掲載日 : [2007-07-19] 照会数 : 7030
同胞主婦の願い 人権啓発映画に
[ 李京愛さん
]
子どもが本名であたりまえに生きられる社会を
ストーリー 大阪府教委が公募採用
【大阪】大阪府教育委員会が企画・製作する07人権教育啓発映画ストーリーの原案として、本名を名のってあたりまえに生きられる社会の実現を訴えた在日韓国人2世、李京愛さん(57)=大阪市生野区巽北在住、アプロ社代表=の作品が選ばれた。府教委による市民参加型ストーリーの公募は00年度から始まったが、在日韓国・朝鮮人をテーマとした作品の選考はこれが初めて。
今秋から撮影開始、来春 テレビで放映
ストーリーは400字詰め原稿用紙8枚。市民団体「民族教育を進める連絡会」から勧められて応募したという。
生野区で生まれ育った民族学級出身の在日韓国人3世の「パクヨンミ」が主人公。
本名で生きようとするが、周囲から理解されず、なかなか受け入れてもらえない。高校卒業後、看護学校を経て看護師として独立するまでに体験した様々なあつれきをエピソードとして織り交ぜながら、それでも韓国語を学び、本名を名のれないでいる患者たちのためにも前向きに生きようとする姿を描いた。
李さんは3世になる子ども2人の子育てをしながら、大阪市立北巽小学校民族保護者会と同胞保護者連絡会の会長を歴任した。ずっと考えていたテーマなだけに、「文章にするのは難しかったが、1日で書き上げた」という。
07年度公募には同和問題、子ども、男女平等、障害者、在日外国人に係わる人権問題などのテーマで計10作品が寄せられた。府教委が設置した人権教育啓発映画製作委員会が審査選考し、6月28日づけで審査結果を発表した。李さんには副賞として20万円が贈られる。
李さんの作品について製作委員会は、「母国語を知らない3世、4世が多い昨今、〃自分探し〃をしながらポジティブに生きている主人公を通じて〃(本名を)名のる〃ことの意味を歴史的背景等を盛り込みながらあらためて考えてもらえる」「看護師という仕事の持つ社会的な意味あいからも、ストーリーをふくらませることができ、メッセージ性の高い作品になることが期待できる」と話している。
受賞の知らせを聞いた金相文さん(大阪市立東桃谷小学校教師)は「李さんは非常に感性が豊かで、素直な方。とってもうれしい」と喜びを語った。また、同胞保護者連絡会の現会長、高用哲さんは、「女性の視点からありのままを書かれた文章には訴えるものがありました」と話していた。
李さんの作品は同製作委員会が映画制作会社に委託し、54分のドラマに仕上げる。撮影は今秋から始まり、08年3月末にはテレビ放映される。さらにビデオ教材化して府立中央図書館などに配置し、団体向けに貸し出される。プロダクションへの委託費用は約1600万円。
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実話もとに原案 李京愛さんの話
李さんは今回の作品の狙いについて、次のように語っている。
教育機関や様々な機関で多民族・多文化共生教育が取り組まれている。また、本当に住みやすい国はマイノリティーが住みやすい国だとよくいわれる。私は在日韓国人だが、私たち民族的マイノリティーが本名を名のって生活することが、個人や各家庭の努力に負わされることが多いのではないかと思うのが、生活していての実感だ。この作品は私と子どもたちとの会話や日々の生活の中から、いくつかのエピソードを子どもの一人称で書いた。
在日2世の私と3世の子どもたちとは、潜在的な意識が変わらない部分と、明らかに変わってきている部分があるように思う。本名で生活する子どもたちが、背中に重いものを背負っていると思わずにすむ社会を願うばかりだ。
ただ、一人ができることには限りがあるが、一人でもやり続けるという気概は持ち続けたいし、子どもたちにもそう願っている。また、一人から広がるものも必ずあると信じている。
これからの社会を作り上げていく若者たち、とくに在日の若者たちには自分の出自をマイナスイメージでとらえるのではなく、日本の若者たちにはちがいをちがいとして認めて、共に生きていってほしいという思いを込めて書いた。
(2007.7.18 民団新聞)