掲載日 : [2003-10-29] 照会数 : 7893
母校に恩返し 26年間図書贈る(03.10.29)
[ 母校の後輩から花束を受けとる鄭さん(右)と張さん ]
淡路島出身の鄭幸男さん(前民団中央副団長)
4千冊以上の蔵書に…張勲氏伴い50年ぶり訪問
【兵庫】兵庫県の淡路島で幼少時代を過ごし、東京へ出て事業を成功させた在日同胞2世の鄭幸男さん(62)=前民団中央本部副団長=が、母校の富島(としま)小学校に26年間毎年、図書購入費として20万円を送ってきたことに感謝し、23日には鄭さんを母校に招いて講演会が開かれた。
鄭さんは解放前の41年生まれ。解放後、職もないため父母は土木作業、古鉄業、養豚などで生計を立ててきたものの、13歳の時に父が事故で死亡。一家の柱を亡くし、貧困の中で6人兄弟を育てるために13歳で丁稚奉公に。「苦労、苦労、涙、涙」の毎日だったという。
苦労をバネに、東京へ出て事業を成功させた後「読み書き計算、人間としての基礎」を教えてもらった母校に恩返しがしたいと思い、好きだった本が買えなかった思いを後輩に味あわせたくないと図書費用を贈ることにしたという。以来毎年、教育委員会を通じて20万円を贈り続けた。設立した会社にも「淡路総業」と名付けたほど鄭さんの淡路島に対する思いは深い。
学校側では、鄭さんの思いを実現しようと児童向け図書を購入、「谷川文庫」と名付けて2階の図書室に設置した。今では4118冊を数え、北淡地区の7小学校で最も充実している。
学校側は、児童たちに鄭さんの善行を知らせたいと講演を依頼。話すのが苦手なために友人でもありよく似た境遇で育った張勲さんを伴っての講演会となった。
鄭さんが母校を訪問するのは卒業以来50年ぶりのこと。岡一秀校長はじめ先生や78人の児童、北淡東中学の生徒、父母、卒業生ら300余人が詰めかけ、淡路島での鄭さん一家の生活や苦労話に聞き入りながら、鄭さんの慈善活動に大きな拍手を送った。
(2003.10.29 民団新聞)