前・第51期規約委員会(委員長=黄迎満中央本部議長)は昨年度、計4回の小委員会と2回の全体会議を経て、新宣言(第7次)案と新綱領案を第52回定期中央大会に上程し、また、前日の第66回定期中央委員会に規約・規定の一部改正案を上程、それぞれ満場一致で承認を得た。宣言は、歴史的な使命に対する民団の基本姿勢を示す。綱領は、それを簡潔にまとめたものだ。宣言・綱領が明示した理念・目的を具現するのが組織であり、規約・規定は、そのための組織運営の合理的な在り方を定める。新宣言・綱領および改正規約について解説する。
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民団の性格規定…統合へ多様性を容認
1996年に採択された第6次宣言は、15年が経過するなかで、民団を規定する内外の諸条件および現行規約とそぐわない側面が目立つようになっていた。
民団の現行規約は、韓国国籍を所持していなくても、韓半島出身者とその子孫を団員資格として認定している(2005年改正)。だが、6次宣言は「大韓民国の在外国民として」の文言を残し、大韓民国樹立以降からの「国民団体」としての性格規定を変えていなかった。
新宣言は「大韓民国の国民として代を重ねる団員を中心に」と、国民を中軸としつつも、「日本国籍取得者」など多様な同胞を幅広く結集することを明示した。では、「国民団体」に代わる性格規定はどうなったのか。
民団は自ら、「生活者団体」であることを折に触れ強調してきた。それはまぎれもなく、民団の基本的性格を意味するものであり、過去のどの宣言でもその精神は一貫していた。
だが、朝連(在日朝鮮人連盟)とその後身である総連の過剰な政治性に対置させ、特定の政治・宗教勢力による浸透と影響力の行使を排除するための意味合いが強く、宣言・規約で「生活者団体」を明示したことは一度もない。慣習的な自己規定と言うべきものだ。
新宣言では、「(時代の変化に即応しつつ在日同胞の希求を一身に担った)本団はまさに、苦難克服の歴史が育んだ生活共同体であり、さらなる未来を切り開く運動体である」とし、生活者団体の基調を継承しつつ、「運動体」としての性格を全面に出している。
また、「(各種差別を撤廃・解消しつつ日本の発展に寄与してきた)地域住民団体」であると初めて言明し、「日本自らが永住外国人の地方参政権を早期に付与するよう強く促す」との文言を追加した。綱領ではそれに合わせて、「我々は、日本地域社会の発展を期する」を新たに設けた。
22日の中央委員会で、「国民団体」に代わる民団の性格規定が明確でないとの指摘に対し、黄迎満議長は「我々は、北韓や総連と闘うときは、政治団体的な性格を帯びる」とし、民団は「生活者団体」を基本としつつも、多様な性格を持つことを強調した。
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祖国統一への姿勢、一翼担う決意を全面に
2012年から団員の多くが「在外国民」として韓国の2大国政選挙に参与することになったのも、主要な条件変化の一つである。
新宣言は、「我々と大韓民国との紐帯を新たな次元に押し上げ」るものと判断し、「(先進統一国家の建設を主導する大韓民国の国力増強など)歴史的課業に参画するためのより確かな手段になる」との見解を盛り込んだ。
2大国政選挙への参与という新たな条件に立って、祖国統一問題でもより踏み込んだ、明確な姿勢を打ち出したことになる。
第6次宣言でも、「祖国の統一が、人類共通の良識である自由民主主義の理念のもと平和的・自主的に達成されるべきであるとの方針を堅持し、この具現のため努力する」と表明されてはいた。
新宣言は、「韓半島の分断構造は、南北間の著しい格差拡大や北韓による不条理の蓄積によって地殻変動期に」あるとの認識に立ち、北韓体制の崩壊をも念頭に「在日同胞社会は今後もなお、劇的な変化の予兆を見せつつ複雑に推移する韓半島情勢の影響を免れない」との視点から、実践項目の第一項にこう掲げた。
「我々は、大韓民国の憲法精神を守護し、在外国民選挙に積極的に参与するとともに、平和統一と先進祖国建設の一翼を担う」
これについては、新綱領の筆頭にうたわれた「我々は、大韓民国の国是具現を期する」と結びつけて考える必要がある。旧綱領ではこの部分が「国是を遵守する」となっていた。
かねてから「国是の文言は古くさい」、「そもそも国是とは何を意味するのか」、といった論議があった。その概念については、民団65年の歴史過程で解釈にぶれがあったものの、この間、大韓民国の憲法前文(別掲)にうたわれた憲法精神を意味する、との見解が支配的になっていた。
一方で、祖国統一問題について民団は、これを主要な運動課題にすべきであり、統一推進を綱領で明示すべきだとの主張も強まっていた。これに対して、憲法前文に「平和統一の使命」がうたわれており、「国是遵守」は自動的に統一推進の使命を自らに課すもの、との論議が提起されてきた。
この経緯を踏まえ、「正義、人道および同胞愛により民族の団結を強固」にし、「自由で民主的な基本秩序をいっそう確固」にする憲法精神に基づき、「平和的統一の使命」により能動的に参与する意志を表明すべく、国是「遵守」を「具現」に一段引き上げた。
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規約・規定の改正
規約委員会の位置づけ=宣言・綱領・規約を審議する規約委員会の位置づけがこれまで、規約に明記されていなかった。その必要性に照らし、議決機関の条項9条に、規約委を中央本部に置くことができるとする6項を新設した。
支団長の3選禁止解除=3選禁止は組織の独寡占を防ぐだけでなく、人事交代を通じてより多くの団員が組織運営にかかわり、組織活性化につなげる意図がある。だが、特に支部では人材不足が深刻化している。支団長については、1期以上の未就任期間を置けば、3選を可能とした(規約運用規定第64条1項)。
監察任務からの除外=監察権の行使において公正を期すために、事案の当事者や関係者などの場合、任務から外れるべきだとの提議があった。監察委員会運営規定の第10条に、「当事者」「特定な関係者」「家族や親族」が関係している場合の「監察任務からの除外」を新規に挿入した。
選挙人制度=多くの地方本部と大手支部では、原則として代議員制をとっている。代議員制の地方本部の一部は、選挙人制度を導入しているが、代議員制を補完すべくより多くの意思を反映させようとする本来の趣旨に反する例もある。選挙人制度の趣旨をより分かりやすくするため、中央本部の形態に準じて実施することを明記した(選挙管理規定11条)。
日本籍団員の支部3機関長就任=2005年の規約改正で、地方本部・支部では日本籍団員も任員(副団長、副議長、監察委員)と顧問に就任できるようになった。だが、支部に関しては副任員だけでなく、機関長も許容すべきだとの声が多かった。全国各地の支部ですでに、日本籍団員が3機関長に就いている実態もある。支部3機関長については日本籍団員に、正式に門戸を開放した(任員および職員就任規定第1条)。
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大韓民国憲法前文
悠久の歴史と伝統に輝く我が大韓民国は、3・1独立運動により建立された大韓民国臨時政府の法統および不義に抗拒した4・19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚して、正義、人道および同胞愛により民族の団結を強固にし、すべての社会的弊習と不義を打破し、自律と調和を基礎として自由で民主的な基本秩序をいっそう確固にして、政治、経済、社会および文化のすべての領域において、各人の機会を均等にし、能力を最高度に発揮させ、自由および権利にともなう責任と義務を完遂させ、内には国民生活の均等なる向上を期し、外には恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することにより、我々と我々の子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを誓いつつ、1948年7月12日に制定され、8次にわたって改正された憲法を、ここに国会の議決を経て、国民投票により改正する。
(2012.2.29 民団新聞)