「怖い」から「共感」へ…出会いが変える韓国観
生徒のレポート、感想文分析
【大阪】堺市の私立中高一貫校、帝塚山学院泉ヶ丘高校は韓国国内の高校と30年近くにわたって交流を続けている。生徒が残した感想文を分析した結果、80年代に見られた「恐い」という根拠のない偏見が00年代に入って解消したことがわかった。同校教諭の菅野修一さん(大阪大学外国語学部講師)がこのほど、「16歳めぐりあいの旅‐帝塚山学院泉ヶ丘高生徒たちの韓国研修30年史」と題して研究会で報告した。
80年代、生徒が漠然と抱いていた韓国が「怖い」という感情には明確な理由が示されていない。ある生徒は「違和感」と表現し、別の生徒は「なんとなくいやな感じ」と書いた。「あまりいいイメージを抱いていたわけではなかった」。同世代との異文化交流への「興味」より「偏見」が支配的だったようだ。
「韓国人は日本人を許してくれているのでしょうか」と、対日感情には必要以上に神経質になっている。「観光地で『イルボン、イルボン』と言われたり、じろじろいやな目で見られたりしたのは少しいやでした」と書いた生徒も見られた。
00年代に入ると、旅行前に抱いていた「怖い」という感情は感想文から消えた。代わりに韓国人の親切さ、情の濃さ、勤勉さを称える記述が目立ってきた。
ある生徒は交流先で、韓国人生徒が腕を組んで離そうとしないことに、「一種のカルチャーショックを感じた」。別の生徒は、「最後にバスに泣く泣く乗ったときに、淑明(女子高校)の子が自分の服を脱いで窓から渡してくれた時の感動は口では言い表せないものだった」という。なかには、「韓国に対するイメージも昔はそんなに良くなかったけれど、今は好きだといえる。あっという間の5日間。そして、いままでの自分とは『さよなら』できた5日間でもあった」というものもあった。
泉ヶ丘高校が韓国への研修旅行を始めたのは、女子のみの国際化課程を併設して間もない80年代から。これは「幅広い国際的視野と深い洞察力を持った国際人の育成」という教育目標に基づく。
研修旅行に先だっては準備も周到だった。1年前から韓国の文化や地理を学び、交流先の生徒とは1対1の英語による文通を始める。2年次には韓国の歴史、3年次になると韓日に関わる近現代史も学ぶ。授業では第2外国語として4カ国語の中から韓国語も選択できる。
初年度の研修旅行には98人が参加。フェリーで大阪港から釜山に渡り、慶州で菫花女子校、ソウルでは淑明女子高校と交流した。05年に男女共学となってからはソウルを中心に交流している。これまで延べ2500〜2600人が韓国を訪れた。
対日意識も課題
生徒のレポート・感想文は毎年、研修誌『アンニョンハシムニカの旅』に発表してきた。菅野教諭は、「この間の韓国国内の変化は劇的。この交流が韓国の若い世代の対日意識にどのような影響を与えているのか、生徒文集を通じて分析するのが今後の課題です。泉ヶ丘高卒業生についても、同窓会などを通じて追調査してみたい」と話す。
(2011.10.5 民団新聞)