掲載日 : [2007-06-27] 照会数 : 5793
<民論団論>韓国の不動産登記特別措置法
在日地主には諸刃の剣
崔喜燮(民団神奈川職員)
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在日同胞社会の世代交代は完了しつつあり、以前よりも本国との紐帯は薄れつつある。しかし、韓国の故郷に不動産を所有する在日2〜3世は決して少なくない。
ハラボジ・アボジ達が異国の地での差別と貧困を乗り越え、やっとの思いで蓄えた資産で故郷に錦を飾った名残だろう。そこには先人達の故郷への熱い思いがあった。
政府関係者は、「不動産実名法を適用することなく整理することのできる最後の機会であり、国民達から好評を博している」と、昨年の1月1日に韓国で施行された不動産登記に関する「特別措置法」を評価しているが、母国の言葉を解することができず、国情にも疎くなりがちな「2〜3世地主」にとって、この時限立法は諸刃の刃となりうる。
せっかくの先人達の「祖国への思い」を未来永劫大切にできればと思う。
簡易登記が可能
特別措置法の目的は、登記すべき不動産の保存登記がされていなかったり、相続、事実上の譲渡などにより登記簿の記載事項が実際の権利関係と相違するとき、事実関係の確認を経て簡易に登記することができるというものである。
その対象となる不動産には、①95年6月30日以前に事実上、譲渡、相続、未登記の不動産でなければならない②邑・面地域ではすべての土地と建築物③市地域では農地・林野及び公示地価20万ウォン以下の土地が該当する。
この特別法に従い、登記を申請しようとするならば、市・区・邑・面長が委嘱した保証人3人以上の保証書を添付、市・郡に提出すればいい。市・郡は現地調査などを経た後、関連内容を2カ月以上公告し、異義申請が無ければ登記することができる確認書を申請人に発給する。
在日同胞の場合、ハラボジやアボジの死後、数10年来未登記状態で放置されている土地などがまだまだある。こうした不動産の登記が、相続人同士の簡単な合意だけで可能になるなど、使い方次第では大変便利な制度である。
実際に、民団神奈川の「民団ポットッパン(不動産)」では、父が残した韓国の故郷の田畑の相続登記を10数年放置してきたが、この特別措置法の施行を契機に、書面を通じた煩雑な法的津手続きを経ることなく、簡便に相続登記の代行をし、団員家族に大変感謝されたことがある。
悪意の管理人も
しかしこの制度は、国情に疎い「不在者地主」である在日同胞には、諸刃の剣ともなりうるのである。というのも、「悪意の管理人」が法律に則り保証人3人をたてさえすれば、該当する不動産を自分の名義で登記することができるからである。
故郷には滅多に行かない、しかも親戚とのコミュニケーションも不自由といった場合、悪意の管理人にとっては、「都合のいいカモ」に見えることだろう。実際に海外同胞の土地がこうして知らないうちに、他人の手に渡り係争に発展しているケースもあるという。悪意の管理者に対する「事実上の権利者」の異議申請受付期間が、わずか2カ月というのも我々在日同胞にとっては大変不利である。
本来の法の目的を悪用し、在日同胞の土地が本人の知らないうちに、他者の手に落ちぬよう、一度地元の役所に確認をしたほうがいい。同法は今年12月31日までの時限立法である。せっかくの故国の不動産を守り続けたいものである。
無窮花サービスでは、「地方や所属を越えて必要な団員の皆さまのお手伝いが可能」だ。2〜3世の「地主」への無料相談を実施している。
問い合わせは無窮花サービス事務局℡045‐316‐0508(民団神奈川内)まで。
(2007.6.27 民団新聞)