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<展望>不透明化する韓半島情勢
本団は「明るい在日同胞社会を開くために全在日同胞を網羅する指導母体として組織基盤の強化」を期して、第52回定期中央大会で選出される新執行機関を中心に新たな出発を確認する。
昨年初めから起こった長期独裁政権が崩壊する余波は、今年も継続すると見られる。今年はまた、韓半島の平和と安定に関係する国連安全保障常任理事国である米・露・中・仏をはじめ、世界57カ国で指導者を選出する選挙が行われる。
一方、国際経済を見ると、EU発金融不安により、景気は全体的に下降気味である。国際政治と経済は流動的で、注視しなければならない。
李明博大統領は任期最後の年を迎えた。任期中、「グローバル大韓民国」をめざし、第2次世界大戦後に独立した国家の中で初めて「支援を受けた国から支援する国」になり、G20(20カ国・地域首脳会議)の開催と貿易高1兆㌦の突破で世界9位になるなど、国際的地位を高めた。
今年、大韓民国の将来にとって重要な第19代国会議員選挙と第18代大統領選挙が行われる。我々在外国民も初めて参与する両選挙を通じて、自由と民主主義、そして人権を守り、平和統一を志向する賢明な指導者を選出しなければならない。
北韓は、金正日国防委員長の死亡後、歴史に逆行する3代世襲を強行し、金氏王朝の実態をさらけ出した。核兵器の開発で世界から孤立し、慢性的な食糧難に加えてエネルギー不足から、恥も知らずに乞食外交を繰り広げてきた北韓は、弱冠28歳の後継者を立てたことによってその不安定性はさらに増した。
韓半島の平和と安定に直結する北韓の核問題を議論する6者会談の成否は、米・中・露の選挙と合わせて北韓後継体制の推移にかかっているといわれる。北韓の状況から見て、いつ、どんなことが起こるか予測しがたく、鋭意注視する必要がある。
創団65年の歴史を踏まえ、また、在外国民として両国政選挙において権利を行使する歴史的な1年を迎え、本団は新しい宣言と綱領を採択することになった。流動的かつ不確実性がさらに深まる内外情勢の中にあって、本団は第52回定期中央大会を期して新執行機関を中心に新たな出発をすべきである。
東日本大震災の支援事業で示した同胞愛と人道精神を発揮し、民族団体かつ生活者組織として、団員に奉仕する民団組織をめざして共同努力しなければならない。
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<在外国民選挙参与運動>不振挽回へ啓蒙を強化
第19代国会議員選挙の投票が3月28日から4月2日まで、続いて第18代大統領選の投票が12月5日から10日まで、それぞれ全国10カ所の公館で実施される。
昨年、第65回定期中央委員会で在外国民選挙参与運動として全団的に推進することを決議した。
東日本大震災の対策で5カ月間の遅延を余儀なくされたが、7月31日に行われた全国地方団長・中央傘下団体長会議で、中央本部と地方本部にそれぞれ「推進委員会」を設置し、スタートした。
11年11月13日から12年2月11日までに実施された登録結果は、19歳以上の旅券保持者約21万人のうち1万8531人(12年2月12日大韓民国中央選挙管理委員会発表)、8・8%であった。世界の予想平均値である5%は超えたものの、予想外の不振な結果であった。
この結果を我々は冷徹に受け止め、何よりも3月28日からの国会議員選挙の投票期間にはひとりでも多くの人が投票するよう勧めるべきだ。合わせて、その後の大統領選挙に対処していかなければならない。
また、いま一度民主主義社会における参政権の意義をともに考える機会を持つべきだ。団員1人ひとりに理解を得る努力が必要である。同時に、在日同胞社会の歴史性と特殊性に照らして、選挙人登録資格の再検討を本国政府に要望しなければならない。在外国民登録法の実効化とともに大統領選挙の時、国会議員選挙人登録者に対する免除と郵便登録および投票などの制度改編を積極的に要望していくべきだ。
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<組織基盤強化運動>戸別訪問で信頼を培い
本団は祖国と在日同胞社会、そして団員のために多くの努力を行ってきた。韓国の政治、経済、文化の輝かしい飛躍は我々の願望かつ希望であった。その実現過程で多方面にわたり貢献してきた。しかし、組織基盤を見ると、全体的に弱化しているというのが現実だ。
中央と地方本部、地方本部と支部など各級組織との関係が世代交替とともに希薄化している。このような現象は在外国民選挙参与運動の選挙人登録結果にもあらわれているといえよう。
組織基盤強化運動は本団と団員間の結びつきを深めるところに目的がある。
第1に、各級組織幹部の結びつきはもちろん、団員との紐帯強化にある。対話の場を通じて、在外国民としての権利と地位、そして第7次宣言および新綱領を通じて本団の責務をともに考える機会を持ちたい。
次に、東日本大震災の痛みの教訓を生かしていかねばならない。緊急時の団員安否確認のための避難所把握と、メールなどの双方情報交換が可能な連絡網の構築である。8年目を迎える「団員ネット」の確立とあわせて連携すべきだ。
さらに本運動を通じて、大統領選挙への投票参与を呼びかけ、地方参政権運動の現況、そして今年7月から施行される日本の新外国人在留管理制度に対する理解・注意を促していかなければならない。
中央と地方本部、支部幹部、そして傘下団体を含めた各級組織幹部がひとつになり、支部研修と集中的戸別訪問を展開していく。近くの団員はさらに近く、足の遠のいた団員は壁を取り払い、最近、韓国から来日した定住者はもちろん、総連から離れた同胞らすべてをわが団員として受け入れていこう。このような過程を通じて、規約運営上の諸般課題と組織整備を模索していかなければならない。
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<次世代育成運動>集いの場作り民族意識涵養
在日同胞社会の明るい未来は、民族主体(正体)性を有する次世代の存在いかんにかかっている。次世代育成運動の目的は、各級組織で推進する諸事業を対象者別に体系化し、さらに効果をあげる点にある。
次世代育成運動の象徴的な事業として、昨年実施した「次世代育成1000人プログラム」を名称と規模を異にして実施する。ただし、夏休みに集中することから、開催期間と募集、運営体制に留意して進めたい。
特に、「オリニ土曜学校」の充実化方案と対象者別土曜学校などの可能性を見つめながら推進すべきだ。次世代の友情づくりや学業支援を進めようとするならば、さらに専門的な人材の参与を促していく必要がある。
本年度は、10年度から推進してきた本団の後継組織である青年会の育成強化3次年度の最終年である。再構成が可能な全地方本部の再建とともに、支部の再建を進めたい。これは、本団各級組織幹部らの共感と参与があってはじめて可能であるといえよう。次世代みずからが集まることができる場を積極的に提供していこう。
体育会は毎年、日本社会の各種競技で活躍する同胞を発掘し、韓国国体に派遣している。今年の第93回国民体育大会は大邱市を中心に開催される。優秀な選手発掘のため各地方本部でも積極的に協力することを望む。
次世代育成運動は、次世代への影響にとどまらず、次世代の民族意識の必要性を感じている保護者により大きな期待を喚起するであろう。本団周辺に、次世代と保護者の新しい集いの場となる契機にしていく。
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<地方参政権獲得運動>日本の良識に粘り強く訴え
日本の国際社会における位相が相対的に低下傾向にあるのは事実だ。東アジア情勢、経済的困難、格差問題など、社会の閉塞状態と保守化傾向は東日本大震災によってさらに深まったといえよう。
19年目に入る地方参政権獲得運動は昨年、政権与党の2度にわたる統一地方選の敗北、繰り返される首相の交替など、早期立法化は事実上難しくなった。
しかし、我々は地域住民としての権利獲得のため運動の原点に立ち戻り、良識ある日本人の理解と支援を得て、持続的に努力していかねばならない。
本団は、民主主義先進諸国ですでに施行されている外国籍地域住民としての権利、地方参政権が獲得されるまで、粘り強く努力していこう。
永住資格を有する外国籍住民の地域社会に参画する制度的システムをどのように作成するかは、すでに日本社会みずからの問題として提起されている。
日本の政治情勢は消費税の引き上げ問題などで衆議院解散もありうるという流動的な状況にある。第52回定期中央大会で新しい体制が構成されしだい、万全な体制で対処していかなければならない。
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<結び>生活者団体の本分に徹す
本団は解放後68年、創団から66年という歳月を1世から2世、そして3世に引き継いできた。21世紀初頭、同胞社会の人口構成と意識格差、経済的環境とライフスタイルの変化などにより、困難が継続している。在外国民補助金の円高ウォン安の影響、そして自立財政の困難さから財政的に非常に逼迫しているなか、4大重点方針と継続事業を堅実かつ効率的に推進していく。
まず、韓半島の平和と安定に直結する東北アジアの情勢については、昨年新しく出帆した韓国の憲法機関、民主平和統一諮問会議の第15期日本地域協議会の諮問委員434人とともに表裏一体となって推進していく。韓国の平和統一政策を広げるために努力する。そして相も変わらぬ北韓の主張をオウムのように繰り返す総連に対し、姿勢を是正するよう促していく。
次に、本団が生活者団体であることを象徴的に示す「民団生活相談センター」と「韓国人旅行者支援センター」は、全国ネットワーク化を通じてさらに充実した運営に努めていく。昨年、本国の大韓法律救助公団と交わした業務協約書を土台に、新しい次元の相談にも応じられるよう努力していく。
「脱北者支援民団センター」は、北韓の実態とあわせてその存在意義が高まりつつある。日本に居住する脱北同胞は増加傾向にあり、同胞愛と人道愛をもって対応していく。
また、在日同胞社会と本団を正しく知らせる歴史教育の殿堂「在日韓人歴史資料館」の重要性もまた高まっている。今年は、本国での特別展示を計画しており、本国同胞と在日同胞の結びつきを深める契機になることを望む。
在日同胞の民族的連帯の場として始まった「10月のマダン」は、民間レベルの韓日文化交流マダンとして定着している、本団の文化交流事業である。地方本部・支部では日本の地域祭とともに開催するなど、わが同胞と日本人住民間の交流の空間となっている。今年も継続して展開すべきだ。韓日友好親善の懸け橋的役割を担ってきた本団は、このような文化事業を通じて着実に韓日友好親善を推進していく。
本団の機関紙である民団新聞と民団公式サイトを通じて、4大運動と継続事業、そして諸般活動について充実した広報活動に努める。財政問題により発行回数を年30回(月2回または3回発行)と制限されているが、在日同胞社会の機関紙、あるいはオピニオン紙としての役割を高め、速報は本団公式サイトで適宜に紹介していく。
最後に、東日本大震災被災地の復旧・復興にはまだまだ時間がかかると見られる。特に、被災地の本団各級組織では、継続して困難な中で復旧・復興事業を推進していくであろう。被災地の活動に対して声援と支援を引き続き送るようにしたい。
新しい宣言と綱領を採択する本年、山積する課題を先輩らの創団精神を思い起こしつつ、一つひとつ克服していこう。名実ともに民族団体かつ生活者団体として時代に呼応した、確固たる組織基盤を確立し、活性化に向けてともに努力していく。
(2012.2.29 民団新聞)