脱北者北送阻止運動と自称「進歩勢力」
柳東烈(治安政策研究所・安保対策室選任研究官)
去る2月初め、中国瀋陽で脱北者31人が中国公安当局に逮捕され、北に送り返される危機に処したことが北韓人権団体によって明らかになり、国内でこれを糾弾する脱北者北送反対運動が広がっている。この運動は、北韓人権団体と保守団体だけでなく、良心の人気芸能人、弁護士、医師、および中・高校生らが参加し、社会全般に問題化されている。
さらに、国際社会もこれに参加している。国連難民機関(UNHCR)と国際アムネスティ(国際赦免委員会)では、中国が加入し、国連難民条約や拷問防止条約などの国際条約を遵守するよう声明を発表し、脱北者北送阻止の努力をしている。
3月5日には米下院外交委員会傘下の人権小委員会が脱北者北送に関連する緊急公聴会を開催し、米国政府も中国に対する意見を表明するものと見られる。加えて、アジア記者協会、韓国への観光外国人や中国の一部知識人たちも、脱北者北送反対運動の声を高めている。
まさに人類の普遍的価値である人権を尊重しようとする努力の一環である。ところが普段、良心の表現と人権と平和を実現するために運動すると自称している韓国の社会進歩勢力(実際は従北左派勢力のエセ進歩勢力)は全く動きを見せない。
基本的人権である国民生存権が脅かされると言って、狂牛病の虚偽扇動と「ろうそく闘争」に狂奔していた従北勢力たちだ。また、「体制の守護法である国家保安法が個人の思想と良心の表現の自由と人権を侵害する」と外国まで行き、国家保安法撤廃を主張し、政府の恥をさらけ出した従北左派勢力たちには、私たち同胞脱北者の人権は眼中にない。
中国大使館前で18日目、北送反対のハンストを行っているある女性脱北者が「脱北者が"千聖山サンショウウオ"より下なのか」と絶叫する意味を知るべきである。
「サンショウウオを生かそう」と、国策事業である京釜高速鉄道のトンネル工事を妨害し、「100日間ハンスト」を展開した女僧侶と支持闘争を展開していた「偽善進歩勢力」は、今どこで何をしているか気になる。
金氏一家(金日成、金正日、金正恩)の専制政治と飢餓に耐えられず、韓国に入国した脱北者が2万人を超えて久しいが、中国東北3省に脱北して定着の地を探せずにさまよう脱北者が10万人を超えるという。
このような脱北ラッシュは今後も続くだろう。金正日死亡直後の権力を世襲した金正恩は「金正日死亡哀悼期間中に脱北したら、3代まで滅族せよ」と指示したという。そのため、北送された脱北者がどのような厳罰を受けるかは明らかである。
問題がこうであるにもかかわらず、人権の守護者を自任する従北左派勢力の人権基準は、偏狭なだけだ。こんな人たちが韓国社会の進歩を自任するということは韓国の恥であり、現代文明史の不幸である。
今は、脱北者北送反対の意を集め、全国民的にに脱北者問題の根本的な解決策を模索しなければならない。
韓国政府は2005年に発議され、8年間漂流している「北韓人権法」を早急に処理しなければならない。米国、日本、欧州連合などではすでに「北韓人権法」を制定し、脱北者問題など北の人権の改善努力をしているが、肝心の当事者である韓国は、手をこまねいているのだ。
去る2月24日、国会外交通商統一委員会は、脱北者の強制送還の中断要求決議案を採択したものの、政界は4月の総選挙に包まれてしまい、脱北者問題を積極的に対応していない。特に、一部の政党は最初から関心すらないようだ。
韓国国政の責任を負うべき政党が悲惨な脱北者の実情を無視することは恥ずかしい限りだ。
脱北者問題の発生原因は、金日成−金正日−金正恩と繋がる首領絶対主義暴圧体制にある。
前代未聞の3代世襲暴圧政権の「金氏集団」が健在な限り、北韓住民たちは残酷な人権弾圧に喘ぎ、生存権を脅かされて、生計型脱北者を量産するしかない構造となっていく。
北首領絶対主義暴圧政権の解体と北の民主化だけが根本的な解決策であることを指摘し、そのために私たちは立ち上がるべきだ。