掲載日 : [2004-04-14] 照会数 : 4333
「在日」またも先送り 無年金障害者救済法案(04.4.14)
[ 福祉手当支給の与党案に対して、外国人を含めた年金方式による解決を打ち出した無年金議連総会 ]
学生、主婦に限定へ与党合意…高齢者への波及懸念
学生無年金訴訟弁護団…国に一括救済求める
日本の与党年金制度改革協議会は6日、「学生無年金者等」に福祉手当を支給していく方向で合意、今国会に特別措置法案を提出することになった。ただし、在日外国人と未納・未加入の障害者については「別問題」だとする意見が協議会の大勢を占めており、またもや先送りになりそうだ。在日外国人排除の壁は依然として厚い。
与党連絡協議会の救済法案づくりは3月24日、東京地裁の「学生無年金障害者訴訟」で敗訴したことが契機となった。
法案では85年の基礎年金制度の創設時から学生も強制加入となった91年までの間に障害者になった学生と主婦を対象とする方向で調整している。金額は障害基礎年金のうち国庫負担分(約6割相当)という。
国民年金法は59年11月に施行され、61年4月1日から拠出制となった。当初、学生と主婦については任意加入としたため20歳を過ぎて未加入のまま障害者となり、無年金となった人も多い。
このため与党連絡協議会の中にも「年金制度と掛け金はセットだ。ただし、学生無年金は任意加入から強制加入への制度の移行期に起こった制度の空洞の問題」との認識が定着しているようだ。
しかし、当事者たる学生無年金訴訟原告団からは「外国人は入りたくても入れなかった。それなのに国が任意加入の人だけを救おうとしているのはおかしい」(原告代表の原静子さんの話)との声が上がっている。
弁護団も東京地裁での勝訴判決を受け、在日外国人を含む無年金障害者の一括救済を国に求めている。
これに対して与党連絡協議会所属のある議員は「外国人のことをするとなると、障害者だけではない。老齢年金のことも問題になる。人数も何人か分からないし、お金もない。戦後補償にも絡んでいくので難しい」と話している。
各政党に申し入れ…同胞市民団体
「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」をはじめとする関係3団体は3月29日、学生、主婦とともに在日外国人の無年金障害者にも障害基礎年金を支給するよう自民党をはじめとする各政党に申し入れた。
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「過去に遡及せず」…沖縄、小笠原では特例措置
在日外国人が国民年金制度への加入が認められたのは、難民条約が発効し、国籍要件が撤廃された82年1月1日から。しかし、障害認定は20歳の誕生日の時点で行う。このため、国籍要件の生きていた82年1月1日以前に20歳を過ぎていれば、区役所に裁定請求しても認められなかった。
一方、同じく国民年金制度発足時に排除されていた沖縄や小笠原在住の日本人については、当該島の日本本土復帰に際して経過措置を講じ、無年金にならないよう過去にさかのぼって救済した。これに対して在日外国人については、日本政府が難民条約批准に際してあらかじめ「過去に遡及しない」と決めている。これも与党が在日外国人を含めるのに反対する理由となった。
「在日外国人障害者の年金訴訟を支える会」の愼英弘共同代表は「障害福祉年金は全額税金でまかなわれている。外国人も税金を納めているのに支給しないのは適切ではない」と批判している。
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超党派議連・年金方式で解決を 「外国人含め」総会で決議
超党派の「無年金障害者問題を考える議員連盟」(八代英太会長、148人)は3月31日、参議院議員会館で総会を開き、年金方式で無年金障害者を救済していくとの方針を正式に決めた。
対象は在日外国人と学生、主婦を優先し、未加入者と滞納者については今後の検討課題とした。
同議連は3月29日、東京地裁での「学生無年金障害者」訴訟で違憲判決が出たのを受け、任意加入時代に未加入で障害を負った学生及び主婦、在日外国人について障害年金を支給するよう求める緊急決議を採択している。
民主党も要望へ
民主党は2日、在日外国人と学生、主婦の無年金障害者らに年金制度の枠内で障害基礎年金に見合う額を給付するよう政府・与党に働きかけていくことを明らかにした。
(2004.4.14 民団新聞)