トック400人分
【宮城】「正月を2度迎えたような気分だね」。民団宮城(李根団長)は14日、石巻市内で今年初の炊き出し活動を実施。仮設住宅に入居する被災者たちを温かい韓国の正月料理でもてなした。被災者からは「おいしかった」「ありがとう」の言葉が相次いだ。
仙台から高速道路を経て車で1時間余りのところ。川べりに並ぶ仮設住宅周辺は川風を受け、体感温度はかなりの冷たさだ。寒風を吹き飛ばすかのように、今年初めての炊き出しに民団や婦人会、青年会から総勢25人が参加した。通算で12回目。
炊き出しの提供を受けたのは、追波(おっぱ)河川団地84世帯と隣接の90世帯。80人余の児童・園児をはじめ多大な犠牲者を出した河北町や周辺の被災者が主に住む。
追波地区の仮設住宅に入居する李花順さんからの依頼がきっかけ。6年前に韓国から嫁いだ李さんは日本人の夫と5歳の子ども、83歳の義母と暮らしていたが、津波で家を流失した。仮設住宅の入居者らがキムチを好むことから、民団宮城に炊き出しをお願いした。
婦人会宮城(李京子会長)を中心に準備したのは、正月らしくトックやトッポッキ、シッケ(甘酒)のほか、プルコギやキムチなど400人分。
昼食の時間が近づくと、男性スタッフが1軒1軒回りながら呼びかけるとともに、食事を居宅まで運ぶサービスぶりに、高齢者から何度もお礼の言葉が聞かれた。
駐仙台総領事館の盧大鉉副総領事は懐かしい蓄音機とLP盤を持参し、被災者たちの心を癒した。高齢者たちはユズ茶を飲みながら、宮城県出身のフランク永井などの懐メロに聴き入った。
また、韓国の歌手、朴サンヒョンさんが被災者を勇気づけるために作曲した「ハムケ ヘヨ」(皆で一緒に)のCDが会場を盛り上げた。朴さんは今回、100枚のTシャツを寄贈した。民団ではほかに、鍋や食器、ごみ袋、トイレットペーパー、タオル、石鹸などの生活用品を提供した。
李団長は「とても喜ばれてうれしい。炊き出し活動は、民団が追求する共生をアピールするだけでなく、日本人や団員の絆を確認する場でもある」と強調した。
1週間前からキムチ作りをした婦人会の李会長は「スタッフには正月疲れが出て体調の悪い人もいたが、チームワークで乗り切ることができた。逆に被災者から元気をもらえたのでは」と感想を語った。今回参加できなかった婦人会員は、メニューの下準備などで協力したという。
李花順さんは仮設住宅から出てきた一人ひとりに声をかけ、トックなどについて説明した。「皆さん、とてもおいしく食べてくれたので安心した」と李さん。
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大阪青商が義捐金100万円伝達
この日の炊き出しにあわせて、大阪青商の林健一会長ら3人が加勢。仮設住宅に住む李花順さんに義捐金100万円を伝達した。遠方からの見舞いに李さんは涙ぐんだ。
林会長は「同胞被災者のためになにかできないかと検討してきた。先輩たちの積立金も含まれている。少しでも役立ててもらえれば」と趣旨について語った。
義捐金は被災者50人に分配される。
(2012.1.18 民団新聞)