掲載日 : [2004-01-21] 照会数 : 3840
BSEショック再来 品薄の米国産牛肉(04.1.21)
[ にぎわう焼肉店(写真と本文は関係ありません) ]
焼肉業界…仕入れ値高騰に苦慮
米国でのBSE(牛海綿状脳症)騒動の余波が焼肉業界にもじわりと広がっている。日本農林水産省による緊急輸入停止措置で供給が滞り、日本人消費者に人気のある米国産牛タンを中心に仕入れ価格が上昇しているためだ。在庫にも限りがあるため、このまま輸入禁止措置が長引けば、焼肉業界は大きな打撃を受けそうだ。
禁輸長引けば大打撃
和牛専門店でも牛タンとミノだけは米国やオーストラリアといった外国産を使うという焼肉店は多い。これは和牛に比べて仕入れ価格が格段に安いせいだ。店で1000円以下で食べられるものはこうした外国産とされる。ところが昨年未、米国でのBSE騒動が明るみになってからは業者の「売り惜しみ」で輸入内臓肉ばかりか、和牛も価格上昇を続けている。
「『在日』は(肉質)ランクの高いところでやっているのでいまはそれほどの影響はない」と話す朴喜雄さん(民団山梨本部団長)も「(禁輸が)長引けば別」と警戒心を隠さない。
渋谷で老舗の店舗を経営している李康則さんによれば、通常の仕入れ価格1㌔㌘3200円の米国産牛タンが正月以降は3600円から3800円になっている。「タン隠し」が始まってからは仕入れそのものにも支障を来しているという。
李さんは最近、あらゆるコネを通じてようやく100本を仕入れたが、価格はキロあたり4000円になっていた。さらに追加注文を頼んだところ、現金払いで4200円を要求されたうえ「早い者勝ち」と釘を刺された。李さんは長年の取引関係もまったくあてにならないと嘆いている。
川崎市内のある在日同胞経営者は「流通業者が買い占めて、値上がりを見込んでいる。でも、オーストラリア産の牛タンは固いし、臭うので日本人の嗜好には合わない。結局は米国産を肉屋の言い値で買わざるをえない」とあきらめ顔。仕入れ価格の上昇に「うちはフアミリー向けなので、時価とは書けないし…」と頭を抱えている。
新宿と八王子で2店舗を経営している卞保さんは「米国産牛肉は半年はストップするだろう。在庫が底をつく2月にはどこも値上げせざるをえないのでは」と見通している。卞さんによれば、代替メニューの鳥肉もこの間のインフルエンザ騒ぎで人気が薄い。サムゲタン料理はここへ来て注文がぴったり止まった。
大阪市北区で焼肉店を経営する安京子さんは、「このご時勢では焼肉店も智恵を絞っていかなければなりません。うちは4,5年前から家庭料理を多く取り入れ、創作料理にも力を入れている」と話している。
協同組合焼肉協会…実態調査に乗り出す
事業協同組合・全国焼肉協会(新井泰道会長)によれば、焼肉業界が消費者に提供する牛肉の総量のうち、米国産牛肉は約3割を占めている。
危機感を募らせた同協会は昨年12月、米国産牛肉の禁輸措置に伴う業界への影響を調べるため、会員店舗を対象に緊急アンケートを始めた。同時に農林水産省には牛肉の供給量の確保、及び価格の安定に関する措置流通における「売り惜しみ」「不当値上げ」防止のための措置風評被害防止措置を要請した。
(2004.1.21 民団新聞)