民団中央本部による在日韓国商工会議所(韓商連)に対する直轄処分は、韓商連が重大事項である「傘下団体脱退」を民団中央と事前協議することなく一方的に表明し、その態度を固執しているのみならず、地方韓商および民団中央に虚偽報告するなど、法人格取得に関連した一連の行為が組織体系を無視し、民団社会に混乱と分裂を招く組織破壊行為に該当するためだ。
一方的な組織破壊行為
韓商連は昨年5月23日の第49回定期総会で「一般社団法人」取得を決議。この結果に基づき民団と緊密に協議することにした(総会議事録)。だが、民団中央とは、その後一度も協議をせず、11月18日に経済産業省に「一般社団法人在日韓国商工会議所」の名義使用許可申請を提出、同24日に許可の通知を受けたという。
民団中央には、その報告がなかったにもかかわらず、12月9日に韓商連役員および地方韓商宛に送った「資格取得に関する報告」で、民団中央本部には報告済み事項であるかのように伝えた。
その後、韓商連から鄭進民団中央団長にあてた「報告」公文の日付は「12月12日」となっている。同公文では「今後、当会議所は、傘下団体から関連団体(協力団体)に転換することになりますが…」と明示している。つまり、民団の傘下団体のままでも法人格を認可されたことを示していた。
ところが、12月26日付の鄭中央団長宛の公文では「今般の一般社団法人格の取得により、…傘下団体から転換し、関連機関(協力団体)としての組織的関係になっております」と、「転換」(脱退)が、いつの間にか過去形に、つまりすでに脱退したことになっていた。
朴忠弘韓商連会長が出席した12月26日の第20回民団中央執行委員会では「韓商連の『傘下団体からの脱退』は民団を構成する基幹組織であるので、その重要性とあわせて、本団傘下団体規定上『認定できない』」と決議。同時に「監督官庁の見解に対して、民団と韓商連の解釈に差異があるので、双方の代表が弁護士を同行して経済産業省を訪れ見解を確認する」ことを決めた。
民団・韓商連双方の担当者による経済産業省担当官との面談は1月12日に行われた(韓商連の要請により弁護士は同行せず)。経済産業省は、①民団が商工会議所法第4条の「特定団体」に該当するかどうかを判断する立場にない②「特定団体」かどうかは民団と韓商連との内部問題との見解を明らかにした。
それにもかかわらず韓商連は、1月16日の理事会で「傘下団体から関連団体への移行・転換」を決議し、臨時総会の2月16日開催を決めた。1月20日には「民団中央委員・代議員の辞任届」も提出したが、民団では一時保管処置とした。
地方の韓商も「離脱」に反発
この問題に関して、1月24日の第21回民団中央執行委員会では「韓商連は本団の基幹組織体である。韓商連が一方的に傘下団体から離脱することは、本団規約に違背するだけでなく、同胞社会の分裂をもたらす重大な問題であり、到底受け入れられない。文書一つで取り扱う問題でなく、中央執行委員会、中央委員会等、規約に立脚し組織的に扱われなければならない」と確認。同時に①韓商連が発信した1月21日付公文は民団を脅迫するものであり、撤回すること②中央委員・代議員の辞任届は接受せず返還する③臨時総会の中止措置を要求する④この問題に関する今後の処置は中央常任委員会に一任することを決定した。翌25日付の韓商連宛公文で、中央執行委員会の決定事項の履行を促した。
その後、東京韓商、宮城韓商、愛知韓商、神奈川韓商などが「傘下団体離脱反対」を表明。この動きは民団各地方本部を含めさらに拡大した。
だが、韓商連は2月8日の臨時理事会で、①臨時総会(2月16日)の予定どおり開催。但し、民団中央が傘下団体から関連団体への移行に合意する場合には延期可能②東京韓商が発信した傘下団体離脱反対決議文書の撤回・謝罪および東京韓商に対する処分予告などを決議し、「傘下団体離脱」の強行・既成事実化に固執した。
このため、民団中央は、2月15日の第43回常任委員会で協議した結果、規約第3条および傘下団体規定第6条に基づき、韓商連の直轄措置を決定した。
常軌を逸した言動
直轄執行を「窃盗」呼ばわり
民団中央本部の直轄処置はこの間、民団岡山本部(82年5月)、兵庫本部(97年11月)、群馬県本部(07年4月)などで執行された。内紛の自律解決が不能となったため、中央本部が乗り出して正常化させたもので、いずれも規約に基づいて粛々と処理された。
今回の韓商連のように、民団中央本部の規約・規定に基づいた直轄手続きを「窃盗行為」となじり、韓商連の警告に従わないときは「刑事上の手続きをはじめとするしかるべき法的手続きを進行させる」との「警告書」を送りつけるなどの常軌を逸した言動は、極めて異例だ。
過去に例があったとすれば、現・韓統連勢力が民団を窮地に陥れた70年代初頭の組織混乱事態(3面参照)の時だけと言っていい。
民団中央は71年7月、現・韓統連が牛耳る民団東京本部を直轄したものの、不法占拠が続いた。取り戻すまでに110回の口頭弁論、足かけ16年を費やした。しかも、和解金が3200万円。民団神奈川も同様で、本部会館を取り返すのに約10年を要し、和解金3700万円の支払いを強いられた。民団の財産が簒奪されても、日本社会から見れば内紛に過ぎず、裁判に訴えても原状回復は容易でない。
(2012.2.22 民団新聞)