掲載日 : [2004-05-19] 照会数 : 4208
「泣き寝入りしない」 入居差別受け提訴へ(04.5.19)
人権救済申し立ても…尼崎の在日3世
家主 韓国籍に不快感露わ
【兵庫】尼崎市内で韓国籍を理由に民間賃貸住宅の入居を拒否された在日同胞3世の男性が、家主と仲介業者を相手取り6月にも尼崎地裁に提訴することを決めた。在日外国人に対する入居差別は各地で続発しており、89年には在日韓国人を理由に賃貸マンションへの入居を拒否された建一さんが大阪地裁に提訴し、勝訴している。この男性は「泣き寝入りだけはしたくない」と話している。
提訴の決意を固めたのは李俊煕さん(27)。結婚を間近に控えていた李さんは03年10月、尼崎市内の不動産店で希望の物件を見つけ、申込書に必要事項を記入し終えた。
ところが、たまたま来店した家主の息子が申込書の本籍欄に「韓国」とあるのをめざとくみつけ「うわー、韓国の人か」不快感を露わにしたという。最終的には、母親が「ダメ」ということで李さんは入居を断られた。家主によれば「前に韓国の人に貸したときに、塀とか柱を青やピンクに塗られて大変やった」のだという。
その後、県内の宅建業者の指導を行う県の民間住宅室不動産業指導係による電話調査の結果、この業者は県の指導にもかかわらず本籍や国籍欄のない「入居申込カード」を使用していなかったことがわかった。
同カードは入居差別是正の一環として、民団兵庫県本部がかねてから県に申し入れていたもの。県は独自にカードを作って99年2月、県宅建業界など県内2団体(計約6300業者加盟)と団体に加盟していない117業者に配布していた。
これについて社団法人兵庫県宅地建物取引業協会では「協会は入居申込カードを推薦しているものの、会員社に強制までできない。今回の事件はあってはならないこと。協会としても恥ずかしいし、残念なことだ」と話している。
李さんは「これまでにも仮契約をすまし、入居手付け金を支払っているのにもかかわらず断られる経験はしてきたが、ここまではっきりと『韓国人だから』といわれたのは初めて。このまま放っておけば、仲間が同じめにあう」と今年1月、神戸地方法務局尼崎支局に「人権救済申立て」を行った。
しかし、法務局の説得にもかかわらず、不動産業者と家主はいまだに話し合いを拒否するという事態が続いており、事実認定すらできていない。
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是正策浸透せず
【解説】民団兵庫県本部権益擁護委員会が98年に阪神間在住の在日韓国人を対象に実施したアンケート調査によれば、有効回答322人のうち4割が「過去なんらかの形で入居差別を受けた」と回答していた。
この結果を踏まえて兵庫県建築指導課は「入居申込カード」を統一化、業界団体も入居差別解消のための啓発活動に力を入れてきた。
にもかかわらず、現場には十分浸透しなかった。なぜなら「入居申込カード」の採用は業者の判断だからだ。一部の業者は外国人の入居を嫌う家主の意をくみ、仲介にあたっては物件を選別してきたとされる。
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有志が「支える会」発足へ
6月の提訴を前に在日同胞ら有志が中心となって近く「尼崎入居差別裁判を支える会」(仮称)を発足させる。24日には午後7時から尼崎市立すこやかプラザ会議室Aで第1回相談会を開き、今後の支援体制を確認する。事務局では多くの参加を呼びかけている。
連絡先は「支える会」(仮称)事務局。TEL・FAXとも06(6413)5618。
(2004.5.19 民団新聞)