掲載日 : [2010-04-14] 照会数 : 4423
「お年寄りに生きがいを」 デイセンター「東京トラジ会」10年
[ 金日権さん ]
自宅1Fを開放
趣味の教室運営
在日同胞を対象としたデイサービスセンター「東京トラジ会」(54、金日権代表)がスタートから3月で10年目を迎えた。同センターは金代表が自宅(東京・駒込)を開放し、どこからも支援を受けないで活動してきた。お年寄りは平均年齢80歳半ば。第1木曜日の食事付きデイサービス、第2・3木曜日の趣味教室に元気に通ってくる。
代表の金さんは「お年寄りが生きがいを感じながら、自分が存在していることには意味があり、人に認めてもらいたい、評価してもらいたいという欲求を満たす場所」と「東京トラジ会」の特色を話す。
03年12月にはお年寄りたちで「トラジ演劇団」を結成。1年間コツコツ練習を重ねて、「身世打令」を演じた。台本は金さんがお年寄りから体験を聞き書きして自ら執筆した。
趣味の習字にも「東京トラジ会」のコンセプトが鮮明に出ている。多くの1世は教育を受ける機会も余裕もなかったため、読み書きが不自由。それを引け目に感じてきた。だが、ここでは同じ条件の仲間たちが集うだけに、何の気兼ねもない。覚えた文字の数だけ自信がつき、笑顔が増えていった。
この10年間に参加したボランティアは延べ200人以上。在日のアジュマや日本人の学生、大学教授など、その顔ぶれは多彩だ。オモニたちと日常的に触れあい、さまざまなことを学びとっていった。
金さんは「お年寄りたちは人生の達人。学校でも教えてくれない、社会経験としてもその機会を得るのは非常に難しい。こんな貴重な勉強の場を私が独り占めしたら罰が当たる。本当はもっと、たくさんの人に見てもらいたい」と話す。
金さんはこの間、厳しい現実も見てきたという。独居老人の存在だ。「1世は植民地時代から差別のなかで、人間の尊厳を失わず、家族を守るために闘ってきた。だが、家族間の人間関係がこじれたり、さまざまな理由から独り、寂しい生活を送っている高齢者がいることも確かだ」。
「ここで倒れたらいつ発見されるのか、という不安を抱えている。そこを少しでも解決し、尊厳のある人間としての人生を送らせてあげることはできないか」。
金代表には一つの具体的な計画がある。同じような境遇にある人たちが寄り添いながら生活するルームシェアリングだ。そのコーディネーターの担い手になることを考えている。60歳までにルームシェアリングの仕事をはじめ、70歳までに後継者を育てることが目標だ。
(2010.4.14 民団新聞)