掲載日 : [2007-12-05] 照会数 : 6984
「学習の場」充実の3年目 在日韓人歴史資料館
[ 修学旅行の生徒たちの訪れが目立つ在日韓人歴史資料館 ]
「苦闘の証」寄贈続く
相互理解へ確かな手応え
在日韓人歴史資料館(姜徳相館長)が東京都港区南麻布の韓国中央会館に開設されたのが05年11月24日。3年目に入った同館は、来館者も日を追って増え、資料の収集・寄贈も順調だ。面目を一新した6月のリニューアルに続いて第二の全面リニューアルを推進し、企画展示の充実を期す。「在日100年」の歴史をビジュアルに体系化し、韓日関係史を再照明する同館は、貴重な学習の場として広がりを見せている。
開設時より倍増の資料
民団中央本部や中央傘下団体、駐日大使館の領事部門が入る韓国中央会館の別館に資料館がある。その存在を示す案内掲示類は控えめで、スペースも在日同胞の歴史や苦闘の重さに比べれば手狭だ。だが、同館の重みは時を追って増してきた。それはまず、資料の提供が相次いだことが証明する。姜館長は開設当時を振り返って語った。
「あれもない、これもない、の見切りオープンで、これでいいのかという忸怩たる思いがあった。しかし一方で、オープンがすべての始まり、とも考えた。来館者が必ず、こういうことなら我が家の押入れや物置にも転がっている、と感じてくれるはずだと。その通りになった。電話や書信が来て、次に《もの》が寄せられた。その点数はオープン時に準備したものに匹敵する」
寄贈した同胞たちの人生の証として、それぞれに貴重な展示資料は、11月末現在で628点を数え、開設当時の2倍を超えた。書籍は6000冊を上回る。来館者は在日同胞、日本人、そして韓国からもじわじわ増え、オープン以来6500人を超えた。日本の複数の専門家によっても、特異な小規模の資料館としては大成功の域にあると評価されている。
資料館のアンケートによれば、民団新聞や民団・資料館のホームページを見ての来館が35%、中央会館に来たついでが約10%、日本のメディアによって知ったが約10%だ。興味深いのは、知り合いの紹介によってが30%余り、高校・大学などのサークルで教えられてが10%と、いわば口コミによるものが4割を超えていることだろう。「来館のきっかけづくりとしては最も効果的」とスタッフも喜んでいる。
来館者順調修学旅行も
増えてきた団体のなかでまず目立つのは、修学旅行研修の一環として訪れる中学生だ。次いで大学のゼミ、高校生サークル、職場団体など。各地の民団本部からもコンスタントに訪れる。韓日交流事業で訪日した韓国の学生や市民グループも珍しくない。姜館長は「麻布の新名所になる日も遠くない」と手応えを感じている。
来館者の半数以上が日本人で、その比率は時を追って増えた。韓流現象に乗って軽い気持ちで来館するケースも少なくないが、そういう人たちにも在日を知らせる貴重な場になっている。だが、大半は在日の歴史を知りたいという向学的な動機に基づいており、口伝で知った場合でもホームページなどで詳しく調べて来館するという。
資料館スタッフは「ほとんどの日本人が関東大震災時の朝鮮人虐殺など差別・虐待の歴史に大きなショックを受け、『ひどいことをしてきたんですね』と暗い気持ちになりがちだった」と述べ、こう続けた。
「贖罪意識を強く意識させるだけでは前に進まない。大震災の狂気の中で朝鮮人を救った日本人の資料もあわせて展示したところ、『救われた思い』とともに、『共生社会実現の大切さを実感した』と語ってくれる人が増えた」
かなりの数の来館者たちが感想を書き残していく。そのほとんどが末尾で、韓日相互理解と共生社会実現の必要性を強調し、若い人たちにぜひ見せたい、資料館の存在を知り合いに知らせ、一度は足を運ぶようにアピールする、と結んでいる。 資料館が毎月1回開催する土曜セミナーは18回を数える。資料整理や展示作業を手伝うボランティアも集まってきた。来年2月には所蔵品の図録も発行する予定だ。
(2007.12.5 民団新聞)