掲載日 : [2004-03-03] 照会数 : 3831
中学校歴史教科書問題「攻防」第2ラウンドへ(04.3.3)
来年に「リベンジ」狙う「つくる会」
市民団体…採択阻止へ世論化急ぐ
歴史認識の在り方をめぐってアジア各国との間で大きな外交問題となった日本の中学校歴史教科書の採択をめぐる「攻防」が05年も繰り返されそうだ。01年夏に事実上、ゼロ採択に終わった「新しい歴史教科書をつくる会」が巻き返しを狙っているからだ。来春から開設予定の中高一貫校での採択結果いかんが、来年の行方を左右するものと見られている。
当面の焦点は中高一貫校
「つくる会」メンバーが中心となって執筆した中学校社会『新しい歴史教科書』は知事が政治的に介入したといわれる東京都と愛媛県の擁護学校、および一部の私立校で採択されたにすぎない。合計521冊(採択率0・039%)と目標の13万冊(同10%)には遠く及ばなかった。
05年の「リベンジ」を目指す「つくる会」は、4月から始まる教科書検定に改訂版を出す。文部科学省の検定に合格すれば、来年にその採択をめぐって01年夏の「攻防」が再現される。
その前哨戦となりそうなのが、来春から全国で開設される中高一貫校。中でも焦点となっているのが、石原慎太郎東京都知事のお声掛かりで台東区に開設される白鴎高校だ。同校で今夏、「つくる会」教科書が採択されれば、都区内・市での来年夏の採択の行方にも影響を及ぼすのは必至と見られる。
「つくる会」は今月中に都内で集会を開き、来年夏に向けて気勢を上げる。すでに国会議員の間を回って「近隣諸国の干渉から歴史教科書を守る」署名活動を展開中だ。これは韓国や中国などからの政治的影響の排除を狙ったもの。
同時に日本の右翼組織との連携を強め、体制強化を図っているとされる。
市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は「情勢は私たちにとって決していい状況ではない。ただし、01年も全国542の採択地区で『つくる会NO』の世論をつくり、内定していたものもひっくり返した。これから各地域でこの教科書はだめだとの世論をつくっていきたい」と話している。
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「つくる会」とは
歴史教科書の「従軍慰安婦」や南京虐殺など加害の記述を「反日的・自虐的」と誹謗するメンバーが97年1月に結成した。同メンバーが編集執筆した中学校社会『新しい歴史教科書』(扶桑社刊)は記述に韓国併合・植民地支配への反省はなく、近隣諸民族への差別排外思想、侵略主義を植え付ける内容となっている。文部科学省から137カ所にのぼる修正意見がついて01年に検定合格した。
(2004.3.3 民団新聞)