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「国民は一つ」掲げ
自治体・民間も力合わせ
光復70周年を迎える韓国では、政府・地方自治体・民間のありとあらゆる機関・団体が記念事業を準備しているといって過言ではない。いくつかのキャンペーンはすでに佳境に入った。
その中軸は、70周年を国民がひとつになって楽しもうという新概念フェスティバル『私は大韓民国』だ。5月15日の公式サイトオープンに始まり、8月15日のソウルW杯スタジアムにおける7万人の国民大合唱まで、3カ月間にわたる大がかりなプロジェクトである。
その主題歌『私たちが会う日』の合唱収録には、各世代の実力・人気ともに韓国を代表する歌手たちが結集した。88ソウル五輪大会のテーマソング『ハンド・イン・ハンド』と同じく国民の心をとらえることになりそうだ。
光復70周年事業の全体を貫くメーンスローガンは「偉大な道のり、新たな跳躍」。政府が1300あまりの応募のなかから選んだ。
過酷な植民地支配がもたらした深刻な後遺症や、国土を廃墟にした6・25韓国戦争など分断にともなう筆舌に尽くせない困苦にもめげず、世界の経済強国にまで躍進した韓国。この人類史にさえ誇り得る「偉大な道のり」を再照明し、国民大統合をはかりながら、民主的平和統一を視野に「新たな跳躍」を期そうとする決意が込められている。
「光復の完遂」を誓う場にすべく
朴槿恵大統領は今年の新年辞で、断絶と葛藤の70年に終止符を打ち、統一時代を開こうと呼びかけた。光復70年はそのまま、分断70年の歴史でもある。光復行事を各世代が激励・感謝し合う場とするとともに、統一推進を前面に「真の光復」「光復の完遂」を誓うものにすべく、政府はこれまでにない力の入れようだ。
今年1月、「光復70年記念事業推進委員会(以下、推進委)」の設置と運営に関する規定が大統領令によって制定された。この推進委は、記念事業を選定し、総合計画を樹立するなど、全般事項を審議・議決する総括機構として3月に出帆した。政府側から国務総理、民間から大統領の直属機関である統一準備委員会の副委員長が共同委員長に就いている。
推進委は3つの分科委員会で構成された。民族矜持分科委は、独立運動と産業化、韓国を輝かせた代表的な出来事に焦点をあて、民族の誇りを培うことのできる事業を発掘・支援する。国運隆盛分科委は、全国民を一つに結集させ、「なせばなる」の自信感を呼び起こす社会雰囲気を醸成し、未来希望分科委は若い世代とともに統一、先端技術、教育、韓流など国の未来にかかわる座標を設定する。
これに、国民大統合委員会委員長、韓国学中央研究院院長ら各界各層を代表する元老11人による顧問団が参与する。また、行政各部署を横断して構成された企画団が協力している。
推進委が実施する事業は50件におよぶ。一般国民と政府各部署、地方自治体から提案された560余件から絞り込んだ。推進委では「記念行事の主役は国民」をコンセプトに、企画立案と広報に努めてきたという。
重点は▽民族正気高揚と歴史意識確立▽成就の歴史照明、国民の矜持鼓吹▽慶祝行事の国民和合、祝祭の場への昇華▽世界の中の韓国、国運隆盛の機運発揚▽平和と統一への希望拡散▽青少年の参与拡大、未来ビジョン構想▽先進社会、統一国家ビジョンと戦略提示の7分野だ。
釜山は「45年解放帰国船」を再現
各自治体も記念行事を準備している。そのなかで、在日同胞ともっとも密接な関連をもつのが釜山広域市の「1945年解放帰国船再現歓迎行事」だ。開放・包容・和合の国際都市としてのイメージづくりにつなげる狙いもある。
8月14日、釜山南港(チャガルチ市場)と光復路一円で大々的に行う予定だ。この日、帰国船に搭乗する客と行事参与者815人を全国から募集している。45年の帰国者とその遺家族、光復と何らかの縁のある人なら地域に関係なく優先的に受け入れ、その後、釜山の一般市民も申請できるようにする。
再現行事は△歓迎行事△街頭パレード△記念パフォーマンスで構成される。歓迎行事は、815人の同胞が帰国船に乗り、釜山港に上陸すると礼砲や華やかな海上パレード、5色の飛行線を描く飛行隊が出迎える計画という。
在日経験者にとって釜山は、故国を離れる哀切をとどめた地であり、帰郷の喜びを分かち合った地でもある。市民と一つになるハンマダン行事を通じて、その日の思いを追体験しようというものだ。海上パレードには海軍艦艇(1300㌧級)、消防ヘリ、市所有の船舶や民間の小型船舶も参加する。
一方、浮島丸爆沈韓国犠牲者追慕協会では、光復の喜び、帰郷のはやる気持ちを抱いたまま、日本近海に沈んで帰らぬ人となった同胞たちの冥福を祈る追悼行事も予定している。
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有功者顕彰厚く
独立名誉の殿堂建立へ
50件のうち主要事業に選定されたのは19件。このなかには、中国東北3省に点在する独立運動史跡地への青少年探訪団の派遣、大学生による独島や白 島など海洋領土巡訪、臨時政府があった重慶から上海までの1900㌔を走破する韓中青年70人の自転車大長征がある。臨時政府庁舎は修理・保守作業を進めており、上海庁舎が9月、重慶が11月をめどに開館する予定だ。
ソウル市西大門歴史公園内にある独立館に、有功者2835人の位牌が安置されているが施設が狭く、追加奉安するスペースがない。2万余人の位牌を一堂に安置する独立名誉の殿堂も新たに建立される。また、有功者の足跡を整理した独立運動家人名辞典も、今年からの5カ年計画で編纂する。
公営放送KBSと共同で、近現代生活史と独立後の発展を振り返る各種展示と放送プログラムが8月を前後して集中的に実施される。ソウルの韓国開発研究院(KDI)の跡地に大韓民国経済発展館を設置し、青少年教育に活用する。
世界平和会議で「ソウル宣言」も
国際学術行事も相次ぐ。7月の世界韓国学拡大会議では、韓国語教育や人文・社会、政治・経済など韓国学の主要分野で成し遂げられた成果と今後の課題を点検する。11月には、ノーベル平和賞を受賞した個人・団体を招請し、世界平和会議を開催する。「韓半島統一時代元年」を主題に、統一国家の未来を展望し平和宣言を採択する予定だ。
記念行事のハイライトは何と言っても、本行事の中央慶祝式。前夜祭では光化門一帯の高層ビルをキャンパスにメディアアートが繰り広げられ、光化門を華麗に彩る。中央慶祝式には国民和合の象徴として、内外の各界各層を代表する市民が招請される。
行事の総監督には、尹浩鎮・弘益大公演芸術大学院院長が就いた。尹院長は「明成皇后」や「英雄」などで知られる韓国を代表するミュージカル監督だ。朴槿恵大統領の就任式、ソチ五輪文化芸術公演の総監督も務めた。
尹院長は「70年行事は未来への挑戦、新たな出発を誓う場になるべき」とし、「特に、未来の主役である若い世代が既成世代とともに参与することのできる行事につくりあげたい」と意気込みを見せる。
推進委は、韓国が世界7番目の「30‐50クラブ」(1人当たり国民所得3万㌦、人口5000万人以上)入りを目前にするまでになったにもかかわらず、分断体制下の圧縮成長の過程で理念・地域・世代間の葛藤を再生産してきた事実を重く受けとめている。
推進委がスタートした時点での世論調査でも、光復70周年の課題を「国民統合」「分断解消」とする声がもっとも多かった。推進委が70周年記念事業のスローガンを「偉大な道のり、新たな跳躍」に選定する一方、事業コンセプトとして「完全な光復、一つの国」を掲げているのもそのためだ。
政府が主導する事業以外にも、自治体、メディア、市民団体などが企画し、参与する行事は実に多彩である。国をあげて民族の底力を再結集し、もう一段の跳躍を果たす契機を準備するものとなるよう期待されている。
「私たちが会う日」7万人大合唱
『私は大韓民国』‐これは光復70周年を国民が一つになって楽しもうという新概念のフェスティバルだ。5月15日にオープンした公式サイトはもちろん、ユーチューブ公式チャンネルや公式フェースブックページ、毎晩10時55分に放送されるKBSテレビの『わたしたちが』や、8月15日のソウルW杯スタジアムでの7万人大合唱まで、SNS、インターネット、テレビ、オフラインを網羅して、国民と直接心を通わせ楽しむ3カ月間の大がかりなプロジェクトである。
『私は大韓民国』の主題歌は、『私たちが会う日』だ。各世代を代表する最高の歌手が総出演して収録を済ませた。45年生まれの趙英男と現在のアイドルであるEXOの世代を超えた交流は、韓国の過去と現在を照らすイベントとして大きな意味を持つ。この歌手たちとともにイベントと合唱を楽しむ7万人を募集している。国民が一つになる超大型のフェスティバルになるのは間違いないだろう。
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「南北共同」を追求
「京元線」復元にも着手
推進委がもっとも神経を注いでいるのが南北共同記念事業と言えるだろう。「70年前、感激の瞬間をともに迎えたように、南北が一つになり、光復の意味をよみがえらせる作業は、統一国家という民族の課題を完遂する出発点になる」との観点からだ。
その目玉として、南北国家代表によるサッカー親善競技を追求している。日帝時代、ソウルとピョンヤンで交互に開かれた「京平蹴球」の再現だ。光復後の46年を最後に中断されたが05年8月、南北統一サッカーという名称で開催されたことがある。
昨年末、統一部が北韓に提議し、大韓蹴球協会が実務接触を行ってきた。南北テコンド示範行事、南北青少年による韓半島大長征も推進している。だが、北韓は依然として呼応しておらず、実現を見通せる状況ではない。
統一時代に対応する象徴的なインフラ構築も計画されている。ソウルと元山を結ぶ京元線の南側区間を復元し、南北の鉄道を連結しようとする意思を鮮明にする。第1段階は白馬高地と月井里をつなぐ8・5㌔の復元だ。南北間の合意が必要な月井里から軍事分界線までの2㌔は、南北関係の状況を見なければならない。
国土交通部は現在、京元線復元にともなう事前用役調査を行っており、工事着手は8月以降になる。京元線の復元は南北に切断された鉄路をつなぐだけでなく、ユーラシア大陸の鉄道と連結することで、韓国が地続きでヨーロッパと結ばれる夢をふくらませ、韓半島統一がもたらす希望と恩恵を国民にとって身近なものにするだろう。
太極旗サラン運動
行政自治部は「光復70年、太極旗サラン70日運動」を展開中だ。その一環として、横2.2㌢縦1.1㌢の太極旗バッジを8月末まで、大統領や閣僚、次官級以上の公務員、地方自治体の機関長までが胸につけることになった。「バッジをつけることで、国民大統合と自由・平和統一への精神的な支柱づくりに貢献できれば」と期待している。
国防部も8月から、全将兵の軍服右腕上部に太極バッジを装着する方針だ。また、「太極旗、大切な記憶・永遠の誓い」企画写真展のための公募を1日から行っている。国民安全処は、消防隊員の防火服などにまで太極旗をつけるよう訓令を改正し、警察は「警察服制総合改善事業」の一環としてバッジ装着を推進している。
(2015.7.15 民団新聞)
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