掲載日 : [2004-11-17] 照会数 : 3090
法と生活〈18〉 在外同胞向け最新法・制度(04.11.17)
(文責・民団中央民生局)
刑事事件の手続き㊤
反社会的行為処罰する制度
1.刑事事件と捜査
イ 概要
国家は社会秩序維持のために一定種類の反社会的行為に対して法律で規定し刑罰を賦課する。このような事件を刑事事件という。犯罪が成立するかどうか区別するため刑事事件を調査する手続きを捜査という。
すべての捜査の最終責任者は検事で、司法警察官吏は検事の指揮を受けて捜査する。司法警察官吏には警察署で一般刑事事件を扱う一般司法警察官吏と、鉄道公安や消防、海事、山林など特別な事件だけ捜査することができる特別司法警察官吏がある。
ロ 捜査開始
捜査機関は犯罪の疑いがあると判断される時には犯人、犯罪事実および証拠を調査しなければならない。捜査機関による捜査開始には制限がない。犯罪申告または告訴・告発を受けたり、風聞または新聞記事を見て捜査を始めることもあり、偶然に犯罪を目撃して捜査を開始する場合もある。
ハ 告訴
▼告訴の意義
犯罪の被害者などが捜査機関に犯罪事実を申告し犯人の処罰を要求することを告訴という。告訴権を持つ人は犯罪の被害者とその法定代理人、そして被害者が死亡した場合には配偶者、直系親族、兄弟姉妹などである。
▼親告罪
犯罪には被害者のプライバシーや犯人との関係などを考慮して告訴がなければ処罰することができない罪があり、これを親告罪という。強姦罪、姦通罪、侮辱罪などがそれで、一定の範囲の親族間で犯した窃盗罪、詐欺罪などの財産犯罪もこれに該当する。親告罪と違い告訴がなくても処罰することができるが、被害者が処罰を望まないという明示的意思を示せば処罰することができない罪を反意思不罰罪と称し、名誉毀損罪、暴行罪などがある。
親告罪は犯人を知った日から6カ月が過ぎると告訴できない。告訴は1審判決宣告前までは取り消すことができるが、一度告訴を取り消せば再び告訴できない。共犯がいる場合には、告訴人が勝手に一部だけ告訴したり取り消すことはできず、共犯者全員を相手に告訴・取り消しをしなければならない。
告訴は捜査機関にしなければならない。大統領や国務総理、国会議長、監査院長など捜査機関ではない高位公職者に訴状を提出する場合、該当捜査機関に訴状が伝達されるものの、伝達されるまで相当な期間を要するので、それだけ捜査が遅延され告訴人に不利な場合が多い。
▼告訴・告発の却下
無益な告訴・告発の乱用・乱発による被告訴人・被告発人の人権侵害を防止するため、告訴人・告発人の陳述や告訴状または告発状に記載された事実によって処罰できないことが明白な告訴・告発事件の場合には、検事が被告訴人・被告発人を調査しなくても却下決定ができる。
▼不起訴処分に対する不服
告訴人は、検事が告訴事件に対して不起訴処分をする場合にはその処分通知を受ける権利があり、不起訴処分に対して不服があれば高等検察庁と最高検察庁に抗告および再抗告できる。
▼誣告(ぶこく)罪
告訴人は、ありのままに事実を申告しなければならない。虚偽の事実を申告することは国家機関を欺き、罪がない人にぬれ衣を着せることになるので厳罰に処される。
ニ 立件
捜査機関が捜査を開始した時には捜査機関に備えられた「事件部」に記載される。これを「立件」するといい、このように立件され捜査対象になった人を「被疑者」という。犯罪が起きた時、疑わしい人がいるが、犯人だという明確な証拠がまだ発見されない場合、その人を「容疑者」と呼ぶ。調査が進み犯罪の嫌疑が認められ正式に立件されれば、その時からは前述した被疑者の身分になる。
ホ 逮捕
▼一般逮捕
立件された被疑者が罪を犯したと疑うに値する相当な理由があり、正当な理由なく捜査機関の出席要求に応じないか、その憂慮がある場合には被疑者を逮捕できる。逮捕するためには原則的に判事が発布した逮捕令状がなければならない。司法警察官が被疑者を逮捕するためには、先に検事に逮捕令状を申請し、検事は判事に請求して逮捕令状を出してもらう。明白に逮捕の必要性が認められない場合、検事や判事が逮捕令状を棄却できる。
▼緊急逮捕
捜査機関は、犯罪が重く被疑者を偶然発見した場合などのように緊急な事情があって判事から逮捕令状の発給を受ける時間的余裕がない時にはその事由を知らせて令状なしに被疑者を逮捕することができる。これを緊急逮捕という。司法警察官が被疑者を緊急逮捕した場合には直ちに検事の承認を得なければならない。
▼現行犯逮捕
犯罪を実行中か実行直後の者を現行犯という。現行犯の場合、捜査機関でなくても誰でも令状なしに逮捕することができる。捜査機関でない者が現行犯を逮捕した時には直ちに捜査機関に引き渡さなければならない。
逮捕または緊急逮捕した被疑者を捜査機関が継続拘禁しようとする時には、逮捕した時から48時間以内に判事に拘束延長を請求しなければならない。その期間内に拘束令状を請求しなかったり(逮捕令状による逮捕または現行犯逮捕の場合)、拘束令状の発布を受けることができなかった時(緊急逮捕の場合)には被疑者を直ちに釈放しなければならない。
ヘ 拘束と非拘束
捜査機関は、捜査をした結果、犯罪が重く、住所不定あるいは逃亡または証拠隠滅する恐れがある場合には被疑者を拘束できる。しかし、捜査は非拘束状態ですることが原則である。拘束をするためには犯罪の証拠が必要であり、必ず判事の発布した拘束令状がなければならない。拘束令状の請求手続きおよび方法は、逮捕令状の場合と同じで相当な理由がある場合には検事や判事が令状を棄却できる。
ト 拘束前被疑者の尋問制度
捜査機関で被疑者の犯罪嫌疑の有無を調査し、被疑者が罪を犯したと疑うに足る相当な理由があり逃亡や証拠隠滅の憂慮がある場合には、裁判所に拘束令状を請求し、判事が発布した拘束令状によって被疑者を拘束する。
この場合、被疑者は捜査過程で弁明の機会を有することはもちろん、拘束可否の決定前に判事の前で弁明の機会を持つ。この制度が拘束前被疑者の尋問制度である。
被疑者のうち現行犯や逮捕令状、緊急逮捕の方式で捜査機関に逮捕された被疑者は、拘束前被疑者の尋問を申請できる権利があり、被疑者の弁護人、法定代理人、配偶者、直系尊属、兄弟姉妹、戸主、家族や同居人または雇用人は、被疑者とは別に拘束前被疑者尋問を申請できる権利を有する。
但し、被疑者や弁護人などの申請がある場合には、判事が必ずしも被疑者を尋問するわけではない。被疑者を尋問しなくても拘束可否を決定できると判断される事案について申請がある場合、尋問をしないまま拘束令状を発布できる。
また、被疑者を逮捕しないまま拘束令状が請求される場合、被疑者や弁護人、家族などに尋問申請権を付与せず判事が職権で尋問実施可否を決定し、尋問が必要だと判断される事案に対して尋問を実施する。判事が尋問を実施する場合、被疑者尋問のための拘引令状を発布し被疑者を裁判所に拘引した後に審問を行う。
チ 送致
刑事事件として立件されたすべての事件は検事だけが捜査を終わらせることができる。したがって司法警察官が捜査をした場合には、捜査したすべての事件に関する記録と証拠物を、拘束した場合には被疑者まで検察庁に送らなければならない。これを送致という。
被疑者が警察署で調査を受けてすべて終わるのではなく、さらに検察庁まで出頭するのは検事だけが捜査を終わらせることができる権限を持っているからだ。
司法警察官が事件を送致する時、その間の捜査結果を総合した意見(たとえば起訴、不起訴など)を付けて送致する。この意見は検事が捜査を終わらせるのに参考にするが、必ずしもその意見を受け入れなければならぬものではない。
リ 逮捕と拘束の適否審査制度
一旦、令状によって捜査機関に逮捕または拘束されたとしても、被疑者は裁判所から逮捕または拘束の適否について再び審査を受けることができる。この手続きで逮捕または拘束が不当だとして裁判所が釈放を命じれば被疑者は直ちに釈放される。
逮捕または拘束適否審の請求は被疑者本人や弁護人はもちろん、配偶者、直系親族、兄弟姉妹、戸主、家族さらに同居人や雇い主も被疑者のために行うことができる。
逮捕または拘束適否審は、事件が警察にあるか検察にあるかを問わず検事が裁判所に起訴をする前ならば請求できるという点で、起訴後の被告人に対して認められる保釈制度と異なる。
逮捕または拘束適否審の請求を受けた裁判所は速やかに拘束された被疑者を尋問し証拠を調査して決定をしなければならないが、請求権者ではない者が請求したり、同一の令状に対して再請求した時、捜査妨害の目的が明らかな時などには請求を棄却できる。
裁判所は、逮捕または拘束の適否審査を請求した被疑者に対しても職権で被疑者の出席を保証するに足る保証金の納入を条件に釈放を命ずることができる。これを被疑者保釈制度または起訴前保釈制度とも呼ぶ。
(2004.11.17 民団新聞)