各地で開かれた在日韓国人成人式で主催の民団は、次世代育成に力を入れているだけに、新成人に青年会や学生会への参加を勧めるなど、激励の言葉に例年以上に力がこもっていた。併せて在外国民選挙への参与も呼びかけた。今年の新成人の大半は91年生まれ。韓日両国政府が在日韓国人の安定した法的地位と処遇を定めた「覚書」を交換して以降の世代だ。
東京(金龍濤団長)は8日、韓国中央会館で開催。新成人参加者47人のうち、20人が東京韓国学校の卒業生で占められていた。卒業生のひとり、金ハヌルさんは、「人とは違うのがいい」と朝鮮王朝時代の妓生の髪型で目を引いた。聞けば、KBS制作のフュージョン時代劇「ファン・ジニ(黄真伊)」の影響だという。
金団長は「青年会や学生会に参加を」と呼びかけた。青年会と学生会が主催した第2部交流会では答辞を述べた李殷先さん(東京女子医科大学在学中)をはじめ皆が笑顔で乾杯の輪に加わった。
神奈川(李富鉄団長)は7日、韓国商工会議所、中央商銀、婦人会、青年会、青年商工会、県内9支部とともに神奈川県韓国人合同新年会を横浜市内のホテルで開いた。300人の参加者は、壇上に紹介された新成人16人(男7人・女9人)を祝賀。民団県本部、駐横浜総領事館、神奈川韓国綜合教育院から韓日・日韓辞典、図書券など記念品が贈られた。
山梨(鄭郁団長)は14日、ベルクラシック甲府で新年会を兼ねての開催。新成人対象者4人のうち3人が出席。新年会に出席した民団関係者ら80人から祝賀を受けた。記念品としてクオカードなどが贈られた。
栃木(金一雄団長)は7日、宇都宮市内のホテルで開催した新年会に新成人を招待。出席者120人が4人の門出を祝った。記念品として民団が金一封、このほか商工会議所、青商、婦人会、あすなろ信組、日韓協からも記念品が贈られた。
宮城(李根団長)は7日、韓国会館での新年会に先だって新成人3人を祝福した。新成人のひとり安彩香さん(塩釜市)は、「東日本大震災で一時は家族がバラバラになり、全家族が再会できたのは1週間後のことでした。こうして家族と一緒に成人式を迎えられてほんとうによかった」と、感無量の面持ちだった。
愛知(鄭博団長)は15日、名古屋市内のホテルに新成人27人を迎えた。鄭団長からの激励の言葉に応え、金由奈さん(名中支部)が流ちょうなウリマルで「自分の道をしっかり歩む」と決意を述べた。徐美也子婦人会長から記念品が贈られた。
京都(王清一団長)は8日、市内のホテルで新成人15人の門出を祝った。王団長は在外国民選挙への投票を呼びかけ、祝賀状を手渡した。懇親会では青年会(千義雄会長)のメンバーがサムルノリを披露し、一緒にゲームを楽しんだ。
奈良(趙政夫団長)は新年会も兼ねて8日、市内のホテルで開催。出席者全員で唯一の新成人参加者、李容子さんを激励した。李さんは「青年会に参加し、ハングルや韓国の文化を学びたい」とお礼の言葉を述べた。
滋賀(朴鍾雄団長)は8日、韓国人会館に新成人3人を迎え、新年会参加者一同で祝った。朴団長は、「青年会でたくさんの仲間をつくってほしい」と激励。新成人を代表して崔隆大さん(大津支部)が決意を述べた。3人には朴団長から祝状と記念品が贈られた。
和歌山(権逸団長)が7日、市内の会館で新年会を兼ねて開催した成人式には新成人3人が参加。権団長が、「在外国民選挙に足を運んでほしい」と呼びかけた。
これに対し、金侑香さん(関西外大3回生)はソウルで1年間、語学留学してきただけに、「在外国民に与えられた選挙権を無駄にすることなく、積極的に登録していかなければならないという気持ちが強くなった」と語った。
福岡(呉政夫団長)は7日、市内の八仙閣で開いた賀詞交歓会に新成人を招待し、参加の10人全員に韓国旅行をプレゼント。婦人会の姜又順会長からも記念品が贈られた。呉団長は在外選挙への登録も呼びかけた。
佐賀(鄭清俊団長)では、昨年の夏季母国研修(大学生)に参加してから在日社会に関心を持つようになったという女性ひとりが両親、祖母とともに7日、韓国会館での式典に参加。この日の新年会参加者からお祝いの言葉をかけられた。
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過去5年で最高の出席率 大阪
大阪(金漢翊団長)は新成人の出席者が73人。対象者が年々減少しているなかでは出席率が21%と、過去5年で最高だった。8日、大阪韓国人会館で民団関係者や保護者約100人が出迎えた。
式典で金団長は「明日の同胞社会を切り開く原動力になってください」と期待の言葉をかけた。これに応え、申和容さん(奈良教育大学2年)が「成人を迎えた仲間どうし、絆を深めていく」とお礼の言葉を述べた。
記念品は卓上時計、商品券、K‐POPコンサートペアチケットなど盛りだくさん。希望者には後日、個別の記念写真も贈られる。第2部交流会では青年会と学生会が新成人にアピール。韓国往復チケットなどが当たる抽選会も行われた。
意欲と戸惑い
初の在外国民選挙には戸惑いつつも、投票に意欲を示す新成人も多く見られた。
大阪市内の李成美さんと李梨奈さんは、「いつか選挙人登録に行かなければ」と考えていたところだったという。式典のあいさつを聞いて登録の意思を固めたようだ。
大学在学中の東京から式典参加のため豊中市の実家に戻ってきたという高瑞希さんは、地方参政権付与にも関心を持っていた。民団職員から東京でも登録できると聞いて安心した表情。「必ず登録に行きます。初めての投票ですから」。
高賢史さん(大阪市)は、「昨年12月でパスポートが切れているので、まず更新が先」と苦笑い。
張由奈さん(大阪市)は、「パスポートは持っています。ただ、韓国の選挙のことがよく分からないので」と、戸惑いの表情を見せていた。同じく、安智恵さん(大阪市)も「選挙に関心はありますが、どの政党に入れていいのかがわかりません。判断できる材料を民団が提供してほしい」と望んでいた。
(2012.1.18 民団新聞)