掲載日 : [2003-06-25] 照会数 : 4293
全国国公立大学 同胞教員174人に(03.6.25)
「外国人教員任用法」公布・施行から20年
専任講師以上…任期制も改善へ
大学教育懇10年間の努力実る
全国の国公立大学に勤務する専任講師以上の同胞教員は合わせて174人(02年現在)に上ることが、日本の文部科学省と公立大学協会の最新の統計資料で明らかになった。外国人教員を不安定な境遇に追いやってきた任期制度もかなりの大学で改善されつつある。82年9月1日に「国公立大学外国人教員任用法」が日本国会で公布・施行されてから今年で20年を迎えた。
内訳は国立大学で教授26人、助教授75人、専任講師が34人の計135人(02年7月1日現在、文部科学省調べ)。公立大では教授15人、助教授15人、専任講師9人の計39人(02年5月1日現在、公大協調べ)だった。
国公立大学で初めて在日同胞の助教授が誕生したのは84年のこと。筑波大学物理学系に李相茂助教授、大阪大学細胞工学センターに金在萬助教授。千葉大医学部病院と滋賀医科大でもそれぞれ専任講師として任用された。これは82年8月に成立した「外国人教員任用法」に基づく措置。
同任用法は桃山学院大学の徐龍達教授(現在、名誉教授)を中心とする「在日韓国・朝鮮人大学教員懇談会」が日本人の大学教員らと10年かけて勝ち取った成果だった。
これら外国人の専任教員は任用法成立当時、3年ないしは5年の任期がついていたため、評議会や教授会のような大学側の決定機関が恣意的な判断で任用を打ち切ることもできた。
姜徳相一橋大学名誉教授も教授就任当初は3年の任期付きだったため1回任期制の適用を受けたことがある。教授会を構成するメンバーでありながらそのときだけは別室で待機し、同僚教授らの審判(投票)を受けなければならなかった。当時を振り返り姜名誉教授は「いやなものですよ」と振り返った。
大学側は、任期制を理由として、文科省に博士課程や修士課程で学ぶ学生の指導教授としての推薦書類を意図的に出さないということもできた。筑波大学の李助教授(当時)は、「本来の研究活動に支障をきたす」と大学側に掛け合ったと話している。滋賀県立大学の鄭大聲教授も「任期制という名の外国人差別ですよ」と指摘している。
任期制も00年代に入ってからはかなり改善されつつあるようだ。徐龍達桃山学院大学名誉教授の調べによれば02年現在、国立大で任期付きの外国人教員は693人のうち397人と全体の57・3%だった。ちなみに90年代前半には8割前後の大学で任期制を採用していた。
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同胞社会への還元を考えて 徐龍達名誉教授の話
外国人教員任用法を獲得するまでには、10年間で合わせて1300万円の資金と、多くの貴重な知的労働が投入された。この結果、助手まで入れれば約300人が国公立大で研究と教育の場を得ることができるようになった。このことを忘れず同胞社会への還元を検討してほしい。たとえば、年収の1割相当を身近な育英団体、民族学校、市民運動団体などに寄付することも考えられる。
(2003.6.25 民団新聞)