10月から施行
焼肉チェーン店での食中毒事件を受けて厚生労働省は10月から、ユッケなど生の牛肉について、ブロック肉の表面を加熱処理して殺菌することなどを義務付けた新衛生基準を施行する。違反業者には罰則が科せられる。同胞の焼肉業者は「新ユッケ」の対応に頭を悩ませている。
加熱殺菌を義務付け…罰則も
これまで牛の生肉については、罰則のないガイドラインで、肉の表面を削り取るトリミングを飲食店などに求めるだけだった。ところが今年4月、焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で集団食中毒事件が発生したのを受け、厚労省は安全対策の見直しを進めてきた。
10月から施行される新基準は、ユッケや牛刺し、牛のたたきなどが対象。食肉処理業者は枝肉から切り落とした生食用のブロック肉を真空パックで包装し、肉の表面から深さ1㌢以上の部分までを60度Cで2分間以上加熱殺菌することと、肉の内部25カ所を検査し大腸菌がないのを確かめることを義務づけた。飲食店は加熱した部分を切り取って提供する。
業界団体からは、規制強化に反対する意見もあったが、肉の表面を削り取る従来の衛生基準では、内部に入り込んだ菌を完全には除去できないことが判明し、同省は加熱殺菌が不可欠と判断した。違反者には食品衛生法に基づく商品の回収や営業停止処分のほか、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられる。
これによりユッケや牛刺し、牛たたきなど牛の生肉を提供する飲食店は大幅に減少する見通しだ。レバ刺しなどの内臓部や、加熱を前提とするステーキなどは今回は除かれたが、厚労省によると、レバ刺しやホルモン刺しについても今後新基準を制定する方向だという。
焼肉業界では、加熱処理および衛生管理のコスト増が予想され、「新ユッケ」の価格に頭を悩ませている。
炭火焼肉「なんだいもん」(千葉県行徳)を経営する朴且寅社長は、「梅雨時から夏にかけてレバ刺はメニューからはずしているが、ユッケはタタキのように表面を焼き、氷水で冷やしてから出している。牛の生肉は人気があるのでこれからも出していきたい」と述べ、保健所と相談しながら継続する意向だ。
韓国料理店「真一館」(東京・新宿)の卞保社長は「衛生管理面で定評のある芝浦解体工場では、細菌検査後、60度の湯に2分間つけて氷水で冷やしてから真空パックする。それをマイナス3度の塩氷水につけておく。メニューごとにまな板や包丁、手袋などが別々なので2次感染を防いでいる。従来通りのやり方で提供する」と、安全安心には万全の態勢だ。
(2011.9.28 民団新聞)