テレビをつけると、ドラマやCM、バラエティ番組、歌番組に韓流スターが続々と登場してくる。街なかでもK‐POPの軽快なリズムが流れている。今や、一部のファンが支える一過性のブームではなく、日常生活に浸透した韓国ブランド品になりつつある。
2010年夏から本格的に日本上陸を果たし、旋風を起こしたガールズグループによって、相次いで男女のグループアーティストが日本に進出。その代表として少女時代、KARA、東方神起が紅白歌合戦に出場して昨年を締めくくった。
今やこれら新世代のK‐POPは日本に完全に根付いたが、その人気はアジア各国や欧米にも広がっている。
この原動力となっているのは、韓国の国策であり、韓国企業の巧みな海外戦略である。国家ブランド化政策の一環として官民が一体となって世界化を展開、その大胆な政策が功を奏している。この勢いはどこまで続くのか?
〞輸出戦略〟ずばり
スター育成に政府も支援
2010年に本格的な進出
K‐POPアイドルの日本上陸は2000年代に入ってからだが、特に2010年から本格上陸を開始したガールズグループの大ブレイクがきっかけとなり、立て続けに日本でメジャーデビューを果たしている。
「韓流」という言葉が生まれる以前の日本でも、70年代の李成愛、80年代の趙容弼などによる、『カスマプゲ』や『釜山港へ帰れ』など、演歌の流行が散発的にあったが、それは個々の作品のヒットであり、韓国音楽全般の流行ではなかった。
ガールズグループとしては90年代後半にSESやピンクル(FIN.K.L)が韓国国内でヒットし、98年のSESに続いて、シュガー、ジュエリー、トゥーヤといったグループが順次、日本に進出するも、大きなセールス成功にはつながらなかった。
スタイルよしダンスもよし
しかし2000年代に入ると大きく変化した。01年にはBoAが日本でも本格的に成功し、韓国の「SMAP」とも呼ばれた男性6人組グループ「神話(SHINHWA)」をはじめ、東方神起やBIGBANGらの男性グループに続き、10年から11年にかけては少女時代やKARAが大人気に。
抜群のプロポーションと完璧なダンス、同じフレーズの繰り返しは頭に残る。
昨年10月にT‐araが、外国人アーティストとしてオリコンランキング史上初の女性デビューシングル初登場1位となった。
これら「新韓流」とも呼ばれる韓国現代音楽、K‐POPの大ブレイクを支えたのは韓国政府でもある。
大統領直属の振興院も設立
韓国政府は、09年に大統領直属の機関として大韓民国国家ブランド委員会や韓国コンテンツ振興院(KOCCA)の設立等を通して、コンテンツ産業振興・輸出の一環としてK‐POPを強力に支援している。
スター育成助成金として、4年間で1兆ウォンの財政投資をはじめ、2010年10月に東京国際フォーラムホールAで開催されたK‐POPショーケースでは5500席全席分の料金を無料にするなど、日本をはじめとした海外コンサート開催にも国費を投入している。
韓国は李明博政府発足以来、文化振興を強化して年々予算を増額しており、昨年度の文化芸術振興予算は1兆4000億ウォンを超し、国家予算比では日本の7倍以上にもなる。世界20カ所にある韓国文化院などの予算も年々拡大している。
海外戦略には官民が一体で
自国市場がそれほど大きくない韓国はコンテンツ輸出に活路を求め、国家的な規模でK‐POPをはじめとする商品の海外への宣伝と輸出を積極的に推進。パリで開催したコリアン・コネクションでは韓国政府機関が後援し、Japan Expoでは韓国コンテンツ振興院が自らブースを出展して、K‐POPを宣伝している。
また韓国政府の後援を受けたVANK(韓国の正しい姿を世界中に広めるためにネット等で韓国情報宣伝活動を行う民間組織)もK‐POP振興のためにネット上で積極的に活動している。
韓国の4大芸能プロダクションといえば、「少女時代」「東方神起」らが所属する「SMエンターテイメント」、「KARA」「RAINBOW」らが所属のDSPエンターテイメント、「2NE1」「BIGBANG」らが所属する「YGエンターテイメント」、そして「2PM」「ワンダーガールズ」らが所属する「JYPエンターテイメント」だ。
この「ビッグ4」を中心に官民一体となった、K‐POPの海外戦略は今年も続く。
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日本に進出した主なK-POPグループ(男性篇)
年月はデビュー( )内は日本デビュー(活動開始含む)
sg WANNA BE+ 2004年1月(2008年3月)
キム・ヨンジュン、 イ・ソクフン、キム・ジノの3人組ボーカルグループ。テレビ音楽番組などに出演しない「顔のない歌手」というキャッチと、圧倒的な歌唱力で人気が広がった。多くのドラマでカバー曲を歌い、2008年3月には、日本で『I LOVE sg WANNA BE+』を発売。
SS501 2005年6月(2007年8月)
2005年6月にシングル「警告」でデビューしたリーダー・ヒョンジュン、ジョンミン、ヨンセン、キュジョン、ヒョンジュンの5人組。グループ名には、5人がひとつとなってスターになるという思いを込めている。
SUPER JUNIOR 2005年11月(2008年4月)
13人組のダンスグループだが、一部メンバーの入隊で現在は10人。音楽だけでなくタレント、俳優、MC、モデルなどメンバーそれぞれが幅広い分野で活躍。結成当初、定期的なメンバー入れ替えのためグループ名が Super Junior05 だったが、入れ替えに反対するファンの抗議などにより、以後SUPER JUNIORとして活動。
BIGBANG 2006年8月(2008年11月)
G-DRAGON、SOL、T.O.P、D-LITE、V.Iによる5人組HIP HOPグループ。2007年に発売された「嘘(Lies) 」が国民的な大ヒットを記録。日本では、『第51回日本レコード大賞』(2009年12月)で最優秀新人賞を受賞。
FTIsland 2007年6月(2010年5月)
ジョンフン、ホンギ、ジェジン、スンヒョン、ミンファンの5人組。現役高校生バンドとして2007年6月に「恋煩い」でデビュー。2010年5月には「Flower Rock」で日本メジャーデビューを果たした。ヴォーカルのホンギは、ドラマ「美男ですね」にも出演。
超新星 2007年9月(2009年9月)
ユナク、ソンジェ、グァンス、ソンモ、ジヒョク、ゴニルによる6人組ダンスボーカルグループ。2007年10月アルバム『THE BEAUTIFUL STARDUST』でデビュー。 2009年9月「キミだけをずっと」で日本メジャーデビューを果たす。
2AM 2008年7月(2012年予定)
Mnetの新人育成番組『熱血男児』で注目されたイ・チャンミン、イム・スロン、チョ・グォン、チョン・ジヌンで結成される。歌手兼プロデューサーのパク・チニョンが手がける男性ボーカルグループ。2008年7月「この歌」でデビュー。
2PM 2008年9月(2010年12月)
ジュンス、ニックン、テギョン、ウヨン、ジュンホ、チャンソンの6人組ダンスグループ。結成当初は7人だったが、2009年、韓国人への卑下文問題でジェボムが解雇。Mnetの新人育成番組から結成。メンバーそれぞれが俳優、MC、モデルなどでも活躍。男臭く野性的なイメージを売りにしていることから「野獣アイドル」と呼ばれている。
SHINee 2008年5月(2011年6月)
ユジョンヒョン、ミンホ、テミン、オンユ、キーの5人組。グループ名は動詞の『Shine』に名詞形の語尾[ee]を組み合わた造語で、常にスポットライトを浴びる人を意味する。2011年7月に所属プロダクション、SMタウンのフランス公演では女性たちが「会えて感激」と涙を流すほどの人気。
U-KISS 2008年8月(2010年12月)
スヒョン、イライ 、ケビン、ドンホ、 キソプ、エイジェイ、フンの7人組。アメリカ、中国などで海外生活経験のあるメンバーで構成。旧メンバーにアレクサンダーとキボム(いずれも2011年2月に脱退) 。グループ名のKISSは“Korean International Idol Superstar”という意味を持っている。
SM☆SH(スマッシュ) 2008年(2010年10月)
セゲ、ジェリー、ナル、ハンバン、ヒーローの5人組。H.O.Tの元メンバー、トニー・アンがプロデュース。前向きで積極的に突き進むようにという意味で名付けた。
BEAST 2009年10月(2011年3月)
イ・ギグァン、ユン・ドゥジュン、チャン・ヒョンスン、ヨン・ジュニョン、ヤン・ヨソプ、ソン・ドンウンの6人組。AJという名前でソロ活動していたイ・ギグァン、BIG BANGのメンバーから最終脱落したチャン・ヒョンスンらで構成。3人がすでに有名だったこともありデビュー前から人気を呼んだ。
MBLAQ 2009年10月(2011年5月)
Rain(ピ) がプロデュースした、スンホ、G.O、ジュン、ミル、チョンドゥンからなる5人組。グループ名は『Music Boys Live in Absolute Quality』の略。2011年5月4日に『Your Luv』で日本デビュー、オリコンデイリーチャート1位、ウィークリーチャートでも2位を獲得。
ZE:A(ゼア) 2010年1月(2011年11月)
ムン・ジュンヨン、キム・ドンジュン、ケビン、シワン、キム・テホン、チョン・ヒチョル、ファン・グァンヒ、ハ・ミンウ、パク・ヒョンシクの9人組。人気番組『帝国の子供達』に出演、50回を越えるゲリラコンサートを全国各地で開催し、デビュー前から1万人を超えるファンを獲得し大きな話題を呼んだ。
CNBLUE 2010年1月(2010年3月)
ヨンファ、ジョンヒョン、ミンヒョク、ジョンシンのツインギター&ボーカルの4ピースバンド。2009年に音楽武者修行のために来日。日本では2010年3月に1stアルバム『ThankU』を発売。渋谷クラブクアトロのチケットは即完売し、急遽追加公演を恵比寿リキッドルームで行った。
F.CUZ 2010年1月(2010年9月)
リーダーのジノン、イユ、カン、イェジュンの4人組。平均身長180cmを越える長身グループ。名は、「集中させる」という英語の“Focus”に、4人を意味する“Four”掛け合わせた。イ・ユはトロット歌手ソル・ウンドの息子。
大国男児 2010年3月(2011年1月)
パステルトーンの衣装とキュートなスタイルで登場し注目の的となったミカ、カラム、ヒョンミン、インジュン、ジェイの5人組。平均年齢17才ということもあり、韓国では「国民の弟」というニックネームで親しまれている。
Infinite 2010年6月(2011年11月)
EpikHighがプロデュースを手がけるソンギュ、ドンウ、ウヒョン、ホヤ、L、ソンリョル、ソンジョンの7人組ダンスグループ。2011年4月2日に開催予定されていた日本初公演は、東日本大震災の関係で延期。7月17日に大阪で、7月19日に東京で振替公演を行った。
CODE-V 2010年6月(2011年12月)
テミン、サンウ、ナロ、ソル、ジェウォンの5人組。「V」はメンバー5人を意味するローマ数字5を意味する。K-POP歌手では初めて東日本大震災による原発事故で大きな被害を受けた福島県を訪問して、慈善公演を行なった。
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日本に進出した主なK-POPグループ(女性篇)
年月はデビュー( )内は日本デビュー(活動開始含む)
BROWN EYED GIRLS 2006年3月(2010年8月)
ナルシャ、ジェア、ミリョ、ガインの4人組。2007年6月「オアシス」の大ヒットに続き、2009年7月「Abracadabra」で“小生意気ダンス”といわれたセクシーなダンスが話題に
KARA 2007年3月(2010年8月)
ギュリ、 スンヨン、ニコル、ハラ、ジヨンの5人組。2009年「ミスター」の振付『ヒップダンス』が大流行。
少女時代 2007年8月(2010年8月)
2007年8月にデビューしたテヨン、ジェシカ、サニー、ティファニー、ヒョヨン、ユリ、スヨン、ユナ、ソヒョンからなる9人組。ドラマ、舞台、MCなど幅広い分野で活躍している韓国の国民的人気グループ。
AFTER SCHOOL 2009年2月(2011年8月)
「New School Girl」でデビュー。メンバーの脱退、加入を何度か繰り返し、現在はカヒ、ジョンア、ジュヨン、ユイ、レイナ、ナナ、リジー、イヨンの8人組。全員が167㎝以上の身長を誇りモデル並みのスタイル。
2NE1 2009年3月(2011年9月)
2009年3月にBIGBANGとコラボした「Lollipop」でデビューしたパク・ボム、サンダラ・パク、CL、コン・ミンジの4人組。同年の『2009Mnet Asian Music Awards』では新人賞を含む4冠に輝く。韓国アーティストのデビュー公演では最大規模となる全国7万人を動員。
4Minute 2009年6月(2010年5月)
ナム・ジヒョン、ホ・ガユン、チョン・ジユン、キム・ヒョナ、クォン・ソヒョンからなる5人組。デビュー前からワンダーガールズの元メンバーであるヒョナが所属するグループとして有名になり2010年5月、日本での初ライブには多くの女性ファンがつめかけ、大盛況だった。
T-ara 2009年7月(2011年9月)
ボラム、ソヨン、ウンジョン、ヒョミン、キュリ、ジヨン、ファヨンの7人組。2009年7月、「嘘」でデビュー。同9月には、超新星とユニット「TTL」を結成し、韓国国内音楽サイト、8サイトでランキング1位を獲得。ソヨンは少女時代の前身「スーパーガールズ」のメンバーだったが脱退。
f(x) 2009年9月(2012年1月)
韓国人のソルリ、ルナ、韓国系アメリカ人のクリスタル、中国人のビクトリア、台湾系アメリカ人のエンバーと多国籍メンバー5人で構成。2009年9月「LA chA TA」でデビュー。
Secret 2009年10月(2011年8月)
ヒョソン、ジンガ、ジウン、ソンファの4人からなるダンスグループ。2010年10月にデジタル・シングル「I Want You Back」でデビュー。
Rainbow 2009年11月(2011年9月)
ウリ、スンア、ジェギョン、ノウル、ユンヘ、ジスク、ヒョンヨンの7人組。2010年8月に発売した「A」でおへそダンスが話題となったが、SEXYすぎるという理由で放送禁止が命じられた。
(2012.1.1 民団新聞)