掲載日 : [2004-01-01] 照会数 : 7982
福祉・教育・文化事業を強力推進 中央団長新年辞(04.1.1)
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原点に戻り〞同胞と共に〟…「歴史資料館」開設へ総力
韓半島平和・「反核」の声結集も
親愛なる在日同胞の皆さん!
2004年の新春を迎え、在日同胞の皆さんに謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
昨年を振り返ってみますと、2月に出帆した盧武鉉大統領の「国民参与」政府は、韓民族にとって至上課題である韓半島の平和定着と南北統一問題について、対話と交流協力を基調とした「平和繁栄政策」を推し進め、北韓の核やミサイル問題に対しては、話し合いで解決するという基本姿勢を明らかにしました。
大邱ユニバシアード大会に北韓選手団が参加できる道筋をつける一方、米国、日本などと共同歩調を取り、北韓を6者会談のテーブルに着かせる努力を傾注しました。
日本では核の脅威と日本人拉致問題で沸騰した「反北」感情を背景に、与野党あげて有事関連法案を成立させるなど、保守派の勢いが大きくなっています。そのあおりを受けて、本団が長年推進してきた地方参政権運動は、法案が審議されない状況が続いています。
私は昨年8月の光復節記念式典で、在日同胞社会の安定した生活権確立のためにも、日本人との共生社会実現のためにも、核や拉致問題解決が急務であると訴えました。今年も引き続き、朝鮮総連同胞も含めた「反核」の声を結集し、在日同胞の立場から韓半島の平和定着に寄与したいと思います。
また、在日同胞としては脱北同胞の存在も無視できません。本団では昨年6月、命からがら日本に逃れてきたかつての在日同胞を支援するために、「脱北者支援センター」を設立し、就職斡旋など具体的な支援を始めました。この人道支援は内外の多くの方々から賛同を得ていますが、今後とも脱北同胞に対する皆さんの惜しみない支援をお願いする次第です。
親愛なる在日同胞の皆さん!
在日同胞の懸案である地方参政権問題はこの間、停滞を余儀なくされてきましたが、昨年12月、民団長野県本部の地道な努力で長野県下の全自治体が意見書を採択するという朗報も届いています。また、昨年6月に訪日した盧武鉉大統領は、国会での演説を通じて早期成立を強調して下さいました。私たちは韓国政府がアジアのどの国よりも先駆けて、在韓定住外国人への地方参政権付与を実現するよう求めると同時に、政府の側面支援を得ながら1月の通常国会に焦点を合わせ、参政権運動を強力に展開する所存です。
本団は昨年、組織活性化を図るために「ウリ支部ウリチャラン運動」に着手し、運動の進捗状況の点検とモデル支部の実践を学ぶために、11月に大阪で「全国支団長交流会」を開催しました。
各地から参加した幹部は、地域同胞との接点である支部の重要な役割を再確認するとともに、大阪管内の支部が進めているデイサービスなどの現場から高齢社会の現実を直視し、福祉事業のノウハウを学ぶという貴重な体験をしました。地域に根付き、地域の同胞を支える福祉の現場には、支部幹部の意欲と活力があふれ、同胞間の信頼関係を土台にした新しい芽が着実に育っていることを立証していました。「同胞の中へ」。これこそまさに民団の底力の源泉と言えるでしょう。
親愛なる在日同胞の皆さん!
同胞の生活から学び、同胞のために実践するという組織活動の原点に立ち返りながら、私はこれまで以上に在日同胞社会のニーズに応えられる団体への改革を進めたいと思います。
具体的には「福祉、教育、文化」事業を進める民団の強力推進です。
まず、高齢社会を迎えている現状に鑑み、福祉事業の全国展開に拍車をかけたいと思います。老人ホーム建設をはじめ、一つでも多くの支部が自前の会館を活用し、身近な所から福祉事業に着手するよう本腰を入れて取り組んでいきます。
次に教育の問題です。私たちは韓半島にルーツを持つ在日同胞として、基本的な民族素養を身につけるのはもちろん、韓日の架け橋として、在日同胞の自己存在を主張する主体の確立が必要です。
昨年、日本の政治家らが韓日併合などの過去史について、誤った見解を繰り返しました。暴言の根底には韓国に対する偏見があり、これらの感情を集大成して引き起こしたものがいわゆる「教科書問題」です。
再燃するであろう「教科書問題」に即応するためにも、私たち自らが正しい歴史認識を身につけなければなりません。
そのためには、幼少期から民族意識を植え付け、在日同胞の立場を理解させるオリニジャンボリーの再開や、在日同胞を取り巻く社会教育を学ぶ場としての民族大学の開講、日本の教育現場に多文化共生教育を根付かせる取り組みなど、様々な教育実践を図りたいと思います。
3番目に、文化事業の推進です。在日同胞はすでに3、4世が同胞社会の大半を占め、日本定着が在日同胞の完全な形になりました。とはいえ、本国と日本の緊張関係が高まれば、在日同胞と日本社会の関係が揺らぐという脆弱な一面を否定できません。
本団は日本の地域社会に貢献する在日同胞の求心体として、地域に開かれた文化事業を軸に、日本社会との善隣友好関係を築く所存です。中央本部では一昨年開催して好評を博した「民団フェスティバル」を今年2月に再開することにしていますが、同様に全国の民団会館を開放し、「在日」をアピールしながら、地域の人々と多文化共生を図っていく文化的な土壌づくりに着手したいと思います。
親愛なる在日同胞の皆さん!
北韓の核や拉致問題が在日同胞社会にも影を落とした2003年を送り、私たちは今、新しい年を迎えています。
北韓が引き起こした一連の問題の解決は、6者会談の推移を注視しなければなりませんが、盧武鉉大統領をはじめとした6カ国の指導者の英知と英断を期待したいと思います。私たち在日同胞も在外国民の一員として民団を中心に団結し、在日同胞の底力を結集して解決の一助となすべきだと思います。団結すれば、北韓を取り巻く暗雲も晴れ、明るい兆しが必ず見えてくることを確信しましょう。
在日同胞社会を取り巻く経済状態もまた、決して芳しくはありません。しかし、こういう厳しい状況を乗り越えてこそ同胞社会は拡大、発展を遂げるものです。今年も既存の民族金融機関の発展を支援しながら、経済再生を図る努力に全力を傾けていきましょう。
親愛なる在日同胞の皆さん!
1世の草創期から同胞社会の未来を築く3、4世の時代まで、私たちは1世紀近くにわたって在日同胞の歴史を創造、継承してきましたが、私たちの歴史を網羅した「在日同胞歴史資料館」一つ構築することができませんでした。実に残念なことだと言わざるを得ません。
今、本団は在日同胞の精神的支柱になる「歴史資料館」の2005年の開設に向けて、準備を急いでいます。過去の歴史を踏まえて現在の在日同胞の生活を照らし、明るい未来の展望につなげていくこの事業は、不幸な過去に拘泥するのではなく、韓日両国民が共生社会を担うという要素も盛り込んだ一大プロジェクトになります。必ずや在日同胞の総意と本団の総力をあげて実現していきます。
また、同胞の集いとして完全に定着した「10月のマダン」を、在日独自の文化を創造し、育成し、昇華させる場として位置づけ、発展させていきたいと思います。国籍は違っても、韓半島にルーツを持つ同胞が繰り広げる民族文化の祭典は、同胞だけでなく地域の日本人にも共感をもって受け入れられるでしょう。
本団に課せられた課題は以上のように膨大です。しかし、私は決してひるむことなく、様々な課題に対して皆さんとともに果敢に挑戦していくことをお約束いたします。2004年が在日同胞の皆さん一人ひとりにとって、幸多い年になることをお祈りしながら新春のごあいさつといたします。
(2004.1.1 民団新聞)