同化政策・創氏改名
映画を通じて韓日両国の過去と現在を顧み、未来を展望する歴史映像シンポジウム(韓国東北亜歴史財団・在日韓人歴史資料館共催)が11日、東京・新宿の韓国文化院ハンマダンホールで開かれた。会場は立ち見が出る盛況となった。
今年第3回のテーマは「映画で語る同化政策と創氏改名」。上映作品は植民地支配の末期、「内鮮一体」の美名の下、朝鮮総督府が実施した創氏改名に対して韓国の姓名を守ろうと立ち向かった一族の誇りと挫折を描いた映画「族譜」(梶山季之原作・林権澤監督、78年)と、解放前の国策映画「望楼の決死隊」(今井正監督、43年)。
創氏改名は個人の帰属意識を日本の伝統的なイエ(家、戸籍上の戸)に向かわせ、天皇を頂点とする日本国家への忠誠心に結びつけていくのが目的。40年2月から6月までの間、戦争への動員と並行して行われた。だが、イエ(家)制度より宗族集団のつながりを重視する韓国では十分受けいれられなかった。このため組織的な強要が進められた。制度に対する批判は取り締まりの対象とされ一切許されなかった。
映画は「創氏」拒否を貫き、投身自殺した薛鎮永の実話をもとにした。シンポジウム席上、歴史研究者で京都大学教員の水野直樹さんは、「映画は現在の歴史解釈からすれば一部、事実と異なるものもみられる。だが、創氏改名をめぐる真実の一端を語りかけていることも否定できない」と述べた。
一方、韓半島北端の新義州と中国東北の境界線となる鴨緑江沿いを舞台に匪賊の襲撃から住民を守るため、韓国人と日本人が一緒になって国境警備にあたる姿を描いた「望楼の決死隊」の評価を巡っては意見が分かれた。
パネリストで韓国映画評論家協会常任顧問の金鍾元さんが、「戦争活劇の形式を借りた国策映画の典型」と断じたのに対し、恵泉女学園大学教員で映画史研究が専門の佐藤千広さんは、「対日協力映画と低くみられているが、ただのプロバガンダではない。当時の日本人、朝鮮人、満州人の感情のリアリズムがきっちりと描かれた佳作」と一定の評価を与えた。
(2011.6.22 民団新聞)