掲載日 : [2003-12-03] 照会数 : 3729
在日同胞は素通り 厚労省・無年金障害者の調査(03.12.03)
なんのための調査だったの?
同胞市民支援団体…「坂口試案」実現を不安視
日本厚生労働省による無年金障害者の「所得の面から見た生活実態」調査に在日同胞当事者が結果的に一人も含まれていないことが、報告書を通じて明らかになった。実態調査を通じて在日障害者を取り巻く困難な生活環境を浮き彫りにできるのではと期待していた同胞・市民でつくる支援団体からは「なんのための調査だったのか」と憤る声も上がっている。
今回の実態調査はすべての無年金者を救済するとした昨年8月の坂口力厚生労働相の「試案」に基づく。
対象は任意加入の時代に国民年金に加入せず障害を負った学生、主婦などの無年金者と、国籍要件のため加入できなかった定住外国人。給付金額を決めるにあたって「まず実態調査を」と厚労省が上智大学の教員に委託した。
調査は今年の2月から3月にかけて行われた。対象としたのは国立身体障害者リハビリテーションセンター、国立伊東重度障害者センター、および国立別府重度障害者センターの修了者のうち、「年金を受給していない可能性があると見られる」1366人。
このほど厚労省から発表された「報告書」によれば、有効回答者557人のうち実質的な無年金障害者は100人にも満たず、この中に在日外国人の無年金障害者は一人も含まれていなかった。
91年から一貫して在日外国人無年金問題の解決を求めている「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(李幸宏代表)では「このままでは厚労省が無年金障害者の問題を解決するにあたって、在日外国人無年金障害者が除外されたり不当に扱われたりはしないか」と憂慮している。
同事務局の栗山和久さんは「そもそも無年金障害者がどこに何人いるのか、把握が困難なことは厚労省自ら一貫して述べてきたこと。当事者である『学生無年金障害者訴訟原告団』や『全国脊椎損傷者連合会』そして私たち『全国連絡会』などに依頼すれば、確実に無年金障害者の把握はできた。なぜ研究者に丸投げして事足れりとしたのか」と首をひねっている。近く厚労省へ抗議・要望活動を行う考えだ。
厚労省は今回の調査にあたって同省特別科学研究費1000万円と1年近い時間を費やした。
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坂口試案とは
年金制度に加入せず、障害者になっても年金給付を受けられない約12万人に一定の金額を福祉手当として支給しようという坂口力厚労相による案。「加入したくてもできなかった」制度的無年金の定住外国人からは「私たちは日本人の学生や主婦と事情が違う。過去の背景を踏まえないままの試案には違和感を覚える」との声もある。
(2003.12.03 民団新聞)