植民地時代に日本に渡った『朝鮮王室儀軌』など韓国の書物1200冊が6日、ほぼ1世紀ぶりに韓国に返還された。それまでには韓国の慧門僧侶(朝鮮王室儀軌還収委員会)に呼応した韓日市民たちによる運動や、民団中央本部が参院議長へ要望書を提出するなど、「歴史」を取り戻そうとする活発な働きがあった。韓民族の財産となる多くの文化財は、現在も日本各地に残されている。
なお日本で大量保持
さらなる返還には難題も
韓日図書協定承認後、日本から韓国に返還されたのは、宮内庁書陵部が所蔵していた『朝鮮王室儀軌』81種167冊、初代韓国統監の伊藤博文が1906〜1909年に持ち出した図書66種938冊、『増補文献備考』2種99冊、『大典会通』1種1冊になる。
『朝鮮王室儀軌』は朝鮮朝時代の祭礼や主要行事を絵や文で記録した書物で、韓国伝統文化の象徴とも言われている。
『増補文献備考』は韓国の文物・制度などを16項目に分類、整理したもの。『大典会通』は1865年に編さんされた朝鮮朝時代最後の法典。
日本から返還されたのは、1965年の韓日国交正常化会談に際して1432点、今年10月に訪韓した野田佳彦首相が、韓日首脳会談の席上で引き渡した『大禮儀軌』など3種5冊に続く。フランスからは、5月末までに外奎章閣図書297冊が事実上、返還された。
共有の財産広く公開を
東亜大学東アジア文化研究所の崔吉城所長(広島大学名誉教授)は、1969年に文化財専門委員として、ソウルの昌慶苑内にある「蔵書閣」(現韓国学中央研究院)に出入りしながら宮中資料を直接調べ、論文を書いたことがある。
昨年夏には、ソウル大学校奎章閣韓国研究院で一般公開された特別展「100年前の記憶、大韓帝国」を観覧し「大禮儀軌」、御宝などを直接目にした。今度返還された図書に近い種類のものだ。
崔所長は『朝鮮王室儀軌』の素晴らしさについて、「宮中の王室の文化とは言え、当時の王朝(国体)の権威を表す最高のビジュアル的な図説の記録文化として貴重な文書。今後、韓民族にとってそれをただ書庫に入れておくだけでなく、広く公開して観覧し、研究をして価値を明らかにしながら、韓民族が共有する文化財として利用すべきだと思う」と話す。
ただ、これで日本からの返還が全て完了した訳ではない。韓国の国立文化財研究所によれば、日本へ流出した文化財は6万点以上におよび、国立博物館、全国の大学や博物館・美術館、寺社に分散保管されているという。事実上、文化財の返還はこれから始まるというのが専門家たちの考えだ。
韓国では、2001年に韓国海外典籍調査研究会が宮内庁所蔵の朝鮮王室古文書の目録を発刊、2006年9月に市民団体「朝鮮王室儀軌還収委員会」が発足し、在韓日本大使館に返還要請書を伝達するなど、さまざまな動きがあった。
摩擦解消へ論議重ねて
日本では2010年11月に「文化財返還問題・日韓共同シンポジウム‐朝鮮王室儀軌・利川五重石塔返還問題を中心に‐」と題する集まりが東京都内で持たれるなど関心は高まっている。
だが、一方で現在の所有者が個人や一般機関であった場合、返還請求権を行使できるかといった問題も出ている。
日本に残る韓国文化財の返還に向けては、韓日両国がこれからも、歴史的な摩擦を和らげる一環として論議を重ねていくことが望まれる。
(2011.12.21 民団新聞)