掲載日 : [2004-01-21] 照会数 : 6244
<社説>急がれる無年金外国人の救済
19日から第159回通常国会が始まりました。私たち定住外国人は、地方参政権法案再々上程とともに、今年が5年ごとの抜本改革の年でもある年金制度の行方にも強い関心を抱いています。年金大改革はこの間、マスコミで大きく報じられ、また自身の老後生活に影響を及ぼすために、日本国民の多くの関心の的となっています。しかし、無年金の外国人が存在すると言う事実と問題の深刻性についてはほとんどの方が知りません。
二重負担強いられる若年世代
「無年金の親を支えている私もいずれ無年金になります」。この言葉は、2月から公判が始まる高齢者無年金訴訟の原告を扶養している子弟の訴えです。民団は、国民年金制度から国籍条項が撤廃された82年から、在日同胞は自身の両親と日本国民高齢者の双方を支えると言う二重負担を強いられる現状を訴え、無年金高齢者問題の早期解決を求めてきました。しかし、制度から国籍条項が撤廃されて20年が経った今日でも、未だに解決していません。
一般的に国民年金は保険料納入による社会保険制度と言われています。従って、「未納入者は受給対象から除外されても仕方がない」とか「日本人でも無年金者が存在しており、未納者を救済することは年金制度そのものが崩れる」と、厚生労働省は主張しています。果たしてそうでしようか。61年の制度創設時や沖縄返還時、中国残留邦人を対象とした特例措置は、未納入者に対する救済そのものではないでしょうか。また、昨年制定した「拉致被害者支援法」では、拉致被害者の保険料を日本政府が負担しています。
立法、行政から解決は可能
これらについてどのように反論するのでしようか。拉致被害者に対しては日本政府は「自己の意志によらず無年金になった場合は国がしかるべき措置をとる」と説明しています。まさに外国人無年金者は、自己の意志によらず無年金になった人です。ましてや、納税の義務は日本人と同等に果たしているにもかかわらず、制度から除外している現状は理不尽そのものではないでしようか。
現行の傷害福祉年金は60%が税金から拠出していると言います。また、将来の年金財源への税金比率も検討されています。従って、立法や行政に携わる人々が税金の使い方を考えれば解決できる問題ではないでしょうか。特に高齢無年金者は日本の植民地支配の生き証人でもあり、差別と偏見のなかにあっても日本国民とともに生きてきた苦労に報いるためにも、一日も早い救済措置の実現が求められています。
日本が目指す国際・福祉・人権国家の建設はこの問題の解決がなくては語れません。当事者である外国人と良識ある日本人が手を取り合って、互いに老後を心配せずに生きられる共生社会を創り出しましょう。
(2004.1.21 民団新聞)