大学側の判断で入学資格認定書を交付することは可能だ。認定書の交付を受ければ、大学入試センター試験を経由して当該の大学受験の道が開かれる。
5日、文部科学省で記者会見した「弁護士有志の会」共同代表の新美隆弁護士は「現行法でも大学入学資格に道を開くのは可能なのに、文科省の通達行政が大きなガンになっている。大学側が相も変わらず文科省の通達に従うならば、今度は大学自身の責任も問われる」と述べた。
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法的整合性を問う
文科省に「質問書」
「弁護士有志の会」共同代表の新美隆弁護士は5日、龍谷大学の田中宏教授とともに文科省を訪れ、遠山敦子文部科学相宛ての「質問書」を提出した。文科省で池坊保子政務官が応対した。
質問は13項目。大学入学資格を規定した文科省の学校教育法施行規則第69条について民族学校排除がいかに恣意的に行われているかを指摘、法理論面からも各条項ごとに問題点を指摘、矛盾点をただしている。
7月に入れば各国立大学から入学者選抜実施要項が発表されること。また、文科省自身も7月には何らかの態度表明をするとしてきたことから「弁護士有志の会」では6月30日までの回答を要求している。
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賛同署名に共感の輪
大学入学資格と税優遇措置
民族学校への大学入学資格と税制優遇措置を求める「共同声明」への賛同署名が、市民の間で静かな共感の輪を広げている。
署名に添えて「逆風の時こそ、力を合わせて声を上げねばなりません」といった激励のメッセージも届いている。また、一部のインターナショナルスクールに限って大学入学資格を与えようとした文部科学省には「『ユニバーシティ』の名にふさわしい規定改正を」求め、「大学入試を行うのであれば、入学資格そのものが不要。民族学校排除は差別そのもの」という批判も集まっている。
呼びかけ団体の「すべての外国人学校の大学入学資格を求める実行委員会」(代表・田中宏龍谷大学教授)では18日、文部科学省と国会に署名簿を提出する。
(2003.6.11 民団新聞)