掲載日 : [2004-02-04] 照会数 : 3575
「高齢者に親孝行」 喫茶店借りデイサービス(04.02.04)
[ 気のあった仲間と昼食を楽しむ同胞お年寄りたち ]
心尽くしの料理で接待
【京都】京都市内の喫茶店が休業日の月1回、同胞高齢者の集う社交場に変わる。高齢とともに外出する機会の少なくなりがちなお年寄りのためにと、市内の同胞2世篤志家が「親孝行」で始めた福祉サービスだ。この間、引きこもりでふさぎがちだったお年寄りにイキイキとした笑顔が戻ってきている。
会場となっている喫茶店は京都市左京区内、叡山電鉄の茶山駅からほど近い。店内は40人ほどが座れるゆったりとしたスペース。在日同胞2世の李弘子さん(62)=左京区在住、染色工場経営=は昨年3月から喫茶店の休業日に店舗を午前10時から午後2時まで同胞高齢者の憩いの場として確保し、昼食も提供している。
お年寄りの参加者は現在、10数人ほど。世話にあたるボランティアは同胞と日本人を含め15人いるが、電話連絡、歩行の困難なお年寄りへの車での個別送迎、会場準備、料理の仕込みなどで朝から全員大忙しだ。
食事は喫茶店経営者を気遣ってニンニクや唐辛子を使った韓国料理は避け和洋食中心。ある日はたらの白身魚を油で揚げた「フリッター」をメーンに置き、きのこサラダ、カボチャを使ったクリームシチューを組み合わせていた。デザートには手作りのケーキも並んだ。いずれも李さんが月1回の料理教室に通って学んだ。
あるハルモニは「家では作れないような手のこんだ料理ばかり。帰ってから娘に教えてあげるのも楽しみです」とうれしそう。
昼食を終えたハルモニたちは気心知れた仲間とのおしゃべりを楽しみ、病院など医療と健康に関する情報も交わす。「こうしてみんなと会えるのがいちばん楽しい」と語るハルモニからは明るい笑顔がこぼれていた。興に乗ればマイクを片手に韓国民謡を歌い出す。
李さんは顔見知りのハルモニたちが外出を極力避け、1カ月も2カ月も家に引きこもっているのを見て、何とかしなければと思ったという。親しい友人たちの協力を得られたこともあり、スタートさせた。
この1年近い取り組みでハルモニたちの表情がいきいきしてきたと喜んでいる。また、参加ボランティアたちも「1カ月に1回の活動ですが、仲間に会えるのも楽しみ。ハルモニからも明日のパワーをもらっています」と話している。
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介護活動の原点
民団京都・福祉事業推進委員会の金周萬委員長の話
「身近な喫茶店を利用するとはいいところに気づかれた。李さんのボランティア活動は、健康と生きがいという介護サービスの原点を思い起こさせてくれる。民団京都本部としてもなにかお手伝いできないか検討してみたい」
(2004.2.4 民団新聞)