浄化槽の清掃やゴミ収集…備北清掃社の沈勝義社長
広島県の三次(みよし)市は北部に中国山地を控え、山間部が多く、下水道が普及していない家庭は少なくない。三次の西側エリアを担当し、浄化槽の清掃・管理や屎尿汲み取り(許可業務)、ゴミの収集運搬(委託業務)を行っている。
「新築住宅には浄化槽を設置するものの、古い家はトイレを改造しない限り昔のスタイルのまま。山間部に下水道を普及させるのは難しい」。水洗式トイレの浄化槽の清掃・点検といったメンテナンスが主な仕事だ。たまった汚れは年に1回、バキュームで処理する。社員は23人、昨年の売上額は約2億5000万円。
◆行政と2人3脚
祖父が戦前、単身で日本に渡り、九州の炭鉱で働いていたが、そこを脱出して三次へ行き、スクラップなどの仕事に就いた。その後、父が衛生業や土建・砕石業に従事していたが、母の実家から「バキュームカーによる屎尿汲み取りがいい仕事になる」と教えられ、63年に創業。その関連で備北清掃社を買収し、77年に法人を設立した。
「県北一帯で衛生業を行っていた3業者に対して、行政が3つに区域割した。行政とは2人3脚で、事業計画の打ち合わせに加わることも。競争が少なく安定しているものの、料金的なものは抑えられている」
高校卒業と同時に家業を手伝い始めた。「周囲に気をつかいながら住民に対するサービスを第一に心がけている。住民に挨拶し、会社周辺の清掃やゴミ拾いを率先して行う」
安全第一に、事故が発生したときの心構えを社員に常に言い聞かせている。「車に積載したゴミが燃えたことがあったので、消火訓練や救急訓練、地域に設置したAED(自動体外式除細動器)の講習などを実施している」
当初、悩んだのが仕事に対する自負心をどう持つかということ。「トイレと関連した仕事なので、他人の目を気にしがちだ。そこで模索した結果、この仕事がなければ困る人が大勢いるし、日本経済を底辺で支えているのだと前向きに考えるようになった」
◆地震対策で変化
下水道工事は大変な費用を要する。「特に山間部では排水管を設置する工事だけでも膨大なコストがかかる。いったん地震が起これば、管が壊れ、修理費は膨大だ。浄化槽を普及させる方がコスト面でかなり安く上がる」と強調する。環境関連の仕事にはこだわりつつも、新たなエネルギー事業を模索中だ。
民団広島県本部の青年会会長などを務めた。「同世代で本名を使う人を見ると、青年会出身者が多い。韓国人としてがんばった活動のたまものだと思う」。現在は県本部の議長職にある。「在日同胞がばらばらに活動したのでは、さまざまな権利を獲得することは難しい。集団としての力が大切。そういう点で、民団組織は必要だ」
◆(有)備北清掃社=広島県三次市三次町2668(℡0824・62・2539)
(2011.9.14 民団新聞)