掲載日 : [2004-01-14] 照会数 : 3828
生計にずしり無年金 福祉サービスからも孤立(04.1.14)
[ 「進める会大阪」が民団生野西支部に開設した生活支援センターで食事を楽しむ同胞高齢者たち
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生野区在住同胞高齢者…子どもの援助頼り
【大阪】生野区在住の在日同胞高齢者の多くは老齢年金を受けられず、経済的に困難な境遇に置かれていることが、同胞NPO法人による生活実態アンケート調査で裏付けられた。日本語の読解が不可能なお年寄りには行政の福祉サービスに関する情報も十分に行きわたらず、ともすると地域で孤立しがちな現状も浮き彫りとなった。
民団生野西支部管内で同胞市民団体調査
調査は大阪市から委託を受けた「在日コリアン高齢者福祉を進める会大阪」(宋貞智理事長)が民団大阪・生野西支部(夫忠甫支団長)の協力のもと取り組んだ。
本格的な分析は大阪府立大学社会福祉学部社会福祉調査研究会メンバーを中心とする「在日コリアン高齢者生活実態調査委員会」(代表、庄野怜子大阪府立大学名誉教授)が担当、3月末をメドに報告書にまとめる方針。
今回明らかになったのは概要で、調査票をもとに「すすめる会大阪」がまとめた。
生活実態で特徴的だったのは、無年金者が圧倒的多数にのぼること。年金受給者もいるが、これはごくまれなケース。回答者はほぼ例外なく生活上の困難を抱え、同居している子どもからの何らかの援助、もしくは若いころに蓄えたわずかな貯金を取り崩しつつなんとか生活を維持しているのが現状だった。
中には子どもの経営する零細事業が思わしくなかったり、親子関係が不仲などの理由で子どもたちからの援助に頼れず、生活保護の受給が適当と判断されるケースもいくつか見られた。しかし、家族と同居していたり、持ち家であれば、行政の資格要件から外れてしまうのだという。
介護保険料だけは義務的に支払っているが、見返りとしての福祉サービスからは遠いところに置かれている。識字の問題もあり、市政便りはもとより、地域の身近な生活情報を伝える町内回覧板も判読できないからだ。近隣に住む同胞から折に触れて口づてでもたらされる情報だけを唯一の頼りとしている。「すすめる会大阪」では、福祉サービスをあたりまえのように権利として受けるという意識そのものが、在日同胞1世には希薄なのだと指摘している。
「すすめる会大阪」の宋理事長は「介護保険の始まる4年前にも生野区で同胞高齢者の福祉サービス利用状況を調査したことがあるが、そのときと比べてまったく前進が見られない。かえって保険料を払っているぶんだけ深刻」と話している。
大阪市では報告書のまとまるのを待って、今後の同胞高齢者のための福祉施策づくりに反映させていきたい考えだ。
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調査の概要
対象者は民団生野西支部に所属する03年1月1日現在、70歳以上の在日同胞高齢者家族のいる558世帯。地域は生野区勝山北、桃谷、鶴橋にまたがる。03年9月28日から12月17日までの期間、郵送によるアンケート調査と自宅を訪問しての対面調査方式で301世帯から有効回答を得た。主な質問事項は、在日同胞高齢者自身の収入源と世帯別の月間収入金額、識字の可否、生活や健康上の不安、介護保険の利用状況、公的福祉サービスの利用状況と情報の入手先など26項目にのぼる。
(2004.1.14 民団新聞)