掲載日 : [2007-08-29] 照会数 : 5849
<民論団論>目をそらすな「慰安婦」問題
米下院決議案採択の意味と課題
国際世論の日本政府指弾続く
日本といちばん近い友邦国であるアメリカの下院本会議で7月30日、旧日本軍「慰安婦」に対する謝罪を促す決議案が満場一致で採択された。旧日本軍「慰安婦」問題を解決しようとする運動を展望するとき、新しい歴史が生まれたといってもいい。
旧日本軍「慰安婦」謝罪要求決議案は、日本政府に対し、第2次世界大戦中に犯した強姦と強制流産、殺人、人身売買など、「慰安婦」に加えた許されざる蛮行に対し、公開的、かつ明確な謝罪をしなければならないと明示した。また、日本の未来世代への教育を日本政府の明確な責任として要求しており、先祖が犯した人身売買を再び繰り返さないよう、人間と女性の人権を強調すべきだとの内容も含まれている。これは今後、日本の政界に大きな重圧として作用するだろう。
決議案採択は結果そのものに意味があるのはもちろん、採択を目指してきた過程でも私たちに大きな意味をあたえてくれた。
まずは2月15日、アメリカ下院で、議会史上初めて旧日本軍「慰安婦」問題に関連した聴聞会が開かれたこと。ここでは「慰安婦」生存者たちであるオーストラリア国籍のオランダ人被害者、ヤン・オヘルンさんと韓国のイ・ヨンスさんなどが証人として証言した。これを受けて6月26日の下院外交委員会では39対2という圧倒的な票差で旧日本軍「慰安婦」関連決議案が採択された。
この結果、旧日本軍による「慰安婦」問題は、アメリカをはじめ人類社会が目を背けてはならない非人道的な犯罪、女性人権問題であり、国際社会の共同課題であることを認識させた。
また、旧日本軍「慰安婦」決議案が採択される過程で在米韓人社会が声を一つにして、ひとつの組織を作り上げたということに注目したい。これは今後、他の国でもこれと似た活動を推進するときに模範的な事例になるだろう。
韓人たちは、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなど各地域で「慰安婦謝罪決議案採択のための汎対策委員会」を結成した。各地域で地域区議員たちを対象に投票権を持つ韓国系アメリカ市民たちが展開したロビー活動は、決議案採択を遂行するための新しい有権者運動となった。これとは対照的に、日本は政府と政界、言論など各分野を総動員して莫大なお金を投じ、決議案採択を阻止するロビー活動を繰り広げた。
今回の決議案通過は司法的な裁判ではない。しかし、少なくとも採択過程で国際世論による裁判が行われ、これを通して日本政府の犯罪事実を浮き彫りにし、その責任を追及した。もちろん、日本政府が決議案を受け入れるか、否かは分からない。ただ、重要なのは旧日本軍「慰安婦」問題を正しく解決しない限り、日本政府は世界のどの国からも犯罪国と指弾されるのを避けることはできないということだ。
一方、旧日本軍「慰安婦」被害者たちは、もうひとつの希望を経験するようになり、正義回復の可能性を見い出せるようになった。アメリカ下院を皮切りに、他の国の政界に向けて問題解決を試みる新しい道を開いてくれた。今も世界各地で人権蹂躙を受けている数多い女性たち、弱者たちにも「慰安婦」問題を通じて希望的先例をもたらすことができた。
これからは国連や国際機構による謝罪・賠償勧告とアメリカ下院決議を日本政府が受け入れるよう、世界中の人たちと一緒に連帯していく課題と責任が私たちに残されている。次はオーストラリアとカナダで同様の決議案採択活動を推し進め、さらにはヨーロッパ、アジアへと広げて行くことだ。
日本政府が「慰安婦」被害者たちの正義を回復させるために、さらには再びこの地に、旧日本軍「慰安婦」と同じ痛みが生まれないよう、世界市民社会と希望の連帯を一緒にするときだ。
ユン・ミヒャン(韓国挺身隊問題対策協議会常任代表)
(2007.8.29 民団新聞)