人権教育で貢献
講演140回 兵庫県が表彰
【兵庫】在日2世教員、方政雄さん(60、兵庫県立湊川高校)が9日、兵庫県教育委員会から「優秀教職員」として表彰された。これは学校教育における実践などに顕著な成果を上げた教員を顕彰するもので、兵庫県教委独自の制度。外国籍教員が選ばれたのは方さんが初めて。
湊川高校では「言葉を学ぶことが隣国をゆがみなく理解することにつながる」との信念のもと「朝鮮語」教育に携わってきた。このほか、工業、国際理解の各科目も担当している。
課外での人権教育にも熱心だ。教職員や保護者、一般市民を対象にした講演・講話は87年から10年までにその数、140回を数え、延べ1万5000人が受講した。方さんは23年間の講演活動について、「巡礼のように回った」と振り返る。内容は「在日韓国朝鮮人生徒の親の思いを通して」「隣にいる外国人からのメッセージ」「違いを共有し、ともに生きるために」など。中川守同校校長は方さんを、「人権教育を中心に据えた特色ある学校づくりに貢献した」として高く評価、「優秀教職員」として推薦した。
表彰式は県公館で行われ、大西孝教育長から表彰状と記念品が贈られた。県教委によれば、今年度の被表彰者は小・中・高校、特別支援学校教職員まで39人。
方さんは92年、兵庫県教職員採用試験に合格。同県では外国籍の教員は方さんが初めてだった。教員になるまでは、電気会社に勤務していた。帰宅したところ、待ち構えていた当時の湊川高校教員から「朝鮮語」講師の就任を懇請され、85年から半年ごとに契約を更新する講師として教壇に立つようになった。同校は73年から日本の公立学校では全国で初めて「朝鮮語」を必修の正規科目として取り入れていた。第2代目の担当教員は詩人の金時鐘さん。方さんは3代目にあたる。
兵庫県神戸市生まれ。差別と貧困にあえいだ子ども時代を過ごしてきた。県立尼崎工業高校在学中に本名宣言。「民族を必死で取り戻す作業」として韓国語を学び始めた。その後、韓国にも留学し、韓国語に磨きをかけた。来春、定年退職を迎える。96年から伊丹市多文化共生市民祭り「伊丹マダン」実行委員会委員長。このほか、兵庫県国際理解教育研究プロジェクト研究員(教員代表)、伊丹市人権教育・啓発推進会議委員などを兼務している。
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「外国籍第1号の責任果たす」…方さん談話
私が兵庫県で外国籍として初めて採用されたとき、「外国人が公立学校の正教員」というのはまだ世間には認知されていなかった。
家庭訪問した時、「パン ジョンウン」という聞きなれない名前を告げると、「なぜ、担任が韓国人なのだ」という眼差しを感じた。失敗は許されない、「韓国人の教師はだめだ」と後ろ指をさされるようなことはできない、私ひとりだけの問題ではない、教師としてやるべきことを誠実にやっていくしかない、そんな決意をした。
その後、生徒や保護者の方々とも共に歩むことができ、また兵庫県ではほぼ毎年外国籍教員の採用があり、少しは肩の荷がおりたような気持ちも持てるようになった。
今回の受賞で在日教員の存在が認められたのでは。より多くの人が在日教員を理解することを願う。全国の250人を超えるとされる外国籍教員の励みになるとともに、これから教員をめざそうとしている在日の子どもたちの自己実現にも希望と勇気を与えることができたらと思う。
(2011.11.16 民団新聞)