掲載日 : [2007-07-04] 照会数 : 5920
<民論団論>「総連支持・声援が民族統一運動の重要課題」とは
6・15民族共同委員会
南側代表の「在日」認識問う
金尚司(京都府・編集者)
まず「民族私物化」拒否せよ
3点セット 在日和合の最大障害に
「6・15民族共同委員会」の北、南、海外側委員会の代表による「6・15共同宣言発表7周年記念民族統一大祝典」が6月14〜17日まで平壌で開かれた。総連の機関誌「朝鮮新報」(6月27日付け「総連支持は『民族統一運動の重要課題』」)によると、同祝典は「総連に対する支持と声援を民族統一運動の重要課題のひとつとして強調した」という。
北側代表と、その忠実な代理人・総連およびその別働隊である韓統連(在日韓国民主統一連合)が主力をなす海外側委員会の代表が、そのように主張するのは当たり前であり、なんら不思議でない。
ちなみに郭東儀・海外側委員会共同委員長(日本地域委員会議長。韓統連常任顧問)は「北側の代表」である(金祥根・民主平和統一諮問会議首席副議長、6月13日付け「民団新聞」)。その発言は北側を代弁するものであって、在日を代表するものではない。
〞低水準〟の証明
しかし、南側代表までも、そのような主張に積極的に支持賛同したとの「朝鮮新報」報道が事実ならば、南側代表の「在日」および「在日社会」に対する認識レベルの低さを問題視せざるを得ない。
総連は北韓を「南北すべての人民の総意によって建設された唯一正当な主権国家、唯一の祖国」と定め、「同胞を『共和国』(北韓)のまわりに総集結させる」ことを使命としている。当然のこととして北韓の体制と「統一」政策を無条件支持し、その実現のために闘うことを明らかにしてきた。
総連第21回全体大会(5月25、26日)でも「偉大な金正日将軍様に対する無限の忠実さをもった同胞の忠僕」として「敬愛する将軍様に対する忠誠心と勝利に対する信心をもち、愛族愛国運動を繰り広げていく」(徐萬述議長報告)ことを誓い、大会名義で「金正日将軍様」に忠誠の手紙を送っている。
しかも北韓および総連は、かねてから「わが民族=金日成民族」「民族の領袖=金正日将軍(国防委員長)」「金日成・金正日父子誕生日=民族最大の慶事」の3点セットを唱えている。
「6・15南北共同宣言」(2000年)発表後も、取り下げるどころか、繰り返し強調しているのだ。総連は北韓の核実験・核保有についても積極的に支持・称賛している。
3点セットを前提とした北韓および総連の唱えている「南北・民族統一」とは、軍事最優先の金正日体制の存続による「統一」、つまり「南北の金日成・金正日王朝化」にほかならない。
そのような総連を支持・声援することが、なぜ「民族統一運動の重要課題」となるのか。まったく理解できない。
それこそ「民族私物化」の支持、「全体主義」の擁護、「金正日絶対化・南北分断恒久化」是認につながるからだ。
在日は、今や彼らが乱発する「民族」とか「統一」という言葉が「金日成・金正日父子」に奉仕する甘言にすぎないことを知っている。
だから、在日は総連の3点セット主張に嫌悪感を覚え、核開発と核実験強行には危機感すら抱いている。
3点セットの支持・賛揚と「金正日への絶対的忠誠」に象徴される総連の「民族・統一」論は、在日の和合推進に大きな障害になっているのだ。 南側代表は、このことを直視すべきだ。
総連中央による「3点セット放棄」と「北韓全体主義体制への無条件支持取り下げ」こそが、在日和合推進にとっての重要課題となっている。
在日が切望する「南北統一」とは、「平和的・民主的・自主的統一」=「南北社会の等質化(平和・民主・人権の価値観共有)」である。
われわれ在日が、そして南北同胞が熱望してやまない統一は、決して総連が支持し目標としている「金正日体制=全体主義体制の南地域への拡延統一」などではない。
説明責任あり
南側代表に是非聞きたい。
「6・15民族共同委員会」は「6・15共同宣言」を実践するための民間統一運動団体だという。「わが民族同士」を最大のキーワードとしている。だが、南側委員会は、肝心の「わが民族」に関する北側の3点セット主張(真の民族団結および統一推進の障害となる)については、まったく沈黙している。承知していながら頬被りを決め込んでいるとすれば、無責任との批判を免れないだろう。
最終ゴールである「統一の完成」についても、最も重要なその中身については、どのような統一国家をめざすのか、一度も明らかにしていない。それもまた、なぜなのか。
この機会に、在日はもとより、全同胞に対して、責任をもって説明するよう望んでやまない。
(2007.7.4 民団新聞)