掲載日 : [2003-09-25] 照会数 : 3741
まだまだ現役ハラボジ・ハルモニ 金守昌さん(03.9.24)
築上郡で農業営む 金守昌さん(81)
イネの成長が楽しみ…農閑期は植木職人に変身
水も空気もきれい、田舎暮しが一番やけん―。福岡県東部の築上郡で、同胞では珍しい農業を営むのは金守昌さん。
農業一筋で59年。稲の刈り入れは先週終えた。「今年は例年より1割2割、悪かろう」と冷夏での不作にもあっけらかんとしたもの。「こればっかりは、しゃーないで」と日焼けした顔で笑う。
京都生まれの2世だという。日本の敗戦も近い1944年、戦争に狩り出されて人手不足の農村に百姓に行かないかと誘われ、一家で築城に移った。農作業をして「メシと家、ドブロクが少し」もらえる生活だった。
ほどなく日本が敗戦。戦地から復員して人手がそろうと、手のひらを返したように「国へ帰れ」だった。頼る所もなく「そりゃあなかろう」と村長に掛け合い、5反ほどの小作で生計を立てることに。60年代に地主から土地と家屋、6反の田を買い、自作農家となった。
閉鎖的な村社会の中でたった1件の〞よそ者〟として暮らしてきた。「最初は盗人のように見られた」という。コメ泥棒騒動の時は、真っ先に疑われた。だが、今はすっかり村の一員として、夫人の姜未順さん(75)とともに溶け込んだ。
夜明け前の4時30には目が覚める。夜明けとともに稲の育ち具合を見るために田んぼをぐるりとひと回りするのが田植えから稲刈り時期までの日課だ。「田植えしたばかりはヒョロっとしたのが3本じゃろ。夏の時期にどんどんのびて、秋に穂が垂れてくる。そりゃあ、楽しみじゃー」とできたコメをわが子のようにながめる。
コメづくりが終わったこれからは、庭師の仕事が忙しい。30件ほどの得意先を回って庭木や生け垣をせん定する。「酒代稼ぎやけん」と顔一面で笑う。晩酌の一杯が最高の楽しみだという。
(2003.9.24 民団新聞)