出資金増強を軸に
政府支援資金5年で償還
基盤強化に貢献
在日韓国人信用組合協会(韓信協、権東鉉会長=信用組合愛知商銀理事長)の韓国政府からの支援資金約156億円の償還期限が、2016年8月まで5年間延長されることになった。
同資金は、05年4月に施行されたペイオフの完全解禁に備え、7会員組合の健全経営基盤を構築するため同年8月に導入されたもの。これを原資に「経営基盤強化支援基金」を創設し、会員組合の経営基盤強化に貢献してきた。
今年8月と来年8月に半額ずつ償還することになっていた。しかし、長期にわたる日本経済の低迷により、会員組合の経営環境がなお厳しい状況におかれていることを考慮し、今年3月に同一条件で最低5年間の支援期間延長を要請した結果、8月に期間延長が確定した。
延長期間は11年8月末から16年8月末までで、12年8月末から5年の均等分割で償還していく。その後の延長は認められない。この5年間で、経営基盤の弱い会員組合は経営改善が急がれる。
韓国政府からの支援資金は、1961年2月から95年2月まで阪神大震災特別支援金を含め15回にわたって総額約400億円にのぼり、会員組合が直接運用してきたいきさつがある。完全に償還されれば、半世紀以上にわたった支援資金の歴史に幕を下ろすことになる。
合併促す金融庁
金融庁は自己資本の規制を強化するため、8月末を期限に、信用組合をはじめ地域金融機関に対して自己資本の詳細なデータの提出を求めた。それを基に、財務の健全性を高める新基準を今年度中に固め、国際的に大手金融機関への新自己資本規制(自己資本比率8%以上)が始まる13年以降の早期に実施する方針だ。
現在、中小企業などの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更等を行うよう努めることなどを内容とする「中小企業金融円滑化法」が実施されている。その一方で、金融庁は信用組合の自己資本増強による経営基盤を強化すべく、自己資本比率を法的基準4%以上から6%以上確保できるよう出資金の増強を強く求めている。
このため金融庁による審査基準が従来より厳しさを増しており、引当金の一段の積み増しが求められている。
繰越欠損額の増加による自己資本比率の低下など業績の芳しくない組合は、適正自己資本比率を確保するために毎年資本増強に追われているのが実状だ。
金融庁による自己資本比率の規制強化は、「オーバーバンキング」(銀行過剰)と指摘される地域金融機関の再編などによる抜本的な経営基盤の強化につなげる狙いもある。
今なお強い味方
資金借り入れの間口の狭い在日同胞経済人にとって、民族金融機関の存在意義は今なお高い。韓信協では、会員組合に対して経営基盤強化のための資金支援を実施しているが、自助努力による資本増強が困難な組合の業績悪化に歯止めをかける方法として、合併・統合を推奨している。
韓信協の権会長は「このたびの本国支援資金の支援期間延長は将来、同支援期間の再延長をしないことを約束して実現された経緯がある」と述べ、「会員組合が今後、経営基盤を強化するためには自助努力を通じての自己資本(出資金)の増強しかない。だが、経営状況が好ましくない一部会員組合は単体としての自助努力に限界がある。韓信協では今般の支援期間延長を契機に全会員組合の経営基盤強化方案を多角的に検討し、積極的に推進する方針だ」と強調した。
(2011.9.28 民団新聞)