
移りゆく姿 10年サイクルで
【千葉】在日同胞のフリーランスイラストレーター、金斗鉉さん(60、千葉県浦安市)が、兵庫県宝塚市の過去・現在・未来のつながりを顧みる絵本を制作している。今月1日の市制施行60周年を前にした昨年秋、中川智子市長自ら金さんに依頼した。市では数千部を印刷し、図書館や学校に置くほか、記念品としても配ることにしている。完成は10月の見込み。
市制60周年記念事業
宝塚市のいまがどのように築かれてきたのか、人々がどのような気持ちで苦楽をともにしてきたのか。60年間、刻々変化してきた市の姿を、10年間サイクルで描くのが基本。4㌻で一つの区切りとなる。1カ所については観音開きとし、全体では30㌻を超す作品となる見込みだ。
中川市長が金さんに作品を依頼したのは、『ふるさと60年‐戦後の日本とわたくしたちの歩み』(福音館書店60周年記念出版、12年)を見たのがきっかけだったようだ。
同作品は定点観測の手法をとり、ある町の46年から現在までの変貌と、男の子と女の子の成長を丁寧に描いた8年がかりの労作。ベースとなったのは、金さんが05年の愛知万博「長久手日本館」(日本国政府・経済産業省主催)の入り口に描いたイラストレーションだった。作品は10年サイクルのものだったが、さらに書き足し、5年間ずつの変化を追った。文章は歌人の道浦母都子さんが担当した。
宝塚市版「ふるさと60年」は現在、現代の町並みのラフスケッチが完成したところ。市から提供を受けた膨大な資料をもとに、これから徐々に時代をさかのぼって古い建物と置き換えていく。金さんにとっては「楽しい作業」だ。「現在は廃線となっているが、昔は鉄道が通っていたこと。山の上にあった貯水池や田んぼも描く。市長からはもっと貧しかったところも入れてほしいと注文を受けている。おもちゃの世界をつくっているようなもの」。
金さんは53年、ソウル市生まれ。画家の両親の影響からか、幼いころから一人で漫画を描いていた。18歳のとき、日本人の母親の病気治療の付き添い人として来日。東京・お茶の水の美術専門学校で学んだ。広告代理店のグラフィックデザイナーを経てフリーランスのイラストレーターに。
作品は漫画から絵本、水彩画まで多彩。全国の博物館から仕事の依頼を受けることが多く、すでに100カ所近くで作品を残した。最近では沖縄海洋博物館の壁面に左右60㍍にわたる作品を描いている。
宝塚市は19日、市内のホテルで市制60周年記念式典を開催した。さらに今年は宝塚歌劇第1回公演から100周年、手塚治虫記念館の開館から20周年の「トリプル周年」にあたる。
(2014.4.23 民団新聞)