掲載日 : [2004-06-23] 照会数 : 4119
苦戦する焼肉業界(04.6.23)
米国産輸入再開の遅れが響く…新規メニューの開発で奮闘も
日本国内産に比べて安価なUSA(米国)産牛肉の輸入が止まり一部業者の買い占めによる品不足と便乗値上げも重なり、焼肉店の売り上げが軒並み2、3割ダウンしている模様だ。日本政府は一部で輸入再開の方針を固めてはいるが、内臓肉についてはまだメドは立っていない。夏の繁忙期を前に焼肉店経営者の苦悩は深まるばかりだ。
焼肉業界はカルビ、タン、ハラミや、ホルモンなど内臓肉の多くをUSA産冷凍肉に頼ってきた。
これは仕入れ価格が安いうえに調理もしやすく、一定の利潤が見込めるためだ。ところが米国でBSEに感染した牛が見つかったことで商品価格が高騰、品不足も深刻さを増している。
生野区鶴橋で焼肉業を手伝う呉龍五さんは「外国産が入らなくなってから、和牛も高くなった。その高さは半端じゃない」という。
一説によればカルビと並んで人気の高いタンはUSAもので仕入れ単価がキロあたり1500円から4800円へと3倍に。しかし、いまは手に入れたくても市場にほとんど出回っていないようだ。品不足のため、店によっては「限定」販売の扱いも。同じくホルモンは一部でキロあたりで500円が2800円へと5倍以上に跳ね上がったともいわれる。
しかし、規模が零細な在日同胞経営者は、仕入れ価格の上昇を価格に転嫁しようにも、「客離れを招くのでは」と不安をかくせないでいる。呉さんは「対応策はなにもない。ただ耐えるしかない」と話す。都内で老舗店を経営する李康則さんも「高いものを無理して値上げしたり、だからといって赤字になってまで売りたくはない」と代替メニューの開発に取り組んでいる。
川崎市近郊の通称コリアンタウンに店を構える田平萬さんは最近、従業員の給料を削減、残業代もカットした。山梨県内でチェーン店を展開する朴喜雄さん(民団山梨県団長)も最高1000万円だった店長2人の給与を2割がた下げた。
東京の文京区で店を構えていた文春子さんは01年のBSE騒動で店を閉めた。最近リニューアルオープンした店は韓国家庭料理が看板。肉も出すが、主役はあくまで野菜を使ったおいしい料理。文さんは「これから焼肉だけでは難しいのでは」と話している。
専門誌『焼肉文化』の発行人、朴健市さんは「8月に日米で合意しても輸入解禁は早くて10月。へたすれば年末になるだろう。それまでどう生きのびるのかが勝負。早急にあっと驚くような肉の新しい部位を開発し、メニューも工夫をしないと死活問題になりかねない」と注意を喚起している。
(2004.6.23 民団新聞)